渡島帯を掲載した理由
渡島帯は北上山地ではなく北海道の西南部(渡島半島)である.なぜそれが『追憶と忘却の北上山地』に入るのだろうか? 最初にその excuse を書いておく.
地質屋ならだれでも分かっていることと思うが,北海道と本州を隔てる津軽海峡は,地質学的には(ほとんど)何の意味も持たない.西南北海道は本州弧の北端であり,渡島帯は北部北上帯の北方延長に過ぎず,ともにジュラ紀付加体なのである.ジュラ紀付加体の分布と本州弧の伸びが斜交する意味は...形成時代が異なる別の地質概念であるとしか.
もう一つ,渡島帯をこのアルバムに加える理由がある.私が渡島帯を研究したのは1985-2003年のことで,その大部分は南部北上古生層や早池峰ゾーンの研究と同じく,『先デジタル時代』に相当する.つまり,その写真記録の多くは一眼レフでリバーサルフィルムに撮ったもので,それを当時の設備で低解像度スキャンし当時の技術でレタッチしたものである.そういうアーカイブ的意義も.