私的・北海道地質百選
『三石ダムの蝦夷層群』

 白亜紀前弧海盆堆積体・蝦夷層群・下部層準の厚層タービダイトは,蝦夷層群における陸源粗粒砕屑物供給の最初のもので,海溝ジャンプによる新たな前弧海盆の出現を告げる “ファンファーレ” とも言うべきものである.


蝦夷層群下部層準のタービダイト互層.2002 年 10 月撮影.
厚層理タービダイト砂岩層.2002 年 10 月撮影.

 新ひだか町三石美河(みかわ)の三石ダム周辺には,蝦夷層群下部層準の良好な露頭がある(右写真).
 『農屋』図幅では,三石川層として塗色されているものに相当する.

 タービダイト砂岩層の最大層厚は 1 m 程度で,やや膨縮変形している.

 厚層タービダイト砂岩層が,ほぼ癒着して累重する部分も見られる(右下写真).


道路工事で出現した蝦夷層群下部層準露頭.2000 年 9 月撮影.

 上の露頭は,2000 年夏から秋にかけて,道路工事の開削によって一時的に出現した露頭で,下部層準タービダイト層の露頭として貴重なものであった.


上のパノラマ写真露頭から道路の反対側にある互層露頭.2000 年 9 月撮影.
下部層準タービダイト層下底に見られるソールマーク.上:グルーブ・キャスト.下:ロード・キャスト.2000 年 9 月撮影.

 このような新鮮な露頭で見ると,全体に意外なほど強い構造変形を受けており,層面に準平行~低角斜交する剪断面が発達し,砂岩層はそれによって伸長破断・膨縮している.泥岩部は強いすべり面となっている部分が多い.

 こういった強い構造変形は,中部層準にはほとんど見られない.しかし下部層準に普遍的なものなのか,また地域による差異があるのかどうかは,記載報告がほとんどなく,実はよく分からないというのが実情である.

 なお,このような強い構造変形にもかかわらず,この露頭ではタービダイト砂岩層底面にさまざまなソールマークが観察できる(右下写真).グルーブ・キャスト,ロード・キャストが主体である.右写真下は,フルート・キャストが荷重によって変形したもののように見えるが,確信はない.

 これらのソールマークから分かることはほとんどないが,少なくともこのタービダイト互層が逆転していないことだけは分かる.


既存の指定など

(なし)


所在地

新ひだか町 三石美河.


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参考文献

松下勝秀・鈴木 守(1962)5万分の1地質図幅『農屋』.北海道開発庁,38 p.


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