私的・北海道地質百選
『桂沢覆道上の三笠層』
注記: 本見学サイトはさまざまな地質見学で使用されているものであるが,覆道という道路構造物上にある.立ち入り禁止等の規制は明示されていないが,立ち入りが道路管理者によって容認されているかどうかは不明である.また,この道路は最近は富良野側への近道となってり,交通量もかなり多い.サイトの出入りの際には十分気を付ける必要がある.
これらの点を十分に踏まえて,(立ち入るならば)自己責任・自己リスクで見学して欲しい.
三笠市街から桂沢湖に至る道道 116 号線に『桂沢覆道』(右写真)がある.
覆道の(桂沢湖方面に向かって)左側の擁壁に沿って覆道上に登り,しばらく進むと,左方の山腹に露頭が見えてくる(右下写真).
蝦夷層群中部層準・三笠層の露頭である.しかしこの露頭自体は風化などで状態が悪く,成層構造なども良く見えない.緑色を帯びた細粒~中粒の砂岩である.
露頭はいまいちであるが,覆道上の脇に転がっている砂岩転石の中に,見事な二枚貝化石の密集しているものがあり,筆者のような化石嫌い(?)でも感動する.
化石音痴の著者には,これが正確にどのようなものなのか分からないのだが,素人目には三角貝(Trigonia)やイノセラムス(Inoceramus)“のようなもの” が含まれている.
その他に,単純な形状で装飾も見えない二枚貝殻が多数含まれているが,これが何かは分からない.
同様な化石含有層は,『三笠博物館前のストーム礫岩』で紹介したが,少なくともこの転石には,含礫部は無いように見える.
層理にそって割れた面で化石濃集部の一部を見ているためかもしれないが.
転石の中には,三笠層砂岩の特徴的な岩相を示すものがある(右写真).低角で一部波状に見える斜交ラミナを持つ淘汰の良い砂岩である.
おそらく,ストーム波浪によって浅海で形成されたハンモック砂岩(HCS: Hummocky Cross-laminated Sandstone)と考えられる.
上の化石濃集部も,ストームによる掃き寄せで形成された可能性がある.
(なし)
吉田 尚・神戸信和(1955)5万分の1地質図幅『幾春別岳』.北海道開発庁,31 p.