私的・北海道地質百選
『恵茶人のスランプ層』

スランプ体の混沌とした内部擾乱構造.2010 年 9 月撮影.

 浜中町恵茶人(えさしと)の恵茶人沼の東で海岸に下り東を見ると,海岸段丘の下に低い露頭が続いている(ヘッダー・サムネール参照).露出しているのは,根室層群厚岸層である(君波,1999).

 この場所の厚岸層は,数百 m にわたる露頭幅のほぼ全層がスランプ層で占められている(右写真).アクセスも容易で,格好の見学サイトと言える.




スランプ層の内部構造アラカルト.上左:層理の食い違い・クサビ状切断・褶曲.上右:砂泥互層の折り畳み褶曲.下左:折り畳み褶曲頂部で分離した泥ブロック.下右:膨縮・褶曲した泥レンズ.2010 年 9 月撮影.

 褶曲・ブロック化・未固結時変形など,まさにスランプ構造のオンパレードであり,きわめて印象的なサイトである.

 K - P (白亜紀-古第三紀)境界をその中に含むと言われている厚岸層にこれだけスランプ層が卓越する理由は明らかではない.
 根室層群堆積盆がこの時期に活動的であり不安定であったとしか言えない.その要因としてプレート沈み込みによるトリガーに加えて,堆積速度や堆積面傾斜の増大などもあげられるが,具体的には分からない.

 なお,Okada et al. (1987) には,恐竜絶滅を引き起こした地球外天体衝突に関係があるのでは?というナイスなジョークも紹介されている.


既存の指定など

(なし)


所在地

浜中町 恵茶人.


サイトの状態:


参考文献

君波和雄,1999,浜中海岸<古千島海溝に面した陸と海>.道東の自然を歩く,56-65,北海道大学出版会.

Okada, H., Yamada, M., Matsuoka, H., Murota, T. and Isobe, T., 1987, Calcareous nannofossils and biostratigraphy of the Upper Cretaceous and Lower Paleogene Nemuro Group, eastern Hokkaido, Japan. Jour. Geol. Soc. Japan, 93, 329-48.


関連サイト


『川流布のK-P境界』



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