私的・北海道地質百選
『ハッタオマナイ層の変形礫岩』
5万分の1地質図幅『日高』(高橋・鈴木,1986)によって命名された “ハッタオマナイ層” は,神居古潭帯の低温高圧型付加体変成岩のメンバーであるが,その岩相や地質体区分については,必ずしも明確ではない.
占冠村赤岩青巌峡西方の鵡川沿いには,ハッタオマナイ層の中に著しく変形した礫岩の露頭がある(下写真).このような粗粒岩相は神居古潭帯の白亜紀付加体の中ではあまり知られておらず,その意義は不明であるが,貴重なサイトである.
礫は中礫サイズのものを主体とするが,一部には大礫も含まれれている.礫種は肉眼で確認できる限りでは,赤色・緑灰色・白色のチャート質岩が多い.その他に,破片~角礫状の黒色泥岩リップアップ・クラストを大量に含む.
リップアップ・クラストは著しく変形している.その配列を見ると,この礫岩自体が波長 20 cm 程度で緩く褶曲していることが分かる.
ハッタオマナイ層の中で “変砂岩” を特徴とするB相の記載(高橋・鈴木,1986)には『(変砂岩中に)粘板岩の不規則なパッチを含むものがある』とだけあり,礫の記述は見当たらない.しかし,ここに示した変形礫岩はその岩相に該当しているものと推察される.
(なし)
※ 2021年現在,サイトを確認することはできていない.当時の観察位置も GPS が無かったため不明であり,上のサイト位置は,このへんだろうという “適当なもの” である.
高橋功二・鈴木 守,1986,5万分の1地質図幅「日高」および同説明書.北海道立地下資源調査所,44p.