シグマ DG APO 120-400mm f4.5-5.6 OS HSM




 いけませんね...こんな(私と K-5 にとっては)大砲みたいなレンズを買ってしまうなんて.望遠は DA★60-250 で打ち止めのはずだったのに.ペンタKマウントなのに,OS HSM というのが気になっていて,ヨドバシで現物見せてもらったら,思っていたより重くないな...と思った瞬間に気絶してしまい,気が付いたときには助手席にヨドの黒い袋を乗せて帰宅の途についていました...って,この手はもう古いですか.(^^;

 まじめな話をすると,“とにかく300mm以上の焦点距離レンジが欲しかった”というだけなんです.その理由についてはレンズ・レンズ・レンズの目次ページを参照.
 しかし,ペンタ純正では,FA の今も売ってるかどうか分からんのを除くと,DA★300mm/F4 しかありませんが,ちょっと手が出ない値段だし,望遠単焦点というのがどうも使い勝手が分からない.もうディスコンになったシグマ100-300mm/F4 を買って置けばよかったのかな?

 そんなとき,シグマから120-400mm というのがでました.F4 通しではありませんが,焦点距離のレンジは私にとっては理想的です.DA★60-250 とかぶるわけではなく,重複したひとつ上のレンジ,になっています.しかし,価格com での評判を見て,ちょっと引きました.テレ端の画質がかなりひどいらしい.我慢できるようなものなのか,それとも? うーむ...と悩んでいるうちに,手振れ補正付きの新型が出ました.ちゃんとペンタ用もあります.さすがシグマ,タムロンとは違う.(-_-;
 センサシフト式のペンタとは言え,それをオフにしてレンズ側の手振れ補正をオンにできるというのは,望遠域でのフレーミングを考えると,意味があります.それに当然 HSM だし.それって,キャノニコの望遠レンズ並みの装備じゃないですか.もう買うしかないかな? そう思いながら何ヶ月かが過ぎました.⇒ 最初に戻る.:-p

(以上,2011/08/02)


以下,記事は新しいもの順です.

・近景描写チェック

 今までサボってやってなかった恒例のレースカーテンチェックを.方法としては,さすがに他のレンズのように手持ちでは無理で,三脚に設置し,ケーブルレリーズを使って,ワイド端120 mm・中間域(200 mm)・テレ端(400 mm)の三つの焦点距離で,シャッター速度をあまり低下させたくないので ISO 400 で,絞りを適当に(半絞り程度)変えて撮影し,それぞれの中央部と周辺部の等倍クロップで画質をチェック,というものです.2枚を一息置いてレリーズし,良いほうをチョイスしてます.カーテンには朝の太陽光が斜めに当たっています.もちろんSR・OSは off にしています.ピンの来てないようなショットもありますが,MFでやっても大して変わりありませんでしたので,すべてAFでやってます.

 まずはワイド端.全体の縮小画像はこんな感じで,なかなかシャープで悪くないです.レース地のカールしている部分がちょっと紫っぽく見えるのは,弱いパープルフリンジがでているのかもしれません.

【120 mm】


 次に中央部と周辺部(左下隅)の等倍クロップ.

・F4.5
(center)
(corner)
 開放では中心部は少しフレアっぽく,なんとなく甘めです.周辺ではアウトフォーカスですが,顕著な色収差や流れは見られず,なかなか良好です.

・F5.6
(center)
(corner)
 少し絞るとフレアっぽさは完全に消え,なかなかすばらしい描写です.周辺は開放とあまり変わりありません.

・F8.0
(center)
(corner)
 このへんが画質のピークのようです.中央・周辺ともにすばらしいと思います.

・F11
(center)
(corner)
 この中央ショットは少しアウトフォーカスのようです.周辺部は悪くない.

・F16
(center)
(corner)
 他の絞りのショットと比べて明らかにぼやけています.少し低速シャッター(1/125s)になっているので,ミラーショックのブレもあるのかもしれませんが,おそらく小絞りボケも来てるのかと.

 次は中間域 200 mm.もちろん 200 mm に正確にズームすることは無理ですが,適当に目盛りに合わせて撮ってみたら Exif ではちゃんと 200 mm となってました.どうでもいいですけど.写真全体の雰囲気は良好です.

【200 mm】


・F5.0
(center)
(corner)
 中央部では,開放でのフレアっぽさはそれほどでもありません.さすがに周辺(左下隅)では,外側への流れとフレアが目立ちますが.

・F6.3
(center)
(corner)
 少し絞ると,中央部の画質はフレアっぽさが完全に消え,すばらしいです.一方周辺部は開放とあまり変わりがありません.

・F8.0
(center)
(corner)
ワイド端と同じく,中央部はここら辺が画質のピークのようです.周辺部は開放とほとんど変わらないですが.

・F11
(center)
(corner)
 中央部では少しぼけていますが,少しアウトフォーカスのようです.一方,周辺部はフレアっぽさがほぼ消え,画質のピークになっています.

・F16
(center)
(corner)
中央部・周辺ともかなりのボケが見られます.中央部はブレのようにも見えますが,周辺部ではそう見えないので,コントラストは低下しているし,小絞りボケがやはり出てるのかも.

 最後に,私にとってこのレンズの最大の存在価値であるテレ端焦点距離.さてどんなものか...縮小では悪くないですが.

【400 mm】


・F5.6
(center)
(corner)
 開放ではやはり中央部でもかなりのフレアが出ています.しかしまあ描写の芯は悪くないですけど.実際,こんなハイコントラストではないリアルワールドの実写では,テレ端開放でも,下に書いたように,そんなに悪くありません.周辺部ではさすがに焦点距離が35mm換算 600 mm とあって,完全にアウトフォーカスになっています.弱い色収差がはっきりと見えますが,流れはほとんどありません.これは重要です.色収差は RAW 現像で完璧に除去できますが,流れ(非点収差?)はそうではないので.

・F6.3
(center)
(corner)
 たった半絞りだけ絞っただけで,中央部のフレアっぽさはほとんど消え,600 mm相当ということを考えるとすばらしい画質です.周辺部は開放と大差なし.

・F8.0
(center)
(corner)
 他の焦点距離と同じく,やはりこのへんが画質のピークでしょうか.中央部はすばらしい.周辺部は多少改善されていますが,大差なし.

・F11
(center)
(corner)
 これも他の焦点距離と同じく,中央部ではこの辺からボケが出てきます.周辺部は DOF が広くなるのでフォーカスが来ていますが,その分,色収差が目立ちます.

・F16
(center)
(corner)
 中央部はやはりかなりボケています.実はテレ端になると,レリーズ後のミラーショックによる揺れがファインダでもはっきり分かります.一応それが視認で止まってから次を撮っていますが,完全には収束してないのかも.しかし周辺部はそういうボケは強く見られないので,謎です.私には良く分かりません.周辺部画質は F11 と大差なし.

 ということで総評としては,『開放ではどの焦点域でもフレアっぽい』『半絞り絞ればまったく問題はない』『シャープさは文句なし』...といったところでしょうか?
 DA★60-250のような開放からパッキパキというのは最初から期待していなかった購入でしたので,『感度を高めに設定して開放を避ける』という workaround がはっきり分かり,全体としては非常に満足できる結果です.

(以上,2011/08/27:2011/09/04追記)


・OSとSR

 OS(Optical Stabilization),つまり手振れ補正機構内蔵のこのレンズ,SR(Shake Reduction),つまり手振れ補正機能内蔵 (^^; の K-5 に装着したとき,両者の関係がどうなるかは,ペンタユーザとして非常に気になります.

 単純に言うと,どちらかを off にする.OSならレンズ上のスライドスイッチで,SRなら K-5 のメニューから.レンズを替える度にSRを on/off するのが面倒ならばOSを常に off にしておけばいいわけですが,せっかく付いてるものを使わないというのはもったいないし,望遠だったらファインダ像が安定するOSの方がよさそうだ.さてどうするか...その前に,SRとOS,どっちが効きがいいんだろう? OSは4段分,SRはたしか 3.5段分となっていたと思いますが,実際のところは?

 ということで,簡単なテストをやってみました.焦点距離 120 mm で換算焦点距離が 180 mm だから,“安全シャッター速度”が 1/180 だとすると, 1/20 s で3段分.きりのいいところで 1/15s として,SRとOSの on/off の四つの組み合わせについてテストショットをそれぞれ20枚撮り,それをピクセル等倍でチェックしてA〜Dの四段階のランクに区分しました.もちろんこの4段階というのは少なからず主観的ではありますが,一応文字で表現しておくと,sharp - dull - blurry - shifted といったところです.その結果は...



 ちょっと意外だったのは,OSよりSRの方が少し結果が良かったことです.OSのみの時はAランクが 20 % で,Dランクが 10 % 現れましたが,SRのみではAランクが 35 %,Dランクと判断されたものはゼロでした.もっともこれはテストをワイド端120 mm で行ったためで,テレ端400 mm ならば結果は違ったのかもしれません.
 両方とも off の時はDランクが 50 %,Cランクが 40 %,Aランクはゼロでした.これが私の“震える手”の基礎データということかも.両方とも on の場合,メーカの警告どおり,おそらく異常作動が生じており,Dランクが 75 %,残りはすべてCランクでした.

 さて,どうすべきなのか...このデータを普遍的に信じて設定変更の簡単(不要)なSRのみで行くべきなのか,それともファインダ像を優先してOSのみで行くべきなのか...悩みます.今度はテレ端でテストしてみるか...めんどくさいけど.

(以上,2011/08/27)


・一般的な使い心地

 購入後10日たち,旅行にも持って行き,家の庭でもあれこれ試したという時点で,この超望遠(?私にとって)レンズの一般的な使い心地について簡単にまとめておこうと思います.したがって,半定量的なテストの話ではないです.

・レンズ内手振れ補正は,期待していた通りなかなか良いと思います.ガシャッという最初の作動音は少し大きめで気になりますが,シャッターレリーズ時は無音(と思うが)です.センサシフト方式だったら揺れまくるファインダ視野がほとんど動かないのは,当たり前とはいえフレーミングが非常に楽になります.そういう意味で,望遠はやっぱりレンズ内補正なのかな? シグマがペンタ用にもOSレンズを作ってくれたというのは嬉しいです.

・HSM はなかなか良いです.ほぼ無音だし,SDM よりはかなり速いのではないかと思います.特に DA★60-250 は SDM動作時のチリチリキューンという高周波ノイズが(年寄りでも)けっこう気になるので,それと比べると一段上の品質と思います.

・このレンズには AF/MF 切り替えスイッチが備わっています.最初は,サードパーティレンズでどうなのかな?と疑っていたのですが,これを MF にするとちゃんと K-5 のファインダにも MF と表示されます.これは DA★レンズと同じ使い勝手です.おそらくシグマお得意の reverse engineering の賜物なんだとは思いますが,ユーザとしては嬉しいことです.

・DA★レンズと,ズームリングとフォーカスリングの位置が逆,ズームリングの回転方向が逆,とかは,この際慣れの問題と目をつぶりましょう.

・いわゆる build quality はけっこういいです.昔買った APO 70-300mm はひどかったけど,それから比べると段違い.持っているときの迫力も十分.

・一番(期待して)気になっていた画角の点については下に書いたので,二番目の『OSの効き具合』は...いまのところ悪くないです.



 この写真は実は(Exif削ってますが),ISO1600 まで上げてますけど暗くて,テレ端でシャッター速度 1/80s(!)です.この等倍クロップ見ると,



 手振れがほぼ完全に補正されています.これはすばらしい.単純に 600mm相当だから“安全シャッター速度”が 1/640s からだとすると,3段分の補正となります.カタログ上は4段分となっていますので,もうちょっとマージンがある(1/40s!)と考えると,すごく気が楽になります.
 あと,このレンズ付けるたびに K-5 のメニューからボディ内手振れ補正を on/off するのは面倒だな...と思っていたのですが,info ボタンを押した画面から on/off が出来るし,K-5 はメニュー位置をメモリしてくれるので,“infoボタン ⇒ 後ダイヤル1クリック”という,ほぼワンアクションで on/off 出来ることがわかりました.これは便利です...って,シグマのおかげではなくてペンタのインタフェースの良さということですが.

 ついでに書いておくと,『レンズ側手振れ補正on + ボディ内手振れ補正off』と『レンズ側手振れ補正off + ボディ内手振れ補正on』との効きの違いは,体感的にはほとんどありませんでした.いずれテストしてみようとは思いますが.

 ということで,今のところは so far, so (very) good というところです.買ってよかった.

(以上,2011/08/12)


・テレ端画角

 このレンズを買った一番の目的は,『DA60-250mmテレ端よりも格段に狭い画角』です.どうもあのレンズのテレ端画角には“やられた!”という感じを持っているんですよ.

 で,海岸沿いのホテルの上階に泊まったので,良い機会と思い,両レンズのテレ端の画角を比較してました.



 なんだこの写真,ひどい画質だな...なんて思わないでくださいね.全体縮小画像は,小さすぎて何写ってるか分からなくて意味ないので,400mm(600mm相当)の等倍クロップです.
 ノーレタッチなんで少しコントラストが低いですが,これもすばらしいと思います.それでは同じシーンが DA60-250テレ端の等倍クロップではどう写っているかというと,



 違いは歴然ですね.そんなことあるはずないですが,ちょっとの画角(倍率)差しかなかったらどうしようと思ってたので,非常に安心しました.
 余計なことですが,この 250mm 画像を,上の400mm画像とほぼ同じ倍率になるようにバイキュービックで拡大してやるとこうなります.



 漁船(釣り船?)の細部描写もそうだけど,海面の描写が歴然と違うので,心は安らかです.

(以上,2011/08/11)


・テレ端画質

 買ってから,“定点的”なテストをするまもなく,夏休み旅行に持ち出して実戦デビューとなってしまいました.一体どう写るのかも良く確認できてないままにシャッター切るのは,けっこう不安なものです.特にテレ端開放付近での写りどうなのかは,最大の不安点です.これがダメだと,最も存在価値のあるテレ端で撮る時,常に絞り(というか実質的には感度)を気にしていなくてはいけない.これは,いいかげんな性格の私にはかなりきつい.

 とりあえず,その一番気になる条件で撮ってみました.400mm 開放(F5.6)です.これがその全体縮小画像.Lightroom で RAW読み込み後何もせず書き出したものです.



 うーむ...どうでしょうかね? 軽いビネットはありますが気になるほどでもないし,フレアっぽいコントラスト低下もあまり感じられないような.そこで中央付近の等倍クロップを見ると...



 すばらしいと思います.少しコントラストが足りないように見えるのは,曇り空でおまけに夕暮れ直前という最悪の条件のためです.このあと雨が降り出しました.溶接痕などもリアルにしっかりと写っています.シャープさも十分でしょう.特に価格vomかどっかの旧型(非OS)のレビューで見たテレ端画像のすさまじいフレアっぽさにすごく不安を持っていたのですが,それはどっかに吹き飛びました.もちろん画像周辺部は多少もやっとしますが,それほど気にならないレベルで,絞れば問題ないでしょう.

 貧乏人の私としては高い買い物だったので,この結果にはすごく安心しました.と同時に,このレンズに対する『信頼感』が生まれたのも事実です.実は私,レンズ(カメラもですが)に一番大事なのはこの『信頼感』だと思っていますので.こういうシーンでは確実にこう写る,というコンシステンシーとでも言うか.

(以上,2011/08/11)


・マウントのガタ

 買って初日でさっそく,小さな問題がでました.K-5 に装着した状態で,回転方向に小さなガタつきがあります.さて撮るぞ!とレンズ掴むとガタッと動くのは,どうも気がそがれるというか,気分悪いです.ちなみに私の持っているレンズでこんなガタつきがあるのは一本もありません.

 さっそく,購入したヨドバシへもって行きました.最初は女性店員で,『在庫がもうないので確認が出来ない,在庫が出来てからもう一度来てくれ』と.なんだか態度も事務的なので,ちょこっとキレて『クルマで往復2時間かかるのにその費用と時間はどう補償してくれるんだぁ!!』.完全なクレーマーですね.

 しかし,暴れたおかげで,一眼デジ売り場の責任者が出てきて,シグマにその場で問い合わせてくれました.その結論は...『長玉ほどそのような遊びは大きくなる.動作に問題がない以上,問題ない』.ヨド側からは在宅引取りで新しいものに交換しても良い,と言われましたが,シグマの答えから見るとまた同じことになりそうなので,資源の無駄と断りました.

 そのあと,その店員に案内されて,キャノンのカメラに付けた 50-500mm(?)を触らせてもらいましたが,やっぱり同じようにがたがたでした. 『シグマの望遠はたいていこうです』 と言われて納得しました.純正レンズでは?と余計なことを聞いてみると 『そういうのは一つもありません』 .まあそうでしょうね...まあ金ないので安いレンズでそれなりの画質,ということで選択した道なんだから,文句は言えないか.

 この問題が画質に影響しないかどうかはこれからの検証しだいですね.

(以上,2011/08/03)


・開放F値と焦点距離

 これも恒例ですが,最近は変動開放F値のレンズを買ってなかったので,久しぶりです.

120mm - 140 mm : F4.5
140mm - 210 mm : F5.0
210mm - 400 mm : F5.6

 開放F値が 4.5 なのはほんとにワイド端のちょこっとです.すぐに F5.0 になり,真ん中へんから F5.6 になってテレ端まで行きます.まあなんというか,暗いレンズですね...orz そこはまあ値段なりということですか.

(以上,2011/08/02)


・ワイド端テレ端の長さ

 とりあえず恒例のワイド端・テレ端時の上から見た長さです.もちろん左が 120mm,右が 400mm.



 IFなので,フォーカス距離で全長は変化しません.それにしてもすごい長さと太さですね.三脚座は取り外していますし,私はノーフード派ですので付けていませんが,それでもこれ.写真よりも実物前にするとビビリます.
 このレンズ,DG(フルサイズ対応)なので,DC(APS−C専用)なら,もうちょっとコンパクトになったんでしょうか?

 さて,肝心の写りはどうなのか...?

(以上,2011/08/02)


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