私的・北海道地質百選
『かなやま湖畔の蝦夷層群』
蝦夷層群は白亜紀の前弧海盆堆積体であるが,東側には白亜紀付加体(イドンナップ帯)が存在し,前弧海盆と付加体との間が元々どのような遷移関係にあり,現在それがどうなっているかは重要な問題である.
しかし,蝦夷層群の調査がその東部地域ではあまり行き届いていないことや,露出状況などの点もあり,その問題は必ずしも明らかになっているとは言えない.
南富良野町かなやま湖畔を走る道道 465 号線沿いには,蝦夷層群分布の東限に近いサイトがある.露頭全体にロックネットがかかっている(2002 年現在)こともあり,良好な見学サイトとは言えないが,付加体分布に近接した蝦夷層群の岩相が観察できる貴重なサイトである.
※ なお,この湖畔の道道は,その後改良工事が行われており,サイトの近傍でも直線化や橋敷設などが行われている.その影響でこの露頭が現在どうなっているかは未確認である.
露出する蝦夷層群は中層理を主体とする砂泥互層で,岩相的には蝦夷層群中部層準のものに類似している点がある(右写真上).この部分では砂泥互層は整然としており,特に変形は認められない.
しかし,露頭の他の部分では,砂泥互層は強く変形しており,層面平行伸長やブーダン化により,破断相を呈している(右写真下).この部分だけ見ると,付加体中の変形砕屑岩と何も違いはない.
このような変形が単純な後生的構造変形なのか,深層スランプ変形と言えるものなのか,あるいはその両方が絡み合ったものなのか,詳細に検討された例はない.
このような蝦夷層群における変形は,蝦夷層群分布東部地域に属する千呂露川地域や三石地域でも見られるもので,関連性が興味深い.
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注)GPS の無いときの見学であり,位置はおおよそのもので正確ではない.
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