びしっと決まったパノラマ


はじめに
 ここでお見せするのは,パノラマ作成がびしっと決まった例です.上下左右隙無し(下注).もちろん作成後に多少のトリミングをしてはいますが,ちょっと見には,単なる『広角な写真』に見えてしまうかもしれません.つまり,パノラマ貼り合わせをしたということをあまり感じさせない分,成功作と言えるでしょう.

注)このような作例が決まるためには,撮影時の『フレーミング移動』が適切である必要があります.これがなかなか難しい.重複部分が少なすぎたり,ベースラインがずれてしまったり...デジカメには,こういう点を回避するためのパノラマアシスト機能(=例えば,直前の撮影画像の右端を液晶モニタの左端に表示する)が備わっている場合が多いですが,実際に使ってみると,それほど有効なものでもないな,という実感です.結局はマニュアルになってしまいますね.
 もう一つ,枚数が多い場合,撮影者が移動せずに回転して広角撮影すると,貼り合せたものの全体が弓状に曲がってしまう場合があります.撮影者自身の位置を移動して平行移動写真に近いものにすると,その変形の度合いを少なくできますが,その代わり,撮影方向の変化で見え方が変わってしまうため,貼りあわせがうまくいかない場合が出てきます.



 道南今金町住吉橋下の黒松内層です.ゆるく向こう側に傾斜しており,この撮影地点の背後では下位の八雲層に整合漸移しています.実はその境界までパノラマ撮影したのですが,さすがに180度近い画角では,貼りあわせた結果が“ずたずた”になってしまいました.



 松前町白神岬下,ジュラ紀付加体渡島帯の変形・流動砕屑岩層です.付加体の“妖しさ”を感じてしまう露頭です.こういう近接アングルだと,全体のゆがみも比較的少なく,きれいに貼り合わせができる場合が多いです.ただしよく見ると,黒いスケールの真ん中のところがなんか変...



 静内町高見ダム湖畔,中部蝦夷層群の変形砂泥互層.いわゆる“蝦夷東帯”の典型的な岩相です.転倒した軸面を持つ褶曲と同じく低角の剪断面が特徴的です.実は1990年代はじめには,この上流の橋のたもとにもっとすばらしい変形互層がどかんと露出していたのですが,2002年秋に通行止めゲートにクルマ置いて延々と歩いてたどり着いてみると,道路工事で『芝生吹き付け法面』と化していました(涙).この露頭はもっと手前のところにあるものです.縮小していないオリジナルサイズで見ると,けっこうな迫力です.



 同じく高見ダム湖畔,変成付加体の枕状玄武岩(下位)と中部蝦夷層群の“不整合露頭”です.『農屋図幅』では,高見ダムで水没した静内川の中で同様な露頭が記載されています.この林道の露頭は,残念ながらネットがかぶっていますが,全体の状況は非常に良く分かります.上位に載る中部蝦夷増群の砂泥互層は,かなり変形しています.川村ほか(1999)では『砂泥スランプ体が載る』とした露頭です.もっともこの露頭だけを見ると,“低角衝上関係”にも見えてしまいますが...露頭の向かいの土手の上から撮ったものですが,パノラマ写真としては非常にうまくいった例だと思います.


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