私的・北海道地質百選
『奔別川の三笠層礫岩』
三笠層は,蝦夷層群中部層準の浅海成~河川成層である(例えば;安藤,1990).
三笠市奔別(ぽんべつ)川には,蝦夷層群におけるシーケンス層序学の端緒となった浅海成三笠層が分布する.
右の写真は奔別川の三笠層中に挟在する礫岩である.淘汰・円磨度がやや悪く,無層理塊状で泥基質支持礫岩のように見える.
安藤ほか(2007)によると,この礫岩は堆積シーケンス DS2 の基底にあたる.低海水準期に開析谷を埋積した河川成チャネル礫岩であり,その底面がシーケンス境界であるとされている.
礫岩には弱成層したものもあり,その下位に不淘汰乱雑な構造を持つ黒色炭質泥岩が見られる場合がある(右下写真).
その中には炭化陸上植物破片が大量に含まれており(右下写真),氾濫原堆積物の可能性がある.
礫岩と共に,三笠層の河川成堆積相を示す岩相ということになる.
三笠層礫岩の礫種は,安山岩質火山岩・古期堆積岩が多いが,その中に明瞭なアルカリ長石を含んだ粗粒花崗岩礫が認められる(右写真).
三笠層礫岩におけるこのような珪長質プルトン由来礫の存在は,既存文献ではあまり明確に言及されておらず,松野ほか(1964)に『チャート・古期砂岩が主で,ほかに閃緑岩質岩・流紋岩・安山岩がある』と書かれている程度である.
その供給源候補はジュラ紀付加体-前期白亜紀島弧の渡島帯しかないが,渡島帯ではこのような含アルカリ長石粗粒花崗岩の存在はあまり知られていないと思われるので,その由来は少し気になるところである.
(なし)
安藤寿男(1990)上部白亜系中部蝦夷層群三笠層の浅海堆積相分布と前進性シーケンス.地質学雑誌,96,453-469.
安藤寿男・栗原憲一・高橋賢一(2007)蝦夷前弧堆積盆の海陸断面堆積相変化と海洋無酸素事変層準:夕張~三笠.地質学雑誌,113巻補遺, 185-203.
松野久也・田中啓策・水野篤行・石田正夫(1964)5万分の1地質図幅『岩見沢』.北海道開発庁,168 p.