私的・北海道地質百選
『沙流川の千呂露層』
※ ヘッダー・サムネールは,沙流川の千呂露層露頭の上にかかる吊り橋.日高町本町川から対岸(左岸側)の集落・農地へのアクセスに用いられたもの.2010 年頃はまだ渡れたと思われるが,現在は通行不能になっているようである.
日高町千栄西方の沙流川にかかる吊り橋の下に,北海道の白亜紀前弧海盆の始まりを示す地層が露出している.
この地層は,淡緑色を帯びた珪質シルト岩・珪長質凝灰岩の互層からなり(右写真),千呂露層(Kiminami et al., 1985)と呼ばれている.
珪長質凝灰岩は,一般に珪質細粒であるが,厚さ 数 cm の凝灰質砂岩層を挟在する.比較的粗粒で平行葉理を示し,一部コンボルート葉理を示す(右下写真).
この露頭のすぐ下流には,弱変成の枕状玄武岩(海洋プレート)が露出し,千呂露層が堆積した前弧海盆の基盤を示している.千呂露層は,このような海洋プレート上の半遠洋性堆積物と,島弧側から遠方供給された凝灰質堆積物からなる地層である.
また,千呂露層の上位(上流側)には,岩石橋~滝の沢にかけて蝦夷層群下部層準の厚層タービダイトが分布しており,海洋プレートがトラップされて新たに出現した前弧海盆における陸源堆積作用のスタートを示している.
この露頭近辺の沙流川沿いでは,右写真のような著しく伸長変形した千呂露層の互層も観察される(右写真).
このような構造変形が,どのステージでなぜ生じたのかは分かっていない.
(なし)
Kiminami, K., Kontani, Y. and Miyashita, S., 1985, Lower Cretaceous strata covering the abyssal tholeiite (the Hidaka Western Greenstone Belt) in the Chiroro area, central Hokkaido, Japan. Jour. Geol. Soc. Japan, 91, 27-42.