写真アルバム:夕張岳百景
川村信人(札幌市清田区在住)
どこかにも書いたような気がしますが,私は夕張岳には一度も登山したことが無いし,その地質・地形を研究したことも無く,特に強い(・主体的な)科学的興味があるわけでもありません.そんな私がなんでこんなに夕張岳に入れ込んでいるのかというと...自分でも分かりません.私の趣味の一つは写真ですので,その特異な景観に被写体として魅かれたということもあるのかもしれませんが,どうなんでしょうか.私の地質学的口癖の一つである『地形と地質は 1:1 に対応している』を具現する山ということもあるのかも.
夕張岳は,その特殊な地質構成により,独特な山容を示しています.ここでは夕張岳の地質の詳細は触れないことにしますが,簡単に表現すると,夕張岳は “蛇紋岩メランジュ(serpentinite mélange)の山” です.
右に示したのは,20万分の1地質図幅『夕張岳』による夕張岳とその周辺の地質図です.紫色で塗色された部分が蛇紋岩で,その中に無数の岩塊(block)が散在しているのが分かります.
岩塊は,おもに “空知層群” の緑色岩・珪質岩類ですが,一部には低温高圧型変成岩も含まれています.夕張岳山頂は変成岩ブロックの上にあります.蛇紋岩は岩質が軟らかく,空知層群や変成岩はそれに対して非常に硬質なので,その硬度コントラストが夕張岳の独特な山容を形作っています.
夕張岳蛇紋岩メランジュがいつどうやってできたのかは,ある意味非常に難しい問題です.蛇紋岩は元々上部マントルのカンラン岩(peridotite)でしたが,カンラン石(olivine)が加水反応を受けて蛇紋石(serpentine)に変化し密度が低下することによって浮力的に上昇したもの=ダイアピル(diapir)とされています.水の起源は上部マントルの下に沈み込む海洋性スラブ(とその上位の堆積物)にあるとするのが妥当でしょう.その上昇の過程で,周囲の地殻深部岩石を岩塊として取り込みました.これが蛇紋岩メランジュの “一般論” なのですが...夕張岳の場合,①蛇紋岩ダイアピルの上昇はいつ始まったのか? ②上昇は今も続いているのか? ③北海道中央部で少なくとも数十 km 以上の深さにある上部マントルからどのように上昇しているのか?...等々がはっきりしません.
①については,夕張岳を含む夕張山地は日高衝突山脈を作ったプレート衝突の影響の波及による構造山地と考えるのが妥当ですので,その上昇開始は新第三紀中新世(15 Ma 前後)です.ところが,良く知られているように “滝の上層相当層” 堆積時には既に蛇紋岩が陸上に露出していました.滝の上層の堆積年代は 15 Ma 前後ですから,この時期に上部マントルからのダイアピル上昇が始まったのでは間に合いません.私は,夕張岳周辺の蛇紋岩上昇の “元” は前期白亜紀(ca. 100 Ma)に起きた前弧海盆内部の上昇に端を発したもの(=今現在上部マントルから上昇しているわけではない)と思っています.それ以降の上昇過程は複雑で私にはよく分かりません.いずれにせよ,蛇紋岩体分布を軸とする複背斜状構造に新第三系も参加しているわけですから,その上昇は新第三系堆積時以降現在に至るまで続いているということになるのではないでしょうか?
よく分かっていない(?)地質の話はこれくらいにして,夕張岳とその周辺のピークと岩塔の名前を示しておきたいと思います.西側からの近接した “正面” ビューと,南側からのやや遠い斜めビューです.なお,これらは地形図や登山案内図などを基に私が適当に判断したもので,間違っているかもしれません.
西からの正面ビューでは,夕張岳の “主稜線” と,その北側の前岳から南西に連なる鋭いピーク群がよく分かります.標高 1667.7 m 三角点のある最高ピークが『夕張岳』と思われますが,場合によってはそこから南に延びる稜線の 1602 m ピークまでの約 800 m の全体を夕張岳としているものもあります.このビューでは,前岳から南南西に連なる稜線上の岩塔状ピークが印象的ですが名前は付いておらず,三角点もありません.
なお,写真右端に見えるデビルズ・タワーのような特徴的な平頂ピークは,標高データでも Google Earth でも正体がよく分かっていません.おそらく標高モデルの精度の問題かと.823 m ピーク?としたのは多分に推測です.これだけの特徴的なピークが同定できないというのは私自身信じられないのですが.
南からの斜めビューでは,夕張岳西斜面の断面形状や,正面ビューでは見えない夕張岳-前岳の間の岩塊分布状況などが非常によく分かるものとなっています.まず夕張岳西斜面のスプーン状の斜面形態が非常に印象的です.この斜面形状を見て,私のアタマには “ある可能性” が浮かんでくるのですが,それは(笑われそうなので)言わないことにします.次に印象的なのは,夕張岳~前岳間稜線上の岩塊の存在です.図には名前が判断できたものを書き入れましたが,これら以外にもたくさんの岩塊が散在しています.なお,滝ノ沢岳の左に見える鋭い三角形ピークの正体は,これも分かっていません.確認に使用したカシミール3D(カシバード)での地形描画状況を見た限りでは,滝ノ沢岳の手前にあるということは分かっているのですが...
シューパロ湖の西側湖畔は,夕張岳とその周囲に連なる特徴的な山容のほぼ全体を近接して見ることができる貴重な場所です.自家用車等でアクセスの簡単な場所としてはおそらく唯一のものでしょう.
シューパロ湖はもともと大夕張ダムによる湛水湖で,シューパロ湖畔を通る国道452号線は湖岸のすぐ上を通っており,そこからの夕張岳の展望は限られていました.
新しいシューパロダムが 2015 年に竣工し,嵩上げによって湖面が約 13 m 上がったため,国道は旧湖面から 30 m 近く高いところに付け替えられました.新しく作られたシューパロトンネルの北側出口には展望場所が設置され,その先の千年橋の上も含めて遮るものの無い最高のビューポイントとなり,素晴らしい夕張岳の風景が眺められるようになりました(上写真).
上の2枚のパノラマ写真は,シューパロダム完成以前にシュ-パロ湖畔から撮影したものです.撮影場所は湖面からすぐ上の道路上です.撮影は4月ですが,残雪で真っ白な夕張岳の姿が神々しく印象的です.
パノラマ写真2は,同じ日に 10 分違いで撮影したものですが,視線角度がかなり違っています.おそらく.パノラマ写真1よりも上流側湖畔で撮影したものと思われますが,詳しい位置記録が無く詳細は不明です.中央右に見える “デビルズ・タワー” の迫力がすごいのですが,その正確な位置・正体も不明です(後述).パノラマ写真1では,左端に滝ノ沢岳の頂上が見えています.
パノラマ写真2とほぼ同じ地点からの季節違いショット.5月下旬の新緑が清々しい.もう少し遅くなると,夕張岳も残雪が消えて青緑一色で立体的に見えず,地味~になってしまいます.なお,この角度では左にあるはずの滝ノ沢岳は手前の稜線に隠れていて見えません.
新しい付け替え国道の展望場所(~千年橋)から撮った雪解け時のシューパロ湖と夕張岳です.手前はまだ半ば氷結している湖面ですが,雪解け水の影響かファンタスティックなエメラルド色になっていました.夕張岳自体の見え方はパノラマ写真1・3とあまり変わりがないのですが,視点が高くなった分,夕張岳西麓の下部まで見えており,滝ノ沢岳も頂上から下が良く見えています.
実は今まで私は,“夕張岳を撮影するには雪のある・残っている季節がよい” と思っていました.その理由は,積雪によって地形の凹凸がよく分かる・青い空と白い雪のコントラストが絶妙,といったものです.夏季の植生繁茂と葉の繁りの影響も無くなるというわけです.
しかし今回,たまたま秋の落葉期に夕張岳を撮影し,雪が無くても落葉して草も枯れれば,それはそれでまた良いものと感じました(上写真).なんと言うか,山肌・露岩がそのままナマで見えている,というところです.このパノラマでは,前岳周辺の露岩のすごさと,夕張岳西斜面の scoop 状地形が非常に印象的です.夕張岳と前岳の間に見える三角のピークは熊ヶ峰だと思われますが,この角度では非常に目立っていて驚きます.
なにしろこのシューパロ湖畔展望場所は夕張岳の近接正面にありますので,適当な望遠レンズがあればその山容を大迫力でズームイン撮影することができます.これは札幌郊外などからでは到底不可能なことで,このビュー・ポイントの大きなメリットです.
まずは夕張岳山頂と西斜面です.この左端の最高点が夕張岳山頂ですが,そこから南に主稜線が伸び,南北端の標高差は約 65 m です.主稜線は,夕張岳蛇紋岩体中に包有される最大規模の低温高圧型変成岩ブロックからなっています.写真を拡大して見ると,大きな岩塊が稜線上に散在しているのが分かります.5万分の1地質図幅『石狩金山』によると,その岩相は緑色片岩・藍閃石片岩・石英片岩となっており,片岩類の分布は夕張岳主稜線周辺に限定されているようです.
西斜面の大きな特徴は,下に緩く凹んだ “スクープ(scoop)” 状の形態と,斜面上に見える水平方向のマウンド状地形です.これらの地形の形成要因は,おそらくどなたかが議論していると思うのですが,ちょっと見つかりませんでした.後者は,斜面上のクリープ・ハンモック地形ではないかと思われるのですが,確信はありません.
上の写真は,前岳とそこから南に伸びる稜線上の三つの岩塔(・ピーク)を撮影したものです.国土地理院地形図では,左の一番高い岩塔(1501 m)と真ん中の岩塔(1485 m 前後)との間に “前岳”という山名が書かれていますので,その二つを合わせて『前岳』なのかもしれません.最初に示した地質図を見ると分かるように,NNE-SSW 方向に分布する苦鉄質岩を主体とする空知層群スラブの堅硬な岩相によるものです.
左が春先の残雪期,右が秋の落葉期の写真です.写っているものは同じですが,季節による雰囲気の違いには驚かされます.特に左に二つのピークの岩塔の迫力がすごく,拡大して見ると岩塔の先はおそらく高角節理に沿って割れ,分離しています.私はこれらを『前岳オベリスク(the Maedake Obelisk)』と勝手に呼んでいます.
右写真上は,実際に望遠レンズで撮影した写真ではなく,標準ズームレンズで撮影したものの一部をクロップした “疑似(似非?)望遠写真” です.夕張岳西斜面の凹状の形状がよく分かります.右に見える “デビルズ・タワー” の迫力はすごく,よく見ると向かって右に急傾斜する層状構造が見え,3枚くらいの岩層ユニットがあるように見えます.
右写真下は,デビルズ・タワーをさらにクローズアップしたものです.すごい迫力で,『ここに登って露頭を叩いた地質屋はいるのかな?』なんて思ってしまいました.私みたいな普通の地質屋には無理で,岩壁クライミングの技術が必要かと思われます.季節の違いから,上に書いた “三層構造” は残念ながらあまり良く分かりませんでした.いずれにせよ,“デビルス・タワー” の向かって右側の急傾斜面は,層状構造によるものでしょう.
なお,この “デビルズ・タワー” の正確な位置は地形図で探索してみたのですが,正確には分かっていません.多分,ペンケモユーパロ川東支流の上流部にある標高 955 m 前後の稜線の端部と思われますが,なぜか Google Earth などではよく見えないので,同定はできませんでした.
5万分の1地質図幅『大夕張』によると,この部分の岩相はNNW傾斜で東に急傾斜するとなっており,なんとなくマッチしています.なお,大夕張図幅では,前岳を含むスラブを “夕張岳変成岩類”,このデビルズ・タワーを含むスラブを “空知層群” としていますが,その決定的な違いはよく分かりません.冒頭に示した 20万分の1地質図幅『夕張岳』では前者を空知層群下部(緑色岩卓越),後者を空知層群上部(珪質岩卓越)としています.私はスラブを実際に見たわけではないのですが,そちらの区分の方が合理的な感じがします.
以下に,さまざまなロケーションから撮影した『夕張岳百景』を掲載します.それらの撮影時期として冬~春先が圧倒的に多いのは偶然ではありません.夏季は積雪が無いせいで稜線~谷地形の陰影がフラットになってしまい,山容・地形凹凸が分かりにくくなり被写体としての “見栄え” が悪くなってしまうからです.
※ 以下に掲載する写真には Google Maps で位置を表示するためのリンクが付されています.しかし,2009 年以前は私は GPS 記録を導入しておらず手記記録も取っていないため,その位置は『記憶に頼った』ものに過ぎません.したがって,正確な位置とはなっていない可能性もあります.
なお,パノラマ写真の撮影位置は,明記したものを除いて,通常の写真と同じ時に撮影したものですので,省略しています.
※ 撮影レンズの焦点距離は,すべて『35 mm 相当・換算表記』になっています.
まず最初に,夕張岳山頂から西に 67 km(!)離れた札幌市清田区の自宅付近で撮った夕張岳をあげておきます(上写真左).早朝に撮ったものなので,朝日の逆光で山の形が見えているだけの要するにダメ写真で単なるアリバイなのですが...札幌郊外の新興住宅地の向こうに特徴的な夕張岳の山容がはっきりと見えているというのは,やはり印象的です.もちろん望遠撮影です.
右の写真は,なんと夕張岳から 78 km( !! )離れた札幌市街地西端付近,西区宮の森の三角山のふもとから撮影したものです.左側に札幌のランドマークであるテレビ塔が写っています.なんだか雰囲気がオーメンですが,普通に撮影したら白く霞んでいて単なるグレーの影のようにしか見えないなものを,あらゆる技を繰り出してレタッチしたためです.こんなに写っているとは思っていませんでした.
札幌の近郊から見た典型的な夕張岳ビューです.上写真左の撮影場所は山奥にある霊園ですが,こんなところからも見えるとは少し意外でした.春の空気の散乱でファインダーではなにが写っているのか分からないくらいでしたが,現像で HDR化してやると,残雪のせいもあってけっこうディテールが捉えられており驚きました.手前は馬追丘陵で,夕張山地は霞みでよく見えていないようです.
右は,同じく北広島市の輪厚東方からの撮影です.北海道の真冬の感じはよく出ていますが,午前中なので夕張岳には影ができており,あまり見栄えがよくありません.
左は恵庭墓園からの撮影ですが,晩冬の午後なので山の形がよく,前岳もはっきりしていて惚れ惚れします.その左手前はおそらく夕張のマウントレースイだと思います.
右は正確な撮影位置がちょっと分かりません.初冬の雰囲気が悪くないのですが,ちょっと青霞みしています.手前の馬追丘陵とその山麓の風景が悪くないです.その右奥はマウント・レースイ.
おそらく札幌近郊(?というか)からの遠望ビューとしては,ベストなものと思われる馬追丘陵東麓からの撮影です.ある意味この写真を撮ったあたりから,夕張岳というものへの私の執着が始まったのかも.それは,あとに掲載するこの撮影ポイントからのパノラマ写真を見ると分かっていただけると思います.
札幌近郊からのビューとほとんど同じなのが不思議と言えば不思議ですが,手前の山の位置・形などよく見ると全然違っています.
南幌町は,芦別岳に至る夕張山地の山並みのベストビューポイントです(パノラマ参照).この写真では初冬の平野の雰囲気がなんとも言えません.
右は,西側からというよりは北西側からといった方が適切なもので,夕張岳の形は南幌町からのものとは著しく異なっています.前岳・滝ノ沢岳は青霞で分かりにくいのですが,夕張岳の前に重なってしまっています.
この写真を撮影した当時は,この周辺はまだ人が住んでいる集落でした.農協・信用金庫の支所や学校もあったと思います.しかし現在は,シューパロダム建設に伴う変化で立ち退きが行われ,まったくの空き地となっています.原野と化するのも時間の問題でしょう.
撮影場所は GPS が無かったので正確には分かりません.“大夕張” としたものは夕張岳の山並みがかなり短く写っているので,上流(北)側だと思われます.どちらのビューでも夕張岳本体はほとんど存在感が無く,前岳から連なる岩塔状ピークが特徴的です.右写真では左端に滝ノ沢岳が見えています.左写真では緑濃い初夏の雰囲気が心に沁みます.
どちらも夕張周辺付近から正面に見たものです.左はかなり古い写真で,おまけに私が最初に買ったデジカメによるもので画質は最低に近く,無理矢理リストアしたものです.
右は夕張岳のアタマだけが見えている妙な写真ですが,実は手前に見える平坦な地形が 目的の被写体 で,夕張岳は単なるオマケです.
実は夕張岳は西の札幌側からだけではなく,東(裏?)側からも見えるということに私が気付いたのは,観光で通った狩勝峠で『あれは何だ?』と驚いた 2007 年のことです.その後,富良野側からも見えるということに 2022 年頃にやっと気付く(!)というお粗末.富良野側から見ると芦別岳周辺の山容がとにかく圧倒的なので,裏は地味な夕張岳はそれに隠れてしまい無理もなかったのですが.
左が西側・狩勝峠からの最初のショットです.東斜面は西斜面と違って急傾斜で壁のような斜面となっています.夕張岳ピークのすぐ右の稜線上にぽつんと見えているのは釣鐘岩でしょう.その右側のピークの後ろに前岳がわずかに見えています.
右はずっと近距離からの裏ショットで,狩勝峠に比べてより正面ビューになっています.斜面中央部にある凸状部は,なんだかずり落ちたようにも見えるのですが,気のせいかもしれません.右肩に鋭く見えるピークは形がちょっとイメージと違うのですが,カシバード上でモニターする限りは釣鐘岩だと思われます.なおこの写真は一目で分かるように sky-replacement を施した “ウ●ショット” です.曇り空でおまけに haze でコントラストがまったくなく,あまりに平板な写真になってしまったので魔が差しました.
中富良野東方から見た夕張岳です.視線がかなり斜めなので,夕張岳のイメージとはかなり違っており,最初はそれと気づきませんでした.夕張岳の右肩を拡大して見ると,釣鐘岩と熊ヶ峰のツインがはっきりと見えています.
右は,富良野盆地を挟んだ十勝岳東麓部からのビューです.中富良野からのビューとあまり角度が変わりません.なお,夕張岳の左側の低いところに,はっきりとした三角形のピークがあります.トナシベツ川流域の 777.6 m 三角点のピークと思われますが,未確認です.
これも自分としてはつい最近になって認識した夕張岳裏ビューポイントです.見えているものは十勝岳東麓からのものとほぼ同じですが,夕張岳の右側に前岳のデビルズ・タワーのようなピークの頭が見えています.その左手前は吉凶岳です.前景のヨーロピアン?な田園雰囲気が素晴らしい.電線が邪魔ですが.
“その他の” とは,主要には南北からのという意味です.こういうアングルになると,それが夕張岳だとはにわかには気づきにくい場合もあるわけです.
左は,ページの最初にあげた見取り図のアングルですが,私のお気に入りの撮影場所でもあります.ある意味では,西正面から見ても分かりにくい夕張岳の地形断面形状をもっともよく示しているアングルでもあります.説明は見取り図の項を見てください.
この場所から夕張岳が見えていることは,クルマで通過すると案外気づきません.札幌側からだと,穂別ダム管理所を過ぎるとすぐに長和トンネルに入りますが,それを抜けるとダム湖にかかる穂別大橋にそのまま接続します.橋を過ぎるとすぐ左に駐車スペースがありますので,そこに駐車して穂別大橋左側の歩道を戻って振り返ると,こういうビューに到達できます.
珍しい(?)北側からの撮影です.私も最初勘違いをしていたのですが,向かって一番左(!)のピークが夕張岳です.その右手前に滝ノ沢岳があるのですが,左の写真では季節的なものもありはっきりしません.中央部の三角形のピークが前岳で,そこから右(南南西)側に尾根が伸びています.
実は左の写真は GPS の無い時代に撮ったもので,正確な撮影位置が分かりませんでした.右は最近撮ったものですが,夕張岳の形から手前の山・林までそっくりそのままで,やっと 2005年の撮影位置を確定することができました.季節的な違いが風景的に面白いです.
南側からのビューです.比較的近接した撮影地点ですが,左が冠雪状態,右が真夏の無積雪状態です.下が隠れているので全体に平坦に見えます.夏ショットなどは深い緑に埋もれていて,これが夕張岳なのか,かなり注意しないと分かりません.もちろん中央の平頂な最高ピークが夕張岳で,左に見えるのが前岳(の尾根),その間にガマ岩が見えています.左写真で夕張岳の右に見える緩いピークは屏風山(1260.8 m)です.右写真では,右側の稜線の向こうに鋭いピークの山が遠くかすんで見えています.吉凶岳(1208.4 m)です.このすぐ右に芦別岳が見えているはずですが,なぜか写真には入っていません.
この2枚はかなり変則的なショットで,ヘリコプターからの空撮写真です.2004年冬にえりも町海岸で犠牲者の出た岩盤崩落事故がありましたが,その調査飛行に同乗した時のものです.このフライトは帯広空港離着陸ではなく,札幌の石狩新港ヘリポートから離陸して帯広空港で給油し調査後札幌へ帰着というものでした.
左はその行きのショットです.石狩新港から日勝峠を越えて帯広側へ出ます.その飛行ルートはもちろん記録していないのですが,石狩→岩見沢南方から夕張岳の南を通って占冠→日勝峠というものだったと思います.この写真はパッセンジャーシートから操縦席の窓越しに望遠で撮ったものです.体勢が苦しいので,元の写真は大きく傾いています.撮影地点はもちろん不明なのですが,ピーク配置や地形から判断すると,夕張市清水沢西方上空と推定されます.夕張岳自体のビューとしてはシューパロ湖畔からのものと,仰角を除くとあまり変わりません.滝ノ沢岳の左に見えている白いピークは,夕張岳~鉢盛山稜線上のどれかだと思いますが不明です.
右は帰りのショットで,傾いた陽のせいかなんとなく黄ばんでいます.撮影場所はもちろん不明なのですが,夕張岳のずっと左側にマウント・レースイが見えていて,眼下に由仁安平低地がありますので,三川付近の馬追丘陵上空あたりかと推測されます.田園地帯を見下ろしながら夕張山地~夕張岳を見るというのは,空撮にしかできないショットです.
最後に,シューパロダム堤体の向こうに鎮座する夕張岳です.山体ビューそのものは平凡でシューパロ湖畔からのものとほとんど同じですが,視点が南に移動した分,夕張岳-前岳間の稜線が長く見えています.シューパロダムの建設は,夕張岳周辺のいろいろなもの(集落・国道・林道・展望ポイント・鉄橋景観・地層露頭 ... etc.)を大きく変えました.夕張岳と無機的なシューパロダムとの対比が面白い,と思います.
なお,この撮影地点から先に進むとダム管理棟があり,駐車場からはシューパロ湖の風景がよく見渡せるのですが,しょっちゅう通行止めになるのが惜しいところです.そのポイントからは,ずっと昔に廃線になった大夕張線の鉄橋(三弦橋)が,湖面が低い時にはまれに姿を現わすんだとか.シューパロダム完成以前は国道わきの駐車場からよく見えていましたが.
ここに掲載するのは,夕張岳を含むパノラマ写真です.写真をクリックすると,マウスドラッグで横スクロールし詳細を確認できる拡大写真をその下に表示します.なお,写真に説明を書き入れることはしませんので,その下にあるカシミール3D景観図を参照してください.
こちらのページ で解説しましたが,パノラマ写真というのは,景観写真における非常にパワフルな手法です.なにしろ解像度を失うことなく(?)画角を大幅に広げられるのですから.
※ 以下のパノラマ写真の空部分には,色むらや縦方向の階調境界が目立つ部分があります.これはパノラマ撮影時の露出変動やレンズ周辺減光,また空自体の階調変動を PTGui での合成時に補正しきれなかったものです.さまざまな補正・回避手段を施してはいますが,私のスキルではこれ以上無理なものですのでご了解ください.
なお一部のパノラマでは,合成時に生じた周辺空白部(おもに空)を Photoshop の contents-aware/generative fill 機能で埋めているものがあります.
まずは,私の夕張岳パノラマの原点になったショットで,おそらくこれが最初に撮ったものと思われます.この撮影場所を見つけた時は感動しました.クルマで簡単に行ける場所です.眼下に見えるのは,夕張山地(下注)と馬追丘陵の間に南北に伸びる由仁安平低地です.夕張岳右手前のやや濃い色の部分が夕張山地,左側の少し高い部分が夕張市街東方の冷水山(マウント・レースイのスキー場が見える)などを含む無名山地です.さらに左に頭だけ見えている冠雪ピークが芦別岳です.
※ 国土地理院地図のレベル14以下では夕張市街西方の雨霧山を中心とする 400 - 500 m 前後の山地が『夕張山地』と記されています.私の昔からの理解もそうでした.ところが,夕張岳~芦別岳~富良野西岳と連なる 1200 - 1700 m の急峻な山地も『夕張山地』と記されています.上の夕張山地は前者を指しています.
上のショットの “厳寒期バージョン” で,由仁安平低地はうっすらと白く冷気の霞みに覆われています.撮影時刻は午前11時前ですが,この時の気温は零下10度以下だったと記憶しています.
前のショットもそうですが,山の展望というのは,近ければ良いというものでもありません.この撮影地点は夕張岳から 40 km 以上ありますが,夕張山地をはじめとする手前の山地への接近によってそれらが “せり上がって” しまい,芦別岳などはほとんど隠されています.
札幌の近郊まで戻ると,この “せり上がり” 効果を回避することができます.ここで夕張岳から約 60 km,夕張山地が手前の馬追丘陵にちょうどよくフィットしていて,夕張岳から芦別岳の稜線が非常によく見えています.中間に見えるピラミッド型のピークは無名の 1415.2 m ピークで,その左が鉢盛山.芦別岳の左に見える三角形ピークは惣芦別川上流の約 1500 m のピークと思われますが,詳細は不明です.
※ この場所は何の変哲もない段丘上の緩斜面ですが,実は驚くべき景観地点です.この右方には,日高山脈の神々しい姿がはっきりと見えていました.視程の良い条件だったのでしょう.この写真はその時のウルトラワイドなパノラマの一部です.これについては,別ページ で紹介しています.
この地点からのビューは,上の恵庭市とほぼ同じで特にコメントはないのですが,小高い丘の中腹から目前に夕張岳のパノラマを見ることができる手軽な近傍サイトで,しょっちゅう訪れているところです.もっとも最近は温暖化の影響か,黄砂・PM の影響が強く,春以降はぜんぜんダメですが.
これも札幌近郊の景観サイトの一つで,野幌丘陵の東斜面です.写っているものは上とほとんど同じです.初冬の田園の雰囲気がいいです.
南幌町付近は,場所が比較的北側なので,夕張岳よりはむしろ芦別岳のビューポイントと言っても良いくらいで,ときには驚くべきものも見えたりします.それについては, こちらのページ で紹介しています.夕張岳の上空の雲の形が野幌丘陵からの写真とほとんど同じ形をしているのは,同じ日の撮影のためです.
岩見沢市から美唄市にかけての部分は,私の夕張岳写真ライブラリ鵜の撮影地点として大きな空白地帯です.それを埋めようと目星をつけて出かけてみたのですが,昨今の気候変動による?黄砂-PM の襲来状況は想像以上で,春~夏のクリアな視界はほとんど得られない状況になっています.これは比較的ましな条件ですが,雲がかかっていました.この角度から見ると,夕張岳は斜めビューでかなり幅が狭く見え,むしろ芦別岳にかけての稜線が見事です.芦別岳の左に見えるピークは,もしかして十勝岳方面なのではないかと思いカシミール3Dで調べてみましたが,残念ながらそこまでは見えていないようでした.
最初のピーク・インデックスに使った写真と同じ日のパノラマです.手前の水面が穂別ダム貯水域.長和トンネルを日高側に抜けるとそのまま穂別大橋に接続しますが,その上には片側に広い歩道が設置されているため,大型車の通行等があっても安全な撮影場所です.撮影日は5月下旬ですが,この年は雪の消え方(と新緑)が遅かったようです.
さすがに富良野盆地,雰囲気ががらりと違います.中央左の残雪部が芦別岳(1726.1 m)ですが,その存在感があまりに大きく,私は富良野-美瑛に風景ドライブをするようになって 30 年は経っていると思いますが,左奥に見えている山が夕張岳だとはこの時まで気づいていませんでした.芦別岳と夕張岳の間に見えるピークは鉢盛山(1453 m),富良野スキー場の左にそびえる鋭いピークは,富良野西岳(1330.9 m)です.
実はこのポイントは,ああ雲が面白いな...と単なる風景を撮って家に帰って現像してみたら夕張岳が写っていていることに気づいて驚いた,というものです.ある意味それも無理ないというか,夕張岳の形がイメージにあるものとかなり違っています.そういうわけで,上のパノラマは意識したパノラマ撮影をしていない写真から無理矢理ピックアップして継ぎはぎ合成したもので,少し変なところもあります.
左に見える非常に目立つ三角のピークは前に書いた通り,無名のピーク(1415.2 m)です.なお,パノラマ右端には特徴的な テーブル・マウンテン がよく見えています.
で,これはあまり例のない北西側からのビューなので,特徴的な前岳(~滝ノ沢岳)が夕張岳の前に被さっていますが,青がすみ(haze)がきつくてほとんど見えません.そこで,青がすみの影響を可能な限り除去するためにコントラストやクラリティを増強し,その結果あまりに青過ぎるのでグレースケール化してみました(右図).もはや写真とは言えないようなものですが,この地点から夕張岳のピークがどう見えているかは分かっていただけると思います.
それにしても...あとに紹介する新城峠もそうですが,視点移動による山(だけじゃないですが)の見え方の大きな変化は予想を超えた不思議なものです.カシミール3Dが無かったら,とてもフォロー不可能とさえ思えます.
ここに掲載された写真の撮影地点を Google マップ上にプロットしたインデックス図を下に示します.マーカの色分けは『市町村別』になっています.赤い四角が夕張岳の位置です.
一応,マーカをクリックした時に現れる詳細ダイアログの最初に写真へのリンクがありますが,結局はこのページ内で移動するだけなので,写真リンクのインデックスとしての意味はあまりないかもしれません.
『可視マップ』は,地図ソフト・ カシミール3D の独自機能で,“ある地点が見える範囲(地点)” を地図上に描画してくれるという驚くべきものです.対象になる “ある地点” というのはどこでもよいのですが,見えるかどうか知りたいという目的上,現実的には要するに『ある山(ピーク)』となります.
このページに掲載した撮影地点は,夕張岳から最大で西が 67 km,東が 42 km 離れています.では,夕張岳が見える範囲はいったいどこまでで,全体としてどうなっているのでしょうか? 可視マップの出番です.
左図は,夕張岳(山頂)の可視マップの一部です.マゼンタ色の部分が “可視地点(ビューポイント)” を表します.作成計算のオプションは『粗く計算・計算半径 300 km・海上も計算』です.
可視マップの全体は図をクリックすると下に表示されます.その中の赤色線が計算範囲の外郭線です.海上ビューポイント域の外縁は夕張岳を中心としたきれいな円形になっています.海面は当然ですが球面ですので,『球面上で視線をトレースする』計算設定による効果と思われます.その外縁と海岸部ビューポイントとの間に空白域があるのが少し解せませんが,わずかな標高差によるものなのかもしれません.
この可視マップから見えることはたくさんあります.まず,美唄~札幌~苫小牧の石狩低地帯が夕張岳の一番広いビューポイント域であるということです.石狩湾や苫小牧沖はその延長にあたる海上ビューポイントです.富良野盆地・十勝岳西麓部もかなり広いビューポイント域です.
ビューポイントの一般的な東限は狩勝峠~石狩山地付近にありますが,なぜか士幌付近に扇状の “光洩れ” 領域があります.全体図で見ると白糠丘陵にもビューポイントが散点していますが,雄阿寒岳山頂付近にやや広いビューポイント域があり,これが東限です.
西側では札幌西方山地~無意根山にかけてやや広いビューポイント域がありますが,羊蹄山・有珠山頂も孤立したビューポイントになっています.西限は積丹半島の余別岳周辺です.
南西側では駒ヶ岳東麓~恵山にかけての海岸部にビューポイントがありますが,なんと本州下北半島からも見えることになっています.そういう話(実例)は聞いたことはありませんので,実際そうなのか興味津々です.
北限は美深町函岳周辺ですが,留萌から天売島に向かう細い扇状の “光洩れ” 域があり,天売島がその先端となっています.
可視マップを上の撮影地点マップと見比べてみると,私の夕張岳写真コレクションでは『岩見沢~月形~美唄』『石狩低地帯南部』エリアが広い空白地帯となっています.これからこの空白を埋めていきたいものだと思っています.
上に書いた通り,夕張岳可視地点の北限は美深町函岳周辺です.しかしこれは高い山地からの話なので...平野地域でどうかとなると,沼田町周辺が現実的なところでしょう.ところがこれをカシミール3Dで確認してみると,夕張岳はその山頂がわずかに出ているだけで,肉眼では and/or 明確な意図が無ければ,とてもそれが夕張岳山頂と気づくとは思えません.
以下では,最近実際に目にした『事実上の北限からの夕張岳』を紹介したいと思います.
その場所は,芦別市と深川市・旭川市の境界付近にある新城峠駐車公園です(標高 196 m).夕張岳山頂からの直線距離は 59 km で,これまで紹介した夕張岳ビューでは断トツの南北距離にあります.上の Google Map を見るとお分かりのように,ほぼ真北からのビューです(下パノラマ写真).
私は駐車公園展望台から最初この風景を見た時,こんなのが見えるのか,と非常に驚きました.しかし,中央の鋭い最高ピークが芦別岳ということは分かりましたが,当然見えているはず(?)の夕張岳がどれなのかはその時点では分かりませんでした.芦別岳のすぐ右のピークがそれっぽいのですが,なんだか大きすぎる...このパノラマは 600 mm 相当という超望遠で撮って合成したものですので,肉眼ではもちろん小さくてダメ.望遠のファインダーでもよく分からないので,『家に帰って写真を現像しカシミールで確認しよう』と,とにかくシャッターだけ切って帰ってきました.
その結果は,予想をかなり裏切るものでした.夕張岳は実はずっと右奥にあり,その大部分は手前の稜線で隠れて,上部が見えているだけでした.芦別岳の右に鋭く見えている二つの大きな “ピーク” は完全に確認はできていないのですがピークではなく,芦別岳の西側に南北に連なる鋭い稜線のプロファイルを見ているということのようです.そこには岩塔状のものがいくつかそびえており,拡大して見るとその迫力には驚きます.
芦別岳の左には布部岳,一番左には富良野西岳が見えています.写真右側に見える金剛岳は,野花南の南方にあるピークです.
夕張岳とその周辺の部分にズームインすると,右の写真のようになっています.
中央部左に遠く見える鋭いピークが夕張岳です.その右には,特徴的な双子の岩塔,釣鐘岩と熊ヶ峰が見えます.その右の少し緩やかなピークが 1487 m ピーク,さらに右にぽつんと見える小さな岩塔がガマ岩です.その右側,金剛岳の斜面から前岳の頂上がわずかに顔を出しています.
個人的に一番驚いたのは,夕張岳の手前に 崕(きりぎし)山 が小さな二つの岩塔として見えていることでした.なぜかと言うと,そのページに書いてしまったように,崕山は『国道など通常の道路からはまったく見えない山奥にある』と思い込んでいたからです.よく見ると,その左に石灰岩の岩稜らしきものが続いています.一番右のナイフの刃のようなリッジは,『青月峰』と呼ばれるものかもしれません.
カシミール3Dの可視マップ機能で確認してみると,周辺地域の一般道路上で崕山の可視ポイントがあるのはたしかに新城峠だけでした.しかし,実は札幌周辺の平野にも広い可視領域があります.カシバードで確認してみると,崕山の頂上部だけがかすかに頭を出していました.実際に視認できるかは微妙なところでしょう.
なお,崕山の左に大きく見えている岩塔を含む “ピーク” が実際どこなのかは,上に書いたように正確には把握できていません.おそらく芦別岳の稜線の西方約 2 km のところを NNE-SSW 方向に走る標高 1,100 - 1,500 m 前後の稜線のプロファイルを見ているのではないかと思うのですが...二つに割れたような部分がどこにあたるのかも不明です.この稜線上のピークには山名の付されたものは無いようです.
いずれにせよ,このビューが現実的に『平地から見える夕張岳』としては北限に近いのではないかと考えています.あともし見えるとすれば,旭川空港北東の標高 180 m 前後の平地あたりでしょうか? 水平距離は 72 km なので,視程に恵まれるのが条件かもしれません.
(2024/09/25 追記)
夕張岳周辺の地形特徴を把握しておきたいと思い,DEM データから地形3Dモデルを作成してみました.手法は例のごとく,以下のようなものです.
① 国土地理院基盤地図情報から,10 m メッシュの XML 形式の数値標高モデルデータ(6442-41, 42, 51, 52)をダウンロード.
② それを自作プログラムにより XYZ 形式の DAT データに変換.
③ DAT データを Golden Software Surfer に読み込み,補完によりグリッドデータを生成.
④ グリッド変形機能によって Y 座標に 1.34 を乗じ,緯度経度方向の水平距離を補正.
⑤ Surfer で 3D surface 図とする.
完成した 3D surface 図を下に示します.もちろんこれは多軸回転が可能ですが,示したものは南から見下ろした俯瞰図になっています.標高方向の縮尺は『適当にそれらしく』設定しています.もちろん 1:1 とかにするのは可能でしょうが,計算が必要で...
で...実はこの3D図から読み取れることはほとんどありません(!).と言うか,他の方法で読める・見えることに加えられるものは(少なくとも私の眼には)何もありません.“せっかく造ったんだから” という『勿体ない図』です.でもまあ,絵として見るだけでも,またパソコン上でぐりぐりと回せるんですから,十分面白いです.もっとも,私にはウェブ上で動かせる VR イメージを造る技量はないので,あくまでも Surfer 上で動かせる,ということですが.
それだけでは追究がちょっと足りないような気もするので無理矢理付け加えると,前岳から南南西方向に伸びる鋭いリッジにはちょっと驚きました.最初に掲載した地質図で分かるように,これは堅硬な岩相を持つ “空知層群” の大規模スラブによるものです.このスラブは地図上で計測してみると,長さ 7.6 km,厚さは滝ノ沢岳を造っているスラブを加えると最大 1.5 km はあります.こういう代物を夕張岳蛇紋岩体と蝦夷層群の間にどうやったら定置させられるのか...私には no idea です.