私的・北海道地質百選
『千鳥が滝の地層』
夕張市滝の上公園内の夕張川河床平坦面に,新第三系川端層の礫岩・砂岩・泥岩互層が広く露出する.この露頭は公園吊り橋上から一望の下に見渡せ,迫力ある地質景観となっている.
なお,この河床平坦面は公園管理者によって立ち入り禁止となっており,立ち入るには夕張市と札幌土木現業所の許可が必要であるが,2022 年現在立ち入ることは事実上不可能な状態となっている.
川端層は,中新世の島弧衝突によって形成された狭長なフォアディープ堆積盆に堆積した重力流堆積物を特徴とする地層で,その全層厚は 3,000 m に達する.
シルト岩・葉理砂岩・粗粒タービダイトの互層からなり(右写真),粗粒タービダイトには礫質で単層厚 5 m に達するものがある.層理面の走向は NNW,傾斜は 60°W で,露頭面が水平で平坦なため,吊り橋側から見ると地層の走向と傾斜の関係がよく理解できる.
千鳥が滝では,川端層の中のさまざまな岩相・堆積構造が観察できる.下の写真にそのいくつかの例を示す.
タービダイトの底面には,フルートキャスト・グルーブキャストなどの定向性ソールマークが顕著に発達する部分があり,良好な観察対象となっている(上写真).しかしこの貴重な露頭は,雪解け時の増水により崩落してその大部分が失われている.
なお,川端層には何枚かの珪長質凝灰岩の鍵層が存在するが,その分布は狭長なリッジをなしており,空中写真や標高陰影図等で,長く明瞭なリニアメントとして認識できる.
川村信人:川上源太郎,2007,千鳥が滝の中新統川端層とソールマーク.地質ニュース,Vol. 10, No.8, 表紙写真とその説明(p.6).
川上 源太郎・塩野 正道・川村 信人・卜部 暁子・小泉 格,2002,北海道中央部,夕張山地に分布する中新統川端層の層序と堆積年代.地質学雑誌,108, 186-200.