私的・北海道地質百選
『泉郷断層』

注)このサイトは本家・北海道地質百選には,田近淳さんとの共同執筆で投稿したものです.今回ここに掲載するにあたり,文章表現はすべて見直し,ほぼオリジナルとなっていますが,田近さんの書いた文章部分が未分離で残っている場合もあり得ます.ご了解ください.なお写真はすべてオリジナルです.


 『活断層』は,我々がなにか構造物を建設しようとするとその敷地にしょっちゅう出てくるような出現確率を持った地質現象ではない.しかし,日本列島はいくつものプレートが活動する変動帯であって,たしかにその中には大規模な活断層がいくつも存在し,時にはそれがシビアな被害地震を起こしている.2018年胆振東部地震を想起するまでもなく,北海道もその例外ではない.


泉郷断層崖を東側の極楽寺前から正面に見たもの.畑の畝の上がり下がりに注意.背景は石狩低地帯とその西方火山群.右側に恵庭岳が見えている.2010 年 5 月撮影.

 『泉郷断層』は千歳市泉郷から道東道のコムカラ峠にむかって伸びる逆断層型の活断層で,千歳市泉郷(いずみさと)付近では西側が隆起し,東側が落ちるセンスの構造地形がみられる.
 泉郷のお寺(極楽寺)のあたりから西側の石狩低地の方を眺めると,広い畑に手前(東側)が落ちた高さ 5 m ぐらいの崖(斜面)が見える(上写真).これが,泉郷断層の断層崖である.

※ ただし,泉郷断層がこの部分で地表に達しているという確信は持てないので,“撓曲崖” と表現するのが適切なのかもしれない.


 このように泉郷断層の造る変動地形を真正面から見ても,“そう言われないと分からない” レベルのものと感じられる.変動地形の専門家でも,場所を伏せてこの写真を見せられたら,これが活断層地形と気付く人はおそらくいないだろう.つまり活断層というものは,野外で地形を “一目見てそれと分かる” ようなものではなく,他の地形特徴をもっと広域的に検討することによってはじめて認識・特定できるものと言える.

 泉郷断層地形を,角度を変えて北東側から斜めに見ると,もう少し事態は明確になる(下写真).右側が低地帯側であるが,そちらに向かって緩く傾斜する地形の中に,土提状に盛り上がった直線状地形があることがはっきりと分かるだろう.


泉郷断層崖を北東側から斜めに見たもの.右側が断層崖.住宅の右に見える小高い林が泉郷神社の丘.背後に見える山も断層地形の一部で,その左側を泉郷断層が通っている.2006 年 4 月撮影.

 なお,この泉郷断層地形は,現在はその国道側(写真の畑の部分)に住宅や農業施設が建設され,少なくとも道路からはまったく見えなくなってしまったのはきわめて残念なことである.地権者の許可を得て畑地に立ち入れば近接の観察が可能と思われるが,確認していない.


泉郷神社の丘を南東側から見たもの.右にある建物は信田温泉.2005 年 6 月撮影.

 泉郷断層の南南東の延長は,泉郷神社のある小高い丘の東を通り(右写真),嶮淵(けぬふち)川にそってコムカラ峠に達している.泉郷神社付近では,断層に沿って温泉(松原温泉・信田温泉)も湧き出しているのは興味深い.

 泉郷断層は,石狩平野の東端を通る『石狩低地東縁断層帯』の一部である.この断層帯は,美唄付近から早来にいたる南北約 66 km の大規模な活断層で,国の地震調査研究推進本部は,今後 30 年以内の地震発生確率を道内では最大の値である最大 6 % と評価している.


既存の指定など

(なし)


所在地

千歳市 泉郷.


サイトの状態:


参考文献

(なし)


関連サイト

(なし)



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