私的・北海道地質百選
『美々御前水』
注)このサイトは本家・北海道地質百選には,田近淳さんの執筆に私の写真を提供したものです.今回ここに掲載した文章・写真はすべてオリジナルなものです.
千歳市~苫小牧市を流れる美々(びび)川の周辺には,多くの地下水湧出部がある.その要因は,支笏降下軽石堆積物の存在である.
御前水はその一つで,その名前の由来は由緒説明看板(右写真)を読むと分かるように,明治天皇が1881(明治14)年の行幸の際にここで一休みし,この湧水を飲用に提供された,ということである.
湧水は表層土壌の下から湧き出している(右下写真)が,正確にはその層準等は確認できない.写真では分かりにくいが,水面にさざなみが立つほどの湧出量があり,湧水の中には軽石片が散乱している.
御前水近傍には,支笏火砕流堆積物の露頭がある(下写真).御前水の湧水位置の高さは,この露頭の火砕流堆積物とその下位の降下軽石堆積物の境界付近と判断される.
降下軽石堆積物は,間隙率が非常に高く,透水性の高い帯水層となり得る.その上位に相対的に透水性の低い火砕流堆積物が載っているので,両者の境界が地表付近にあれば,当然のことであるがその箇所が湧水地点となりやすいだろう.御前水は,そのような湧水箇所の一つということになる.
以前,美々川の源流部を見学したことがあるが,そこでは軽石層の中から地下水がこんこんと湧いており,澄んだ川にはたくさんのクレソンが繁茂していた.
本家・北海道地質百選御前サイトに 田近さんが書かれた解説 によると,美々川の水の 80 % は支笏軽石堆積物からの湧水だそうである(池田ほか,1999).
(なし)
池田光良・三浦均也・繰上広志,1999,地下水温による北海道美々川周辺地下水流動解析.応用地質,40(2),70-85.