私的・北海道地質百選
『手稲山地すべり』

注)このサイトは本家・北海道地質百選では,宮坂さんらによって『手稲山岩屑なだれ』として投稿されているものです.本サイトはそれによって触発されたもので,大いに参考にさせてもらいましたが,写真などのコンテンツはすべてオリジナルです.


手稲山.札幌市手稲区新発寒付近から.2025/01 撮影.マウスオーバーで説明を表示する.黄色シェード:滑落崖,オレンジ色シェード:地すべり地形.

 手稲山 は札幌市街地の西に位置し,その市街地のどこからでも見える特徴的な山容から札幌のランドマークとなっている山である.
 手稲山の山体は約 400 万年前に噴出した新第三紀鮮新世の手稲山溶岩からなり,その流走面によって上部が平らな特徴的な山容を形成している.手稲山の東麓部には,住宅地まで広がる末端を持つ大規模な地すべり地形が認められる.


※ この地形を造った斜面崩壊は,宮坂ほか(2007)などでは『岩屑なだれ rockslide avalanche』とされている.斜面崩壊(・変動)はその変位速度や様式などによって専門的に細分類されていると推察される.しかし,ここではそれには踏み込まず,一般の読者にも分かりやすいように,斜面崩壊の包括的な総称(・通称?)として,“地すべり” の語を用いる.


手稲山地すべりの南東側からの俯瞰図.国土地理院10 mメッシュ標高データを用い,カシミール3Dにより作成.札幌市西区発寒上空 2,600 m から.

 手稲山地すべりの規模は宮坂ほか(2007)によると,幅 2 km,奥行 6.5 km,滑落崖と地すべり体頭部との落差 400 m である.地すべり体の上にクッタラ・支笏火山の火山灰堆積物が覆っていることから,地すべりの形成は約5万年前と考えられている.言うまでもないが,この地すべりにはそれ以降現在まで活動した形跡は無い.

 手稲山地すべりの形態は,実は地上からのビューではあまり良く分からない.それをもっともよく把握できるのは,南東方の上空 2,500 m 前後からのビューである(左図).そのような写真をリアルで撮影することは一般人には不可能なので,ここではシミュレーション俯瞰図を掲載しておく.


手稲山地すべりの断面図.国土地理院10 mメッシュ標高データを用い,カシミール3Dにより作成.

 上に,手稲山地すべりの東西断面を示す.高さ方向が強調されていない 1:1 のものである.手稲山山頂直下に滑落崖があり,そこから 4 km 以上に渡って下方移動した岩塊(ブロック)と崩積土が,やや凹凸に富んだ斜面を形成している.エプロン状になった緩傾斜末端部には,道央自動車道と手稲区稲穂の住宅街が造成されている.

 札幌のような人口密集地の周辺にこのような大規模な地すべり地形があるということは,我々に地球の自然プロセスと人間社会活動との関係性をあらためて考えさせてくれる.


既存の指定など

(なし)


所在地

札幌市手稲区手稲本町. 撮影場所:札幌市手稲区新発寒付近.


サイトの状態:


参考文献

宮坂省吾,山崎 茜,岡村 聡,英 弘,石井正之,小板橋重一(2007)鮮新世溶岩台地縁辺の地すべり地形:手稲山山体崩壊と天狗岳地すべり.日本地質学会第114年学術大会見学旅行案内書(地質学雑誌第113巻補遺),19-28.


関連サイト

(なし)



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