私的・北海道地質百選
『サンゴの沢の不整合』
日高町にある研修施設,日高青少年自然の家の裏手にある沢がサンゴの沢である.国土地理院地形図にあるとおり,本来は『三号の沢』であるが,この沢の奥にある “サンゴの滝” の近辺から以前,中生代の単体サンゴ化石が産出しているため,サンゴの沢という通称が用いられているらしい.
日高町にある国立日高青少年自然の家の裏側にサンゴの沢への入り口がある(右写真).ゲートがあり,“日高の森林ウォーク・さんごコース” の案内板が立っている.
林道脇や沢の中には,石炭層を挟む河川性斜交層理砂岩や貝化石の入った石灰質ノジュールを含む海成灰色泥岩,さらに緑色粗粒蛇紋岩砂岩などが露出している.
これらの地層は,新第三系ニニウ層群の下部層(高橋・鈴木,1986)であるが,構造が複雑で層序ははっきりしない.
さらにサンゴの沢を上っていくと,カーブの先にゆるく下流側に傾斜した砂岩を挟む礫岩層が出現する.その露頭は小さな滝になっており,涙の滝と呼ばれている(ヘッダーのサムネール参照).これがニニウ層群の基底礫岩である.
涙の滝のすぐ上流の沢の中には,白亜系蝦夷層群の凝灰質砂岩泥岩互層が露出しているので,両者の間にニニウ層群基底不整合が存在することになる.沢の中の沖積堆積物の状況によるが,運が良ければ沢の左岸側に不整合面が露出しているのが観察できる(右写真).
不整合面ははやや凹凸に富んでおり,ニニウ層礫岩の層理面は不整合面の傾斜よりも緩く,アバットしているように見える.
同じ不整合面は,この露頭からカーブを回った上流側にも再度出現する.そこでは,ニニウ層群基底礫岩と蝦夷層群との境界は平面的ではなく著しく不整で,蝦夷層群の地層の層理面と節理面の造る鋭い凹凸を直接覆っている部分も見える(右写真).
ところによっては両者の地層が入り混じり,『混合不整合(blended unconformity)』の様相を呈する部分もある.
サンゴの沢のニニウ層基底礫岩には,右写真のように蛇紋岩の大礫を含む部分がある.蛇紋岩礫は,特徴的な褐色の風化色や玉葱状風化を示すのですぐに分かる.
もちろん,礫岩の中に風化浸食に抵抗性の乏しい蛇紋岩礫を含むことは,普通のことではない.基底礫岩上位には蛇紋岩砂岩も見られ,この時期のニニウ層堆積環境の特殊性が垣間見える.
(なし)
高橋功二・鈴木 守,1986,5万分の1地質図幅「日高」および同説明書.北海道立地下資源調査所,44p.