私的・北海道地質百選
『野幌断層』

 野幌丘陵断層帯(=野幌活動セグメント:以下,“野幌断層” と略記)は,札幌市街のすぐ東側に位置する活断層帯である.その詳細は『活断層の諸問題』アーティクルの 野幌丘陵 の項で詳しく述べているので,ここでは概略を紹介したい.
 野幌断層は,幅約 5 km,長さ約 20 kmの南北に伸びる逆断層帯で,その平均活動間隔は約1万年.紀元前630年以降に一度活動しているとされている(産総研活断層データベース)が,その時期や活動規模などは不明である.江別市街やその周辺部に位置しており,居住・文教地区でもその活断層地形を見ることができる.


野幌断層の撓曲マウンド.江別市文京台.2025年 11 月撮影.

 右写真は,江別市文京台・酪農学園大学敷地の北東端で見られる高さ 数 m の “撓曲マウンド” と思われる地形である.
 撓曲マウンドは,活断層の活動によって地表が持ち上げられてできる.もちろん農地・宅地の中なので,造成など人工的改変の結果による可能性もあるが,『活断層の諸問題』で紹介したとおり,非常に明瞭で活断層と認定されているリニアメント地形上にあり,活断層関連地形であることはほぼ間違いない.活断層はこのマウンドから写真の右(南西)方向に走っている.

 江別市街の北西部,大麻元町~元野幌~新栄台~元江別にかけて,長さ約 5 km で南西-北東に走る明瞭なリニアメントが見られる.これも野幌断層地形の一つで,大麻北町西方では市街地(標高 20 - 30 m)の平坦面と西側低地との間に明瞭な直線的な段差地形が見られる(下写真).その高さは 10 m 以下であるがおそらく人工的に改変されたもので,平坦な緩斜面となっている.撓曲地形のようなものは見られない.


野幌断層の作る直線的な段差地形.江別市大麻北町西方.2025年 11 月撮影.
野幌丘陵東縁部の野幌断層が作る小段差地形.江別市東野幌.2025年 11 月撮影.

 同様な段差地形は,野幌丘陵東側の石狩低地との間にも発達している(左写真).段差の高さは 数 m 以下で,現在はその脚部が水路となっている.この段差は南北方向に約 4 km にわたって明瞭なリニアメントとして追跡される.
 これが活断層(関連)地形であるとは,そういう知識がなければ,とても野外でそれと気づくようなものではない.


 これらの段差地形は,それのみを見る限りでは単に低地との境界に形成された河川侵食地形あるいはその改変地形とも見える.しかし実は明瞭なリニアメント地形で,産総研活断層データベースなどで公式に活断層と認定されているものである.
 市街地あるいはその近傍のこういった小地形が活断層地形だということは,私自身ある意味驚くようなことであったが,それは都市部に存在する考慮すべき自然災害リスクといったものではない.地震をはじめとする地球科学的災害と人間社会との間の “時空的関係性” について考えさせるものと言える.これについては他のアーティクルで詳述したい.


既存の指定など

(なし)


所在地

江別市文京台. 江別市大麻北町西方. 江別市東野幌.


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参考文献

(なし)


関連サイト



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