私的・北海道地質百選
『奈江川の蝦夷層群』

 蝦夷層群下部層準の砂岩は,石英粒子を多量に含むその特徴的な岩相から伝統的に『富問(とみとい)砂岩』と呼ばれていた(例えば;橋本,1955).この層準は,Takashima et al. (2004) の “シューパロ川層” に相当する.
 富問砂岩は,蝦夷層群中の『QF 砂岩(quartzofeldspathic sandstone』の典型的なものであり,その砕屑物供給を考えるうえで重要な key となるものである.


タービダイト互層.向かって左(西)側に急傾斜している.2002 年 10 月撮影.

 芦別市奈江川(なえがわ)入り口付近には,“富問砂岩” の厚層タービダイト砂岩互層が露出している(右写真).

 沢の中はブッシュで薄暗く,露頭も苔に覆われている部分が多いので,良好なサイトとは言えない.しかし見かけはともかく,新鮮なこの層準の砂岩サンプルを採取できるサイトとしては,貴重なものとなっている.


 厚層理タービダイト砂岩層の下底には,ソールマークがしばしば観察される(下写真).一部にグルーブ・キャストも見られるが,フルート・キャストを主体とする.ともに有方向性のソールマークであるが,古流向についての検討例はない.


左:タービダイト層底面のソール・マーク.右:フルート・キャスト.2002 年 10 月撮影.
タービダイト互層の下位に露出する上部空知層群の岩相.2015 年 7 月撮影.

 これらの蝦夷層群下部層準タービダイト互層の下位には,上部空知層群に相当する地層(“惣芦別川層”;Takashima et al., 2004)が露出している(右写真).

 岩相は緑色泥岩と緑灰色凝灰質砂岩の互層で,“富問砂岩” の陸源性砕屑物が陸側から供給される以前の半深海性環境を示すものである.この下位にはトラップされた海洋地殻の構成メンバーである海洋性玄武岩体(下部空知層群)がある.


既存の指定など

(なし)


所在地

芦別市 奈江川.


サイトの状態:


参考文献

Takashima, R., Kawabe, F., Nishi, H., Moriya, K., Wani, R. and Ando, H., 2004, Geology and stratigraphy of forearc basin sediments in Hokkaido, Japan: Cretaceous environmental events on the Northwest Pacific margin. Cretaceous Research, 25, 365-390.

橋本 亘(1955)5万分の1地質図幅『下富良野』.北海道開発庁,72 p.

今津 太郎・川村 信人・Keewook Yi・竹下 徹(2016) 砕屑性ジルコンU-Pb年代から見た蝦夷層群中部層準基底不整合のハイエタス.日本地球惑星科学連合2016年大会,SGL37-P03.


関連サイト



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