私的・北海道地質百選
『雨霧山の川端層』
新第三系川端(かわばた)層は,“古日高山脈” の前縁盆地を埋積した重力流堆積体で,北海道中央部のこの時期を代表する地層と言ってよい.
栗山町と夕張市の境界にある雨霧山(あまぎりやま)の北側鞍部を通る雨霧山林道には,夕張側に入ったところに川端層の良好な露出がある(下写真).
川端層の岩相はタービダイト砂岩と泥岩の薄層理~中層理互層で(右写真),厚さ 1 m 以下の礫質粗粒タービダイトを挟む場合がある(上写真最上部の単層).
相対的に硬質な砂岩層が泥岩層から突出し,層理面に直交した内部の2系統の節理面に沿って割れ,『サメの歯』状の特徴的な露頭景観を作っている(右下写真).
川端層の下位には,滝の上(たきのうえ)層が接する.
右下の写真は手元の記録によると『滝の上層最上部』となっているが,川上ほか(2002)によると滝の上層の岩相は塊状泥岩となっているので,この露頭は,川端層の最下部なのであろう.もしかすると,写真右端に写っている泥岩層が滝の上層なのかもしれない.
いずれにせよ,川上ほか(2002)にあるように川端層と滝の上層の関係は整合漸移関係ということになる.
川端層中には,規模の大きなスランプ層が挟在する.右写真はその一つで,厚さは約 8 m,スランプ体の内部構造がよく観察できる.
スランプ層の上半部と下半部で構造が異なっており,上半部は破断した砂岩ブロックと変形した大きな砂泥薄互層ブロック(径 4 m 程度)を含んでいる.下半部の構造は異様で,厚層の砂岩層が不規則に変形した『真鱈のタチ(白子)』状構造を示している(右写真下).
北海道の新第三系中のスランプ体はさまざまな層準で見ているが,このような構造は見たことがない.
おそらく,厚層砂岩互層の未固結時流動・膨縮・集積によって形成されたものと推察されるが,きわめて摩訶不思議なものと言える.
Google, Bing でちょっと調べてみた限りでは,世界的にもこのような構造の記載例はなかった.
※ このサイトのある雨霧山林道は,栗山町側からは東山川を入り,雨霧山尾根に向かって登っていく.2008 年頃に再度行ってみた時は林道は非常に荒れており,状況も変化していてこの露頭には到達できなかった.夕張市清水沢側から熊の沢を登っていく林道ルートがあるが,到達性は未確認である.
(なし)
※ 2002年当時は GPS を持っておらずルートマップ等の記録もないため,場所は確実ではない.雨霧山南東側の林道の可能性もある.
川上源太郎・塩野正道・川村信人・卜部暁子・小泉 格(2002)北海道中央部,夕張山地に分布する中新統川端層の層序と堆積年代.地質雑,108, 186-200.