私的・北海道地質百選
『夕張の石炭大露頭』

 夕張市の「石炭の歴史村」「石炭博物館」のすぐ南側にあるのが,北海道指定の天然記念物,「24尺大露頭炭」である.


石炭の大露頭周辺のパノラマ写真.全体は水平層に近いが,向かって左側にゆるく傾斜しており,写真右方で下位層の幌加別層の露出が見られるようになる.右側は,2019年の火災のため一時水没した模擬坑道出口.2002 年 5 月撮影.


石炭の大露頭.2009 年 5 月撮影.

 これは,挟炭層である古第三系始新統夕張層中の石炭層で,下位から,10尺層 (3.0 m)・8尺層 (2.4 m)・6尺層 (1.8 m) の3層からなり,あわせて24尺層 (7.2 m) とよばれている.
 各層の間には薄い凝灰岩層や泥岩層を挟む.地層は南東へゆるく傾斜している.

 この露頭は,B.S. Lyman が 1876 年にこの地域を初めて調査した際の日本人助手,坂市太郎によって 1888 年に発見された.夕張を含む石狩炭田が開発される端緒になった,歴史的にも記念すべき露頭である.


2枚の石炭層.8尺層(下部)と6尺層(中央部).その上は泥岩層.2009 年 5 月撮影.

 石炭は,過去の陸上植物が地層中に埋没して炭化したものである.厚さ 1 m の炭層ができるためには,植物遺体が十数 mもの厚さで堆積する必要があるという計算もある.この計算からすると,24尺層の原料になった植物遺体の厚さは,優に 100 m を超える.莫大な量の植物が堆積したことがわかるだろう.始新世当時の高炭酸ガス濃度と温暖な気候がもたらした可能性が考えられる.


幌加別層と夕張層の境界部.写真上部に夕張層最下部(10尺層)の石炭~炭質頁岩層が見える.その下は幌加別層の泥岩で白色層は石灰質泥岩.2001 年 5 月撮影.

 なお,24尺層の下位(露頭向かって右側)には幌加別層の灰色泥岩層が接している(右写真).

 天龍橋下の露頭では,菱鉄鉱(siderite: FeCO3)のノジュールを含んでいるのが観察できる.湖沼などの還元性の淡水環境で堆積したものであろう.


既存の指定など

北海道指定天然記念物.昭和49年12月6日指定.


所在地

夕張市高松 石炭の歴史村構内.


サイトの状態:


参考文献

『空知の自然を歩く』北大出版会.

佐々保雄・田中啓策・秦 光男,1964,5万分の1地質図幅および説明書『夕張』,北海道開発庁,184 p.


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