さりげなくパノラマ


はじめに
 このページで紹介するのは,さりげなくパノラマ...つまり『そう言われないとパノラマ貼り合わせしたものとは誰も気づかない』ようなものを集めてみました.一見普通の一枚の写真に見える究極のパノラマ(笑).

 じゃ,一枚の写真でいいっしょ?...ということにもなりますが,ポイントは,アスペクト比です.つまり,横長の(写真のアスペクトより細長い)被写体を写す場合,その撮影大きさは,かならず写真1枚より小さくなります(あたりまえ).ということは例えば300万画素のデジカメで写しても,その上下は“捨てピクセル”で,有効な部分の画素数はずっと小さい(例えば200万画素程度の)ものになってしまいます.それをトリミングして大判でプリントしたいとかなると,画質が不足する結果になりかねません.
 そこで登場するのが“さりげないパノラマ合成”です.横長の領域をカメラを横位置で2枚撮影して合成すれば,上の例の場合,ほぼ600万画素相当の(一眼デジ並みの)画質ということに.縦位置にして4枚ならば1200万画素相当! まあ,厳密な話をすればそんな単純なものではありませんが.


 襟裳岬に露出する古第三系?襟裳層の礫岩互層です.さりげないとは言いながら,分かる人は分かる...左に立っている人物(川上源太郎氏)が斜めになっています.一眼レフユーザだったら,『すごい広角レンズ(18mm?)持ってるんだね.それトリミングしたんでしょ?』と思うかも.



 日高町の川の中で撮影した氾濫堆積物の断面.おそらく林道の上を overflow したものだと思います.いや〜...地味だな.なにがパノラマなのか私にも分からない.あと,これはたしか QV-3500EX だったと思いますが,その悪癖である『暗いところでホワイトバランスが大きく転ぶ』現象がもろ出てます.



 ぐにゃぐにゃと妖しい写真ですが,ジュラ紀付加体渡島帯中の緑色岩と砕屑岩との混在・剪断構造です.松前町白神岬にて.この種の現象を記述しきれなかったのは,いまだに悔恨事です...って,ここはそんなこと言う場所ではないか.



 同じく付加体変形関係写真.岩手県盛岡市根田茂川での早池峰帯根田茂コンプレックスの特徴岩相『MS互層』の破断変形部です.薄暗い露頭だったんですが,こうやって写真に撮ってあらためて見ると,非対称変形構造がもろ見え.3枚程度のパノラマ合成だったと思いますが,継ぎ目はどこに...



 岩手県大迫町岳川の名目入沢層中の礫岩層です.名目入沢層は,南部北上帯北縁部古生層の最下部ユニットですが,堆積年代は不明でシルル紀あるいはそれ以前の地層です.その中の礫岩は,北上帯で最古の礫である可能性がありますが...なんとこの露頭から,OQが発見されているんですね.詳細はまたのちほど...とごまかす(笑).なにしろまだ公表論文書いてない...



 また北海道に戻りますが,渡島帯付加体の海溝充填堆積物中の砂岩脈群です.松前町折戸浜.この写真は比較的まともな形していますが,この部分のすぐ後ろでは,膨縮・尖滅・方向むちゃくちゃのカオスになっています.私と道立地質研の大津直さんとで以前に予察的に検討しはじめたものですが,なんだか難しくてその後中断しています.ただいま大学院の富岡君が形態等を検討中ですが,さてどうなるか.



 日高町滝の沢支流における中部蝦夷層群の“基底礫岩”.この礫岩層は二枚からなっており,露頭左の切れたようになっているところは上位の無秩序礫岩層の下底部だと思います.この下にシルトをはさんで級化礫岩層があり,その下から(形式論理的に)下部蝦夷層群ということになりますが,写真には写っていません.礫岩層の上位は薄い砂岩をはさんで含礫泥岩がのっています.この含礫泥岩は,この時期のスランプ崩壊イベント(双珠別スランプ体がその典型)の一部を示したものなんでしょう.


 ということで...なんとも地味でしたね.


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