札幌周辺から見える山々
川村信人(札幌市清田区在住)
このテーマの発端は,つい最近のことです.私の属する某地質関係法人の会員の方から『藻岩山山頂から見える大雪山系のピークの名前が分からないか?』というリクエストを受け,カシミール3D(+カシバード)でシミュレートして景観図を作成しました.それを契機として,大雪だけではなく他のいろいろな山々についてもシミュレートしてみると,それまで自分でもちゃんと意識していなかったことが明瞭になりました.私が昔から “あ~札幌(周辺)からも見えるんだ?!” と漠然と思っていた山々が,はっきりと名前付きでその姿を現わしたわけです(下図).
こういう景観シミュレーションを踏まえて,今まで調査や趣味などいろいろな機会に撮った写真を眺めていると,『これが写っていたんだ!』『これを撮っていたんだ!』というのがいくつも出てきました.
このアーティクルは,それらを紹介するページです.対象の中には,札幌周辺から;①見た記憶だけがあっても『写真など撮っていない』もの,②見えるはずだけど見たことのないもの,が含まれます.それらは “構想中” として項目タイトルと簡単なコメントとカシミール3Dによるシミュレーション結果だけをあげておきます.いずれは撮れる(・見れる)かもしれないし,黄砂+PM レベルが異様に高まっている昨今と私の余命を考えると永久に無理かも...
※ このアーティクルで紹介する山々の名前の同定は,その大部分はカシミール3D(+カシバード)による景観シミュレーション中の山名表示機能によっています.しかし一部は,(山名があるにもかかわらずなぜか)山名が表示されないものがあります.また,写真中で明瞭なピークとして写っているのに,もともと山名が付されていないものもあります.このようなものについては,国土地理院地図上で見て推測したり,近接からの景観をシミュレートして見当をつけ,ピークの名前や標高を判断して描き入れています.しかし,その作業は非常に難しいというか曖昧なもので,結果が正しいか確認の持てないものあります.したがって,間違いを含む可能性もあることをあらかじめことわっておきます.
※ パノラマ合成のもとになった写真の焦点距離は『35 mm 相当・換算値』です.カシミール3Dの景観シミュレーションの設定値における “焦点距離” も同様です.
まずは,上のスペクタキュラーな景観シミュレーション図の右側にある『日高山脈』から逝ってみます.日高山脈は言うまでもなく北海道における最大の山脈で,新第三紀のプレート衝突によって形成された衝突山脈です.その神々しい姿は,十勝平野側や日高海岸側で拝することができますが,札幌からもちゃんと見えているわけです.
下の長大なパノラマ写真(11枚合成!)は,もともと芦別岳~夕張岳をターゲットとして撮影したものですが,その右手前に夕張山地があり,さらに右側はるかに日高山脈が見えています.撮影地点は恵庭市恵庭墓園です.これを撮った時は,日高山脈が見えているな~...と思っただけで,その後まじめに追究することもなく忘れていました.クリックで拡大表示を示しますが,これで見ると,驚くというか意外なほど日高山脈の山並みがぞろぞろと見えています.
ただ,札幌から遠距離にある日高山脈はさすがに haze で霞んでおりコントラストがありません.そこで,階調の回復のため自分のスキルの限界までトーンマッピングなどのレタッチを行いました(下写真).その副作用で,パノラマ合成の際不均一になっていた空の階調が強調され,不細工なまだら模様になってしまいました.最後の手段として,Photoshop で sky-replacement を施しています.嘘くさいですが,少なくとも日高山脈の部分は嘘ではありません.
山名を見るとお分かりのように,日高山脈の北部から中央部にかけての部分が見えているようです.なにしろ日高山脈の最高峰・幌尻(ぽろしり)岳(2052.4 m)が見えているのですから感動します.直線距離は 92 km(!)です.
※ 上のパノラマ写真を作成した時には気づいていなかったのですが...この幌尻岳山頂をよく見ると,山頂手前に北側に開いた馬蹄形状の凹地地形がはっきりと見えています(左写真).
これは,なんと幌尻岳北カールです.札幌近郊から日高山脈最高峰の氷河圏谷(カール)地形が見えているとは...驚きました.
なお,雲の影に少し隠れていますが,幌尻岳の左に見えるピラミッド型のピークは戸蔦別(とったべつ)岳(1959 m)で,その右側の鞍部状の稜線の向こうが有名な七ツ沼カールですが,もちろん見えていません.幌尻岳の右奥に見える小さな三角形ピークはエサオマントッタベツ岳(1902 m)です.
こうなってくると,あることに思い至ります.札幌周辺から幌尻岳が見えるのなら,幌尻岳山頂から札幌周辺が見えるはず(当たり前).さっそくネット検索で探ってみましたが,まったくヒットしませんでした.誰も気づいていないとは思えないのですが,視程(約 100 km!)ということもあるのかもしれません.
しょうがないので,カシミール3D(カシバード)でシミュレートしてみました(下).当然ですが,私の自宅付近から札幌市街,さらに小樽までが遮るものなくはっきりと見えます.ワイドな設定にしてみると,これも当然ですが石狩低地帯の全体から,その背後の樽前-恵庭・札幌西方山地,さらには羊蹄山も.
私が自分で幌尻岳に登るということは未来永劫絶対にありえないので,この風景を写真に収めるということは残念ながら不可能なのですが.
(この項,2025/05/13, 06/03 追記)
(札幌周辺から見えるこの特徴的な山については,『夕張岳百景-西側からのビュー』で紹介していますので,そちらをご覧ください.)
ここで『夕張山地』と呼んでいるのは,『夕張岳百景』で紹介した夕張岳~芦別岳と連なる急峻な山地のことではありません.その西側,夕張市街の東西にある低標高の山地を指します.地質的には,この夕張山地を構成するのは,東側ではおもに白亜系蝦夷層群(の上部),西側では古第三紀~新第三紀の地層となっています.そのことから分かるように,夕張山地を造っている地層・岩石は比較的軟質なものなので,起伏に乏しい低平な山地を構成しており,西側から見るとそのジェントルな佇まいに心が和みます.もっとも “低平” とは言っても,夕張市街東側で最高点が 800 - 900 m,西側で 500 - 600 m ありますが.
夕張山地の地形を遠望して気が付くのは,パノラマ写真左側の丸山から左に見える “台地状地形” です(右写真).
特徴的な地形の多くは地質と密接に関係しており,台地状地形は緩傾斜の構造を持つ堅硬な岩相からなるのが普通です.代表的なのは『溶岩流』ですが,夕張山地には溶岩流は存在しません.その地質学的背景は日高山脈や夕張岳の形成との関係で実に興味深いものです.
これについては,カシミール3Dと地形・地質:地形探索 のページ,あるいは私的・北海道地質百選の 大夕張クリッペ のページで詳しく紹介しましたので,ここでは省略します.興味のある方は参照してください.
上のパノラマ写真をよく見ると,規模は小さいのですが台地状地形がもう一つあります.右端の雨霧山と鬼首山の間に見える台形の稜線(“625 m ピーク”)です(右写真).
各種資料で確認してみると,この部分を構成する地層は新第三系中新統・滝の上(たきのうえ)層などとなっています.滝の上層の岩相は海成泥岩を主体とするということで,堅硬な岩相は含まれません.しかし5万分の1地質図幅『紅葉山』を見ると,構造が非常に複雑で難しいのですが稜線部分は古第三系漸新統・紅葉山層のように見えます.紅葉山層下部が “十三哩砂岩部層” と呼ばれる『堅硬な暗緑色を呈する粗粒ないし中粒砂岩』だというのが非常に気になります.
※ この 630.3 m ピークについての項は,立花幹彦さんの Web日記 中の『遠くに見える「帽子の山」を探す (2025/06/09)』という記事に触発されたものです.“帽子” と “キャップ” がなんとなく一致しているのは偶然です.
(2025/06/26 加筆修正)
『支笏カルデラ』は,数万年前に破局的噴火を起こした支笏火山の頂部が陥没したもので,そこに雨水が溜まって支笏湖となりました(右写真).
その噴火で発生した火砕流は札幌市街まで達しています.直径約 15 km の支笏カルデラの全貌は外輪山などによって囲まれているため札幌周辺からは直接見ることはできませんが,その “横顔” からカルデラをイメージすることは可能です.
下のパノラマは,支笏カルデラの横顔を長沼町から見たものですが...知っている人にはそう見えるというもので,そうでなければ単なる山々にしか見えないでしょう.左端の冠雪した特徴的なドーム状のピークが樽前山.その右が風不死(ふっぷし)岳です.中央部のピラミッド状のピークが恵庭岳で,この範囲が支笏カルデラです.風不死岳と恵庭岳の間には紋別岳が見えていますが,これは支笏カルデラの外輪山ではなく古期の火山体です.
恵庭岳から右側の札幌西方山地前面には緩く傾斜する平坦面が見えています.写真の右端が北広島市街で,そのすぐ右には札幌市街がありますが,写真には入っていません.この緩傾斜平坦面は,支笏火砕流の作る台地です.恵庭岳から北広島市街までの距離は約 30 km です.
この写真を見ていると,私は直径 15 km のカルデラとそれを形成した約4万年前の巨大破局的噴火のイメージがはっきりと浮かぶのですが,それは『想像が逞し過ぎる』というものでしょうか...?
『札幌西方山地』というのは,札幌市の西部を構成する山地のことで,その最高峰は赤井川村との境界に位置する余市岳(1488.0 m),2番目が京極町との境界に位置する無意根山(1460.2 m)です.
札幌市の南はじにある滝野霊園からは,上の札幌西方山地の山並みをほぼ真横から見たビューを得ることができます.ここでは,手稲山のはるか右に藻岩山が見えています.これは札幌市民の感覚とは真逆で,南側から見ているので当然とはいえ,ちょっと驚きます.手稲山の形もいつも見るとはかなり違っています.一番左に見えるのは烏帽子岳と神威岳ですが,特徴的なデビルズ・タワー神威岳は残念ながら烏帽子岳の前に重なっていて目立ちません.手稲山と藻岩山の間には,いくつもの低い三角形ピークが見えていますが,特定はできていません.
実はこのビューの左側には,札幌西方山地の南側本体である札幌岳-空沼岳-漁岳,さらには支笏カルデラ南端の恵庭岳までが見えています.しかし非常に残念なことに,このパノラマとの間はまったく邪魔な林で遮られていてダメでした.
最近(2024/10)気づいたのですが,当別町周辺は広大な札幌西方山地を一望できるもう一つの良いロケーションだと思います(上の景観図参照).しかし,私がこの場所にいるのはいつも午前遅くか午後に入ってからなので,南を見るこのビューは逆光とその haze でいま一つクリアではありません.そのため,思うような写真はまだ撮れていません.おまけに,送電線とかの邪魔なオブジェクトもけっこう多い...まあそれは generative AI でなんとかなるかもしれません.季節的なものもあると思うので,そのへんを考慮してチャレンジしてみたいと思っています.
※『札幌西方山地』は,おそらく正式な名称ではありません.Google/Bing で検索してみると,ヒットしてくるのはほとんどが私自身のページ(!)ですが,しかし私の造語でもありません.例えば岡村ほか(2010)にもはっきりと使われています.この論文では『...を札幌西方山地と呼ぶ』と書かれているのですが,私がこの言葉を知って使うようになったのはもっと前の話なので,どこかにオリジナルがあるのかもしれませんが,不明です.
岡村 聡・八幡正弘・西戸裕嗣・指宿敦志・横井 悟・米島真由子・今山武志・前田仁一郎(2010)北海道中央部に分布する滝の上期火山岩類の放射年代と岩石学的特徴-勇払油ガス田の浅層貯留層を構成する火山岩の岩石化学的検討-.地質学雑誌,116,181-198.
『手稲山』は札幌の多分どこからでも見えるシンボルのような山です.その頂上は緩く左(南)に傾いたテーブル状の特徴的な形をしています.これは “平頂溶岩” が作る一種の古火山地形であることは既に述べた通りです.
しかし,札幌中心部から見える山々は手稲山だけではありません.札幌市街地のビルの向こうには手稲山から南へ続く山並みが鮮やかで,札幌という都市のイメージとなっています(下写真).
手稲山とその裾野の山々.上のパノラマの右を切り出し Adobe Photoshop により “空置換” を施したもの.
右は,パノラマの右端を切り出して手稲山山頂部を拡大表示し,ちょっと “盛った” ものです.これを見ると,手稲山がなぜ札幌のシンボルと言われるのかが分かるような気がします.存在感というか,ボリューム感というか.
なお,下に述べる巨大地すべり地形は,この手稲山頂から向かって右に伸びる尾根筋の向こう側にあり,札幌市中心部からは隠れていて見えません.
手稲山の東麓には,最大幅 4.5 km の巨大な地すべり地形があります.地すべりの発生時期は分かっていませんが,支笏火山の噴出以前で少なくとも5万年前より古いものです(宮坂ほか,2007).
宮坂省吾,山崎 茜,岡村 聡,英 弘,石井正之,小板橋重一(2007)鮮新世溶岩台地縁辺の地すべり地形:手稲山山体崩壊と天狗岳地すべり.日本地質学会第114年学術大会見学旅行案内書(地質学雑誌第113巻補遺),19-28.
※ 宮坂ほか(2007)では,この “地すべり” を『岩屑なだれ(rock avalanche)』と呼んでいます.地すべりと岩屑なだれ等の高速斜面変動との関係は私のような素人には難しいものがあります.多分,地すべりは移動速度が遅く移動体にはある程度の連続性がある,岩屑なだれは移動速度が非常に速く移動体は分離していて不連続,といった違いがあるものと推測されます.ここでは,一般的な通称として『地すべり(landslide)』という呼称を使用しており,専門的な立場から分類的にそう呼んでいるわけではありませんのでご了解ください.
下の写真は,札幌市手稲区新発寒付近の土手の上から見た手稲山と地すべり地形の景観です.実はこの地すべりのベストな撮影ポイントをまだ見つけていません.この場所はまあまあなのですが,地すべり地形を俯瞰できる高度がないため,その広がりが実感しにくいのが玉に瑕です.午前遅くなると,もろに逆光になってしまうのもお出かけ写真撮影にはきついところです.あと手前が住宅地なので,電線が邪魔です.Photoshop のワイヤ消しAI機能で可能な限り除去していますが,完全ではありません.
札幌市 手稲区新発寒付近 から見た手稲山と地すべり地形.焦点距離 120 mm で撮影したもの7枚を合成.2025/01 撮影.説明は下図参照.マウスホイールで拡大・縮小表示する.
カシミール3Dによる手稲山地すべり地形.北区新琴似新川付近より.上の写真とはやや視線が異なるが,同様なビューとなるように設定したもの.焦点距離設定 50 mm.
手稲山地すべりを高度 2000 m から正面俯瞰したシミュレーション画像.焦点距離設定 35 mm.マウスオーバーで地すべりを消去したものを表示する.
この大規模な地すべり地形は,例えば地質研『北海道の地すべり地形分布図』などを見ると分かるように,札幌市域最大級の地すべりです(上図・右図).札幌市の南西部には,無意根山東麓や空沼岳北麓に密集した大規模な地すべり地形が見られますが,市街地隣接地域としては手稲山地すべりはダントツに大規模なものです.
軟質な地質の上位に溶岩流などの堅硬な岩盤がほぼ水平に載るという地質状況からくる不安定性が原因となる,いわゆるキャップ・ロック型(cap-rock type)の地すべりと考えられます.しかし,なぜこの場所で大規模な崩壊が起きたのか,そのトリガーは?といった specific なことについてはよく分かっていないのが実情でしょう.
最初に述べたように,この地すべりは5万年以上前に発生したもので,その後活動した形跡はありません.しかし宮坂ほか(2007)によると,その崩積土塊の厚さは約 30 m あり,その末端は現在の住宅地まで達しています.現在は安定していても地震や降雨などにより再活動しないという保証は必ずしもありません.
この “札幌市街から見える” 巨大地すべりについては, 私的・北海道地質百選のページ でも紹介していますので,興味のある方はそちらもご参照ください.
藻岩(もいわ)山(530.9 m)は,言うまでもなく札幌のもっともポピュラーなランドマーク(のひとつ)です.おそらく札幌市街のどこからでもビルの間とかに見える山だと思います.札幌を訪れるインバウンドの方々の定番観光地にもなっているそうです.
ところが...というのか,それだからというのか,私にとって藻岩山はあまりにも身近な存在なので,『ほとんど写真を撮っていません』.私の写真ライブラリの中に,藻岩山をメインの被写体とした写真は見つかりませんでした.
下の写真は,どちらも藻岩山自身を撮ったものではなく,札幌西方山地を目的として東側から撮ったもので,その手前にたまたま藻岩山が写っていた,というものに過ぎません.背後の山々については上のリンクに掲載したものをご覧ください.撮影地点と藻岩山との直線距離は約 12 km です.
この場所は,札幌の西に広がる山地を一望できる私のお気に入りの撮影ポイントです.藻岩山の前にはプレミスト・ドーム(旧札幌ドーム)が輝いています.こうやって見ると,藻岩山というのは向かって左(南)側に裾野を引いた著しく非対称な山型を持っていて,その頂部はやや平坦な形をしているのが分かると思います.
そのへんの地形特徴をもう少し詳しく見るために,藻岩山山頂部のクローズアップを右に示します.
藻岩山山頂から向かって左に傾斜する平坦な稜線は非常に顕著で,ここではこれを “平坦稜線1” と呼びます.この左端はやや傾斜の急な段差状になっていて,その先に非常に長い “平坦稜線2” が続いています.段差の高低差は 30 - 40 m 程度と思われます.
平坦稜線1の手前側・兎平(うさぎだいら)の奥には,やや標高の低い平坦稜線3がほぼ平行に走っています.平坦稜線1との標高差は 40 - 50 m 程度と思われますが,正確には見積もれません.平坦稜線3は短いものですが,兎平の手前側の稜線とほぼ同じ高さ・傾斜になっていて,同一の “面” を形成している可能性があります.
※ 誤解のないように断っておくと,これは現在の藻岩山にこのような平面的な平坦面があるという意味ではありません.下に示す地形陰影図を見ると分かりますが,単に稜線の頂部が横から見ると凹凸のない直線状になっているということです.これはおそらく,元々あった平坦面が浸食・開析された結果ということでしょう.
写真では少し分かりにくい点もあるので,カシミール3Dを使って写真の撮影ポイントからの景観シユレーション図を作成してみました(下図).藻岩山とその周辺だけを浮き立たせるため,シミュレーションの視程設定を 15 km として背景の山々をオミットしています.向かって左(南)側の平坦稜線2の裾野が非常に長く,画面左端の 250 m ピークまで続いていることが分かると思います.平坦稜線3は連続性が悪く断続的で,南側延長はよく分かりません.
これらの平坦稜線は,“藻岩火山” の項で述べるように,藻岩山を構成する火山岩体(溶岩流)の構造を基本的に示しているものと考えられます.なお,藻岩山の東麓斜面には比較的大規模な地すべり地形も見えています(後述).
下の写真は,ちょっと趣向を変えて藻岩山をほぼ南側から見たものです.札幌市民が見慣れている藻岩山の形状とはかなり違っています.山頂から右へ流れ落ちる稜線は見えていますが,“平坦稜線” はあまり印象的ではありません.藻岩山の左側奥には,特徴的な円錐形ピークがいくつも見えています.これらのピークが実際地図上でどこにあたるのかは,おそらく藻岩山西方~幌見峠周辺のピークを見ていると思われるのですが,特定はできていません.
上に書いたように,札幌のランドマーク・藻岩山に関しては,まともな写真がまだ撮れていません.近場にいくらでも撮れるポイントがありそうなのですが,あまりにも札幌市民にとってポピュラーすぎて,写真撮る!という考えが発生しなかったというのが正直なところです.ということで,藻岩山の勇姿については『計画中』ということにしておきたいと思います.
南区藤野周辺から南方を見ると,ポップな形をしたいくつかのピークが並んでいるのが目につきます.その形状から,なんらかの古火山性地形であることは私にも推察できましたが,それ以上追究することは今までしていませんでした.
最近になって,札幌市在住の木村則子さんから,この山が『藤野三山』と呼ばれていることと,そのビューポイントを教えていただきました.残念ながらそのポイントからのビューは季節的なこともあり確認できませんでしたが,ほぼ正面にあたるところから藤野三山の姿を捉えることができました(下写真).
以下では,藤野三山についてその地質学的な成因・性質も交えて紹介したいと思います.
札幌市南区硬石山南から見た藤野三山.豊平川段丘面の手前を豊平川が流れている.焦点距離 60 mm で撮影した3枚をパノラマ合成.2026/01 撮影.電線と電波塔を Photoshop の Generative Removal 機能で除去している.
藤野三山で国土地理院地図でピーク名が付されているのは,焼山(662.3 m)だけです.焼山とその両側にある 579 m,562 m ピークが藤野三山です.なお,フッズ・スキー場のある 562 m ピークの向かって左側斜面は急崖となって形状が著しく非対称になっていますが,これはその山腹が採石場となっているためです.
ところが Google Map でズームインしてみると,これらのピークには向かって左から豊見山・豊平山・豊栄山という山名が表示されます.その名前から藤野三豊山と呼称されている場合もあるようです.これらの正確な読み(とよみやま? とよひらやま? ほうえいざん?)は不明です.
なお,藤野三山の左奥には美しい富士山型の 651 m ピークが見えています(上写真).これは Google Map では藤野富士と表示されますが,1955 年発行の5万分の1地質図幅『石山』では三角山という名前が付されています.
こういった山名がいつどのようにして付けられ使用されているのかは不明ですが,今昔マップサイトを見ると,1950-52 年発行の国土地理院地図では既に焼山の山名が使用されています.つまり,藤野三山の山名が元々あってその後消えていったということではないようです.地元住民によっていつからか伝統的に使われているものということなのでしょう.
南区藤野から定山渓方面に国道 230号線を走り,簾舞(みすまい)を過ぎた頃から右前方に鋭い稜線を持った山が見えてきます.八剣山(はっけんざん)です.
札幌市民にはお馴染みの山ですが,地理院地図等には正式名称として観音岩山の名前で記されており,八剣山は括弧付きの “副名称” となっています.そのへんの由来は分かりませんが,私を含めて札幌市民には八剣山の山名が一般的ではないかと思われます.
南側から見た八剣山.焦点距離 120 mm で撮影した2枚を合成.豊滝除雪ステーションから,2022年8月撮影.
豊滝付近まで来ると,八剣山の裏(南西)側が見えてきますが,こちらは鋭い岩峰とむき出しの青黒い岩肌が,ほかには見られないような風景を作り出しています(上写真).
この写真は豊滝除雪ステーションからのビューですが,八剣山にかなり近いので下から見上げたようなパースが付いています.
八剣山の季節.上:焦点距離 200 mm.2022年9月撮影.下:焦点距離 250 mm.2025年11月撮影.いずれも小金湯さくらの森から.
八剣山のベスト・ビューポイントは,おそらく『小金湯さくらの森』でしょう.ここからは,遮るものなく八剣山をほぼ真正面から見ることができます(右写真).
八剣山の岩峰の下は深い広葉樹林になっていますので,季節に応じたカラフルな風景を楽しむことができます.
岩峰はナイフエッジというのか,鋸の刃のようになっており,その岩壁には縦方向に大きな割れ目が入っており,迫力があります.
岩峰のほぼ中央に見える最高点ピークが八剣山の山頂で,その標高は 498 m です.南側ふもとの段丘面の標高が 195 m 前後ですので,比高は約 300 m ということになります.段丘面の縁から山頂までの水平距離は約 500 m で,平均傾斜はなんと 30度にもなります.八剣山の際立った険しさが分かると思います.
八剣山ピーク.焦点距離 400 mm で撮影した一部をクロップしたもの.小金湯さくらの森から 2024年11月撮影.
左の写真は,八剣山の山頂の望遠写真です.山頂には二人の登山者が立っていますが,見ていると恐ろしくなるような絶壁の傾斜と高さです.
八剣山は札幌近郊でポピュラーな登山対象で,日曜日にその写真を撮ると,たいがい登山者の姿が写り込んでいます.
しかし,滑落などの事故が多発する危険地帯であることも事実で,2016-2020 年の間だけでなんと4件の死亡事故が起きているそうです.つまり,毎年誰かが亡くなっている...このページにも注意喚起があります.
神威岳.左奥の平らな稜線は烏帽子岳.焦点距離 200 mm.小金湯さくらの森から 2024年11月撮影.
神威岳のクローズアップ.焦点距離 600 mm.小金湯さくらの森から 2024年11月撮影.
八剣山を見たその目でちょっと左に振り返ると,右写真のようなかなり異様な山容のピークというか,“巨大岩塊” が山中に見えます.神威岳(かむいだけ)です.その左奥に見えているなだらかな稜線は烏帽子岳(えぼしだけ)ですが,これについては後でまた触れます.
神威岳(983 m)は異様かつ特徴的な形状を持ちますが,その印象から私は “定山渓デビルズタワー” と勝手に呼んでいます.
右のクローズアップ写真から遠望でも分かるように,神威岳山頂は堅硬な岩体からなり,頂部は平坦になっていますので,その岩体はほぼ水平な層状構造を持っているものと考えられます.特に岩体の向かって右側では,垂直に近い割れ目(・節理)が目立ちます.
頂上下部は “ハカマ状” になっていて,岩体の崩落物が崩積・崖錐状になっています.その下位にはちょっと見た目には露岩がなく,どのような岩体からなるものかは不明です.これについては後述します.
デビルズ・タワー.アメリカ・ワイオミング州.Wikipedia による.Colin.faulkingham 撮影.
デビルズ・タワー(Devil's Tower)というのは,スピルバーグの超有名な『未知との遭遇』を見た方ならご存知と思いますが,アメリカ・ワイオミング州にある有名な “山” です.見たとおり,柱状節理の発達した円柱状の火山岩体からなるものです.Wikipedia によると,この岩体は三畳紀の陸成砂岩層に貫入したもので,その年代は古第三紀始新世と言われています.
このような柱状の火山岩体は,火山岩頸(volcanic neck)と呼ばれます.それについては,私の大好きな宮沢賢治の童話(?)の中に実に印象的な解説がありますので,下に引用しておきます.
宮沢賢治『楢ノ木大学士の野宿』(1934)より): 諸君、手っ取り早く云ふならば、岩頸といふのは、地殻から一寸頸を出した太い岩石の棒である。…(中略)… どうしてそんな変なものができるかといふなら、そいつは蓋し簡単だ。えゝ、こゝに一つの火山がある。熔岩を流す。その熔岩は地殻の深いところから太い棒になってのぼって来る。火山がだんだん衰へて、その腹の中まで冷えてしまふ。熔岩の棒もかたまってしまふ。それから火山は永い間に空気や水のために、だんだん崩れる。たうたう削られてへらされて、しまひには上の方がすっかり無くなって、前のかたまった熔岩の棒だけが、やっと残るといふあんばいだ。…(中略)… それが岩頸だ。
で...私は神威岳のその山容から,それが火山岩頸であると思い込み,長くそう誤解していました.お恥ずかしい話で,宮沢賢治にも申し訳ないです.それについては次の項で詳しく書きます.
右に,札幌周辺のいくつかのロケーションから見た神威岳の遠望写真を示します.
江別市東野幌から見た神威岳.焦点距離 130 mm.2022年7月撮影.
まず,江別市東野幌から見た超平坦な野幌丘陵を前景とした神威岳.今は亡き北海道百年記念塔の向こうに神威岳の特徴的なアタマが見えています.その右側に烏帽子岳(1109.4 m)がはっきり見えていますが,この角度から見ると,なぜこのピークが “烏帽子” 岳と呼ばれているかが分かると思います.
北海道大学理学部6号館から見た神威岳.焦点距離 110 mm.2005年4月撮影.
次が,札幌市街からということで,北海道大学理学部6号館10階(私の昔の勤務先)から百松沢山の左に見える神威岳.札幌のビル街・大倉山ジャンプ場の向こうというビューが印象的です.この角度では烏帽子岳は稜線に隠れているようです.札幌市街の西方が基本的には旧火山地帯であるということが実感できる風景です.左に見える 237 m ピークのようなドーム状の火山地形は,札幌市民におなじみの三角山や円山と同じ性格のものでしょう.
南区滝野霊園から見た神威岳.焦点距離 120 mm.2024年10月撮影.
最後が,南東側からのビューです.この角度では,神威岳は烏帽子岳のピークの左手前に重なっていて,特に積雪期でないとちょっと見には気づきません.写真右側の雲の下に百松沢山が見えています.
増毛-樺戸山地が実は札幌からも良く見えているというのは,『あの白い山は何かな?』という程度で私は今まであまり意識していませんでした.
下のパノラマ写真は,札幌市街の西端部,西区宮の森の三角山東麓にある某施設の4階サンルームから見たものです.なんと言っても,札幌市街(琴似方面)のモダンなビル風景との対比がファンタスティックです.こんな写真が撮れたのは初めてなのですが,もちろんまともなカメラなど持っていなかったため,バッグの中にあったコンパクトデジで撮ったものです.ピクセル等倍で見るとその画質は悲惨ですが,こうやって縮小して見る分には素晴らしい.
札幌市西区宮の森から見た増毛山地.焦点距離 250 mm で撮影した4枚を合成.2025年3月撮影.
この景観を見てやはり驚くのは,見えている最高ピークが『暑寒別岳』(1492 m)であるということです.なにしろ撮影位置からの直線距離は 75 km もあるのですから.浜益岳周辺の見え方はある意味予想通りでした.写真右側にはカシミール3Dで確認してみると “別狩(べっかり)岳” がなんと二つあります.最初はカシミール3Dのデータバグかと思ったのですが,確認してみたらたしかにその通りでした.知らなかったです.二つの別狩岳の間が厚田川です.
この風景の右側には樺戸山地が見えるはずなのですが,この時は降雪の影響か見えていませんでした.さらに右側には芦別岳-夕張岳があり,それは辛うじて見えていました.
実は私の住んでいる札幌南東端地域でも,視程の良いときには驚くような見え方でこの山地が見えます.もちろん以前から気づいてはいたのですが,なにしろ住宅地の中だし季節的な限定もあり,なかなか捉えることができませんでした.下の写真は最近やっとゲットしたもので,暑寒別岳とその左の増毛山地です.
札幌市清田区真栄から見た増毛山地.焦点距離 420 mm で撮影した3枚を合成.2025年4月撮影.
一番右の最高ピークが暑寒別岳で,撮影地点からの直線距離は約 82 km(!)です.その右の南暑寒別岳は残念ながら丘に隠れて見えませんでした.
羊蹄山が札幌周辺(の平地)からも見える可能性があることは このページ に詳しく述べています.下にあげたのは,その景観シミュレーションです.しかし,まだ実際にこの景観を確認できたわけではなく,したがって写真もありません. こんな話 もありますので(写真は無し),見えることは見えるんでしょうけど.もっと探ってみたら, こんなの もありました.写真は微妙すぎてよく分かりませんが.
これは,このアーティクルのそもそもの発端なのですが...私自身は何度も藻岩山に登っているというのに,なんの記憶も記録もありません.自分としては,この景観シミュレーションを実証する写真は絶対にゲットしたいところです.
※ これまでこのアーティクル中にあった,札幌から見える山以外の『道内の山々の風景』を分離し,他のいくつかの題材と合わせて 別アーティクル として公開しました.ただし,まだまだ工事中で部分公開です.いつ完成するかは,分かりません.
(2024/12/02)