私的・北海道地質百選
『水神龍王神社』
旭川市水神龍王神社横には,『立岩』という塔状の岩が二本,もたれかかりながら今にも倒れそうな危うい感じで立っている(右写真左).もちろん危険なので立ち入りが禁止されている.
近寄ってみると,この岩は成層した赤色チャートであることが分かる(右写真右).
変成・再結晶作用で色が薄くなり,成層構造も不明瞭になっているが,良く見ると,チャートの層理面はほぼ水平である.塔状になっているのは,垂直に近い節理の発達によるものである.
神社の左奥には,赤色チャートの大きな露頭があり(右写真),赤色チャートの岩相をよく観察できる.
この岩壁は,なぜかロッククライミング・サイトとなっており,壁面にはハーケン等が打ち込まれている.神域のはずなのに不思議と言えば不思議である.見学の際にはクライマーへの注意が必要である.
水神龍王神社の赤色チャートは,榊原ほか(2007)によると『神居古潭帯美瑛ユニット』に属するもので,緑色岩に伴うものである.
チャートは,典型的な遠洋性堆積物で,その大部分が,珪質の殻を持つ微生物である放散虫の遺骸からなっている.チャートの堆積速度は非常に遅く,例えば 3,300 万年で 10 m とも言われている.
水神龍王神社のチャートもこのような気の遠くなるような時間をかけて海洋プレートの上に堆積したものである.それがのちに沈み込み,低温高圧型変成作用を受けたということになる.
(なし)
榊原正幸・安元和己・池田倫治・太田 努,2007,深部付加体としての神居古潭変成岩類の源岩層序・付加プロセス・変形変成作用および流体-岩石相互作用.日本地質学会第114年学術大会(札幌)見学旅行案内書,103-118.