私的・北海道地質百選
『草木舞沢の川端層』
夕張市と由仁町の境界に位置する草木舞(そうもくまい)沢(右写真)は,新第三系川端層の沢中露頭が良く観察できる場所で,北海道大学理学部3年目地質学実習の実習サイトとしても長く使用されてきた場所である.
沢への入り方としては,写真に写っている国道側から入りたいところであるが,道路からの斜面が急で多少難しい.いったん草木舞林道を入り,高速道路下の広場状のところにクルマを止め,そこから高速道下のタービダイト露頭を目指してヤブを降りると沢へ出ることができる.その部分から下流側が見学サイトになる.
草木舞沢の川端層の主体は,葉理シルト岩と細粒砂岩の薄互層である(右写真).
層理面は下流側に急傾斜に傾斜しており,下流側が層位学的上位になる.
砂岩層上面にはカレント・リップルが認められる場合がある(右下写真).
互層中には厚いタービダイト礫岩層が2枚挟在しており,さらに小さな滝になっている部分に厚い凝灰岩層の露出がある.礫岩は淘汰度・円磨度ともに比較的低く,砂泥質古期堆積岩類・チャートの礫を主体としている(右下写真).
河床礫中には,花崗岩質岩の円礫が頻繁に認められ,川端層の礫岩からリワークされたものと判断されるが,この見学サイトに露出する礫岩中には花崗岩質岩礫は認められない.
高速道路高架橋下には,川端層厚層タービダイトの良好な露出がある(右写真).粗粒で明瞭な級化を示し,単層下部は一部礫質になっている部分がある.
タービダイト層下底には,グルーブキャスト・フルートキャストなどのソールマークが良好に観察できる(下写真).
※ 草木舞沢,沢幅が広く水量も普段は少ないので,中間部の小さな滝になっているところを除くと簡単に渡渉や見学ができる場所である.しかし見学には際しては,膝下程度であるが川に漬かる部分があるので,長靴等の野外装備が必要である.また,降雨の後などは水量が多く流れが激しくなる場合があるので注意していただきたい.
(なし)
川上源太郎・塩野正道・川村信人・卜部暁子・小泉 格(2002)北海道中央部,夕張山地に分布する中新統川端層の層序と堆積年代.地質雑,108, 186-200.