私的・北海道地質百選
『サンゴの沢の蝦夷層群』

沢の中の珪長質凝灰岩・凝灰質砂岩・泥岩互層.2006 年 6 月撮影.
塊状不淘汰な粗粒凝灰岩層(上半)と成層凝灰質砂岩(下半).2012 年 8 月撮影.

 日高町サンゴの沢(三号の沢)下流部には,新第三系に不整合に覆われて,白亜系蝦夷層群中部層準の地層が露出している(高橋・鈴木,1986).
 新第三系基底部が露出する涙の滝を過ぎた曲流部から砂防ダムにかけて,良好な露出がある(右写真).

 蝦夷層群の岩相は,淡緑色珪長質凝灰岩・凝灰質砂岩・凝灰質ラミナを含む黒灰色泥岩の互層となっている.

 珪長質凝灰岩には粗粒・不淘汰塊状なものがあり,黒雲母結晶破片を含む.成層凝灰岩に対して軽微な浸食面をもって接し,水中火砕流堆積物(あるいはその縁辺相)の可能性が高い(右写真).

長さ 20 cm 以上のグルーブキャスト.平行した短いグルーブキャストを複数伴っている.2012 年 8 月撮影.

 砂岩層の下面にはフルートキャスト~ロードキャストが見られることが多いが,グルーブキャストが見られる場合もある(右写真).


左・中:凝灰質ラミナを含む泥岩中のリップルマーク.左:断面形状はやや非対称で,カレントリップルと考えられる.2009 年 8 月撮影.中:sinuous - branching な形状を示す小型リップル.2005 年 9 月撮影.
右:砂岩層上位の泥岩中に見られる生痕化石(Helminthopsis).2024 年 9 月撮影.

 凝灰質砂岩層の上面や泥岩中には,リップルマークも認められる(上写真右・中).リップルのサイズや形状はさまざまなものがあり,波長が 10 - 15 cm に達するものも認められる.
 泥岩中には数多くの生痕化石が認められるが,変形のためその形状は明瞭とは言えない.上写真右は例外的にその形態がよく保存されているもので,層理面に平行し不規則にうねった外形から Helminthopsis と判断される.


凝灰岩と泥岩の互層中に見られる未固結時流動変形構造.2004 年 9 月撮影.

 さらに,泥岩中の凝灰質ラミナには ball-and-pillow 構造(右下写真)や水抜け構造など,多種の未固結時変形構造が観察できる.
 一般に蝦夷層群中部層準の特徴岩相である珪長質凝灰岩層には,なぜかこのような未固結時変形構造が発達するケースが多い.しかし,その形成要因は明確ではない.


既存の指定など

(なし)


所在地

日高町 三号の沢.


サイトの状態:


参考文献

高橋功二・鈴木 守,1986,5万分の1地質図幅「日高」および同説明書.北海道立地下資源調査所,44p.


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