これぞいかにものパノラマ


はじめに
 このページでは,“うわ,こりゃパノラマだ!”という,いかにものパノラマ写真をご紹介しましょう.『びしっとパノラマ』では,上下左右隙無しでしたが,こちらは隙あり+でこぼこ,おまけにゆがんでる(笑).


 夕張市石炭の歴史村内の北海道指定天然記念物の『24尺石炭層大露頭』です.3年生の学生巡検でいつも行くところで,この写真もその際に撮ったものです.北海道の春先の雰囲気が良く出ていますが,写真右側をぶらぶらと歩く学生たちの斜めになった姿がいかにもパノラマらしいというか.



 北海道教育大岩見沢校の能條さんに教えてもらった,今金町中里付近の利別川河岸にある瀬棚層の露頭です.なんといっても,この斜交成層は迫力十分.国道から川岸までは沢の中をけっこう長く下りる必要があるのですが,この露頭が出てきたときには,おぉっ!と叫んでしまいました.白い部分は軽石質,黒い部分は細粒部ではなく軽石の量比が少ない部分です.この露頭の右側には,黒松内層を不整合に覆う部分もあり,学生巡検にはベストな露頭です.で,このパノラマ写真,右側で写真のベースラインを踏み外してしまいました.そのせいでかえってパノラマらしく見えますが.



 道南乙部町の有名な『白亜の崖』から連続する館層の大露頭です.『白亜の崖』はこの右側の海岸沿いにあります.この露頭は,いままで川村研究室のトップページに使われていたように,いかにもの地層の姿をしたところです.写真のほうは,撮影時の焦点距離の関係なのか,見事に弧を描いた描写となっており,なんともパノラマらしいパースペクティブでけっこう気に入ってます.



 積丹半島セタカムイ岬の急崖斜面です.悲劇的な(旧)豊浜トンネルはこの左側にありますが,この急斜面の高さ...積丹半島沿いを走る国道の“厳しさ”を実感するような写真です.在札の地質屋有志で漁船をチャーターして海上から撮影したものです.真ん中やや右側の黒っぽくなっている部分は,比較的大規模な剥離性崩壊跡で,永田秀尚さんによって“セタカムイ崩壊”と呼ばれています.その左に見える覆道は,旧・旧国道のものです.さらに左に旧国道の擁壁が見えています.
故渡辺暉夫北海道大学教授の思い出に捧ぐ...



 Kawakami and Kawamura (2002) で報告した,南部北上帯三畳系大沢層の中の SFD (Soft-sediment Flow and Deformation) 層です.箕浦先生などによって発掘研究された三畳紀魚竜の産地である宮城県雄勝町荒浜の露頭(この写真は厳密には転石)です.いつもそうなんですが,日陰にあるもので,見事に青被りしています.このパノラマは,SFD層の上面に着目したもので,“upward erosion”が認められるということで,SFD層が(異常)堆積層ではなく,貫入流動層であるという根拠になっている部分です.



 夕張市シューパロダム下の函淵層群模式地である“函淵ゴルジュ”です.地層は全体が逆転しており,写真左側の少し茶色い部分が古第三系石狩層群で,上流側の函淵層群を不整合に覆っています.撮影時期は5月中旬頃と思われますが,やわらかい春の光の射す雰囲気が感じられ,好きな写真の一つです.パノラマ写真としては,画角がけっこう広く,貼り合わせはけっこう苦労したような記憶があります.



 これは写真のベースラインがかなりずれてしまいましたが...すごい迫力でしょ? こういう迫力は,単なるズーム広角側での一枚の写真では絶対に出ません.日高町千呂露川中流部の通称“釣り堀露頭”の中部蝦夷層群です.これも蝦夷東帯の変形が典型的に出ている露頭だと思います.川村ほか(1999)で変形センスを書いたあとに,全体が逆転することが分かって...さて?


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