私的・北海道地質百選
『滑若の礫岩層』

 新冠町高江の国道235号線から新冠川に沿って若園方面へ向かう道道を行くと,右側に新冠川にかかる滑若(なめわっか)橋が見えてくる.その上流側の道道左側の段丘崖に礫岩を含む地層の露頭がある(下写真上).


滑若橋付近の元神部層.上:砂岩・礫岩互層.下:礫岩のクローズアップ.いずれも 1988 年 9 月撮影.

 この露頭に露出する地層は,新第三系中新統元神部(もとかんべ)層上部の M5 部層である(松野・山口,1958).層理面は緩く南西(向かって左側)に傾斜している.松野・山口(1958)は,この部分を南北性の軸を持つ “オシャマニ向斜” の東翼部としている

 岩相は砂岩・礫質砂岩・礫岩の互層で,単層厚は 数十 cm から 1 m 程度である(右写真上).礫岩層は級化などの顕著な堆積構造を示さない.砂岩層は成層構造が顕著で,全体として掃流堆積物のように見える.保柳ほか(1985)は,この M5 部層をファン・デルタの堆積物と解釈している.

 礫岩層中の礫は最大径 15 cm 程度でよく円磨したものが多く(右写真下),礫種は泥岩などの砕屑岩や火山岩類のほかに,花崗岩質岩・角閃石ハンレイ岩・黒雲母片岩・角閃岩など日高帯・日高西帯の深成変成岩由来のものを含んでいる.


※ この露頭周辺はその後,道道の新設拡幅などによって改変されている.筆者の観察は 1988 年のことであり,現在も観察可能な状態かどうかは確認していない.


既存の指定など

(なし)


所在地

新冠町新冠川下流 滑若橋付近.


サイトの状態:


参考文献

松野久也・山口昇一(1958)5万分の1地質図幅『静内』説明書.北海道開発庁,36p.

保柳康一・三戸 望・宮坂省吾・渡辺 寧・吉岡正俊・松井 愈(1985)石狩-天塩帯南部の中新統層序と堆積環境 -受乞層海底扇状地の復元-.地球科学,39,393-405.


関連サイト



私的・北海道地質百選のトップページへ戻る