私的・北海道地質百選
『大夕張クリッペ』
札幌およびその郊外からは,天気がよければ,夕張山地とその背後の夕張岳-芦別岳の山容を平地からでも遠望することができる.
馬追丘陵の東麓部は特に良好な眺望地であるが,そこから夕張市市街方面を見ると,冷水山(マウント・レースイ)の左側に,写真のような非常に特徴的な平坦面を持つ台地状地形が見える.この “台地” は夕張市遠幌加別川上流にあり,南端部にある標高 874 m の丸山とそこから北に伸びる尾根により形成されている.
これは,夕張地域に特徴的な『低角押し被せ構造』が作った地形である.長尾ほか(1954)によると,この台地状地形を作っているのは上部白亜系函淵層の硬質な砂岩層で,軟質な頁岩からなる古第三系幌内層の上位に衝上しており,『丸山根無地塊』と呼ばれている.この近傍には,ほかにも同様な根無地塊がいくつか存在する.ここではこれらを総称して “大夕張クリッペ” と呼ぶ.
大夕張クリッペは,北米-ユーラシア・プレート(あるいは千島-本州弧)衝突に起因するこの地域の第三紀圧縮テクトニクスに関連した極めて興味深い地質構造である.こういった低角地質構造が地形として見える例は国内では珍しく,貴重なものである.
夕張市市街北方の丁未風致公園からは,この台地状地形を間近に見ることができる.ちょうどその上に蛇紋岩ダイアピルの山-夕張岳が顔を出しており,ある意味で象徴的な地質景観を構成している(下写真).
※ 丁未風致公園は夕張市財政再建計画により,かなりの期間閉鎖されていたが,現在は期間限定で夏季のみ開園されているようである(未確認).
なお,この台地状地形の東側斜面には大規模な地すべり地形が数多く形成されており,堅硬な岩石からなるクリッペの存在に規制された一種の “キャップロック型地すべり” と考えられる.
(なし)
夕張市 遠幌加別川上流部.
撮影地点: 馬追丘陵東麓. 丁未風致公園.
長尾捨一・小山内煕・酒匂純俊,1954,5万分の1地質図幅『大夕張』および同説明書,北海道開発庁,121 p.