私的・北海道地質百選
『館の岬のスランプ層』
『白亜の地層』が露出する乙部町館の岬の北側には,新第三系館層の露出が 1 km 以上にわたって続いている(下写真左).
露出しているのは,厚層理タービダイト砂岩と黄白色シルト岩の互層で(下写真右),ほぼ水平層であるが北へ緩く傾斜している.
この館層互層の中に,厚さ約 5 m のスランプ層が観察される(下写真).
1997 年当時は露頭状態がよく,スランプ層が露頭全面にわたって観察できた(下写真下).しかしその後の露頭の崩れや植生繁茂によって,スランプ層は見えてはいるが非常に分かりにくい状況になっている(2009 年現在).現在の露頭状況がどうなのかは確認していない.
スランプ層の内部構造は,露頭の左右で大きく異なっている.
左側では黒色を呈する厚層粗粒層が斜め(右下がり)に転位し,一部は弱く破断している.右側では薄い黒色層を挟むシルト岩互層が褶曲し,向かって左側へのし上げている.その先端には衝上センスのすべり面があるようにも見えるが確認できない.
スランプ層の上面は上位層によって平面的に浸食されている.
スランプ体内部の黒色層の正体は,粗粒タービダイト層である(右写真).このタービダイトはスコリア質粒子を大量に含み,全体に黒色を示す.この地域の館層に特徴的なものである.
2009 年現在,スランプ層の露出状況は悪くなっていたが,1997 年の写真には写っていない露頭右側の塔状部にスランプ層が露出しているのが観察できた(右写真).
ここでは,スランプ層下部に変形した紐(ひも)状あるいは伸長レンズ(elongated lens)状のシルト岩破断層が見えている.
スランプ層上部は乱雑(chaotic)で,左側には上面を侵食された黒色層も見えている.
(なし)
※ 2021/06 ~ 2023/07 現在,国道 229 号線は館の岬トンネルの北側で斜面・岩盤崩壊により通行止め・立ち入り禁止となっている.
(なし)