私的・北海道地質百選
『赤岩青巌峡』
赤岩青巌峡は,南に流れる鵡川が流路を 90度変えて東西方向になり,ニセイパオマナイ川が合流する付近を言う.南北方向に分布する神居古潭帯の堅硬な岩石の “障壁” を鵡川が切って流れ,ゴルジュを形成している.
右写真に示すように,流れが速く深い峡谷に赤色の巨岩が散在し,独特の景観を作っている.
道東道トマム・占冠インターが開設されるため,国道 274号線(樹海国道)から,占冠市街に連絡する道道が整備され,札幌側からのアクセスが容易になった.なお 2010 年 5 月現在,赤岩青巌峡沿いに下流のニニウに至る道道は災害のため通行止めとなっている.
(※ 2023 年 6 月現在,この部分は通行可能のようであるが,ニニウ~福山間は依然として通行止めとなっている)
赤岩青巌峡の『赤岩』と『青巌』は,いずれも白亜紀の付加体を源岩とする低温高圧型変成岩(神居古潭帯ハッタオマナイ層)の構成岩相で,前者が成層赤色チャート,後者が珪長質凝灰岩と泥岩の互層を源岩とする弱変成岩である.
右写真は,赤岩橋付近の道道脇に露出する赤色チャート岩体で,ある意味これが『赤岩』のシンボル岩体ということにもなる.赤色チャートは意外なほど変成度・変形度が低いが,非調和・不規則な褶曲構造を示す部分もある(右下写真).
ハッタオマナイ層は白亜紀付加体であり,その中のチャート(海洋性岩石)の年代は三畳紀~ジュラ紀の可能性が高い.しかし,放散虫化石など年代を示す化石はまだ発見されていない.
一方,『青巌』に当たる岩相は,右写真に示す片岩である.低温高圧型変成岩なので,青というとソーダ角閃石を連想してしまうが,ここで見られる岩相は淡緑色珪質部と緑色部が互層している.前者は緑泥石-石英片岩であろう.後者は緑色片岩である.
詳しくは未確認であるが,おそらく玄武岩質火砕岩とチャート質岩の海洋性互層を源岩とするものと推測される.
なお,赤岩青巌峡上流の鵡川左岸側には蛇紋岩の分布があり,それに起因する地すべり堆積物が大規模に露出している(右下写真).
注意: 道道脇のチャート岩体(“赤岩”)は,岩質が堅牢なためロッククライミングの練習場所として利用されている.写真を拡大してみると分かるように,そのためのハーケンやボルトが随所に埋め込まれている.チャート表面の凹凸が “手がかり” として利用されている場合もある.
ページ初めの写真を見るとお分かりのように,この場所は『村立公園』となっているが,公的には何の authorization も示されていない.しかし上の理由から,この岩体をハンマーで叩いたりすると,クライマーと思わぬトラブルになることがあるので(実績あり),注意が必要である.
(なし)
高橋功二・鈴木 守,1986,5万分の1地質図幅「日高」および同説明書.北海道立地下資源調査所,44p.