私的・北海道地質百選
『第二白糸トンネル』
注)このサイトは本家・北海道地質百選では,石井正之さんが『島牧村 第二白糸トンネル岩盤崩落』として投稿しています.ここに掲載するものは, 石井さんの投稿 をもちろん参考にしていますが,すべてオリジナルのものです.
土木学会岩盤力学委員会編『岩盤崩壊の考え方』によると,豊浜トンネル岩盤崩落(関連サイト参照)から,約1年半後の 1997(平成 9)年 8 月 25 日午後 2 時過ぎ,国道229号線第二白糸トンネル瀬棚側坑口上部で大規模な岩盤崩落事故が発生し,トンネル巻き出し部を押し潰した.幸いに人的被害はなかったが,その三日後に衆人環視の下で2回目の大規模な残存岩体の崩落が起こっている.
以下では,この大規模な国道関連の岩盤崩落サイトについて紹介する.
右写真は,島牧村オコツナイの旧第二白糸トンネル瀬棚側坑口における岩盤崩落跡である.左側のアスファルト部分が廃道となった国道 229 号線旧道で,その先に坑口巻き出し部があった.
現道脇から見た崩落跡を下写真左に示す.白糸トンネルは,崩落事故後に第一・第二白糸トンネルの別線として建設されたトンネルである.こういう角度で見ると,崩落個所と現道トンネル坑口が接近しているように見えるが,下に空中写真で示すように実際はかなりの離隔がある.
崩落剥離面のクローズアップを示す(右写真右).剥離面はほぼ垂直である.地層はほぼ水平層で,新第三紀中新世のオコツナイ層の水中火山岩類からなる.露頭最上部に成層した火山性礫岩・砂岩互層があり,その下位は塊状ハイアロクラスタイトである.
『岩盤崩壊の考え方』(上掲)によると,露頭基部に軟質な凝灰岩層があり,浸食によりオーバーハングを形成していたらしいが,現在は崩積土に覆われており確認できない.
道路防災点検の際に白糸トンネル脇をヘリで通過した時に撮影したものを右に示す.この部分の急崖の高さ(オーバーハングから上が約 150 m)が実感できる.
第二白糸トンネルは,1976(昭和 51)年開通ということなので,1984 年の豊浜トンネルよりいくぶん古い.豊浜トンネルと同じように,現在の意識で見ると,なんでこんなところにトンネル坑口を?とも思ってしまうのだが,1996-1997 年以前には,行政側にも建設側にも,そして我々一般社会側にも,そもそもそういう問題意識が無かったということなのであろう.
二つの大きな岩盤崩落事故を契機として,道路防災の考え方は大きく変わった(and/or 前進した)と言える.
なお,崩落個所を横から撮影した写真(右)を見ると,前側に大きく傾いたピサの斜塔のような巨大な残存岩体が見える.背面は大きく開いており,今にも前方に転倒しそうに見えるのだが,Google Earth / Google Street で見る限り,2016 年 11 月現在,そのまま安定しているようである.時々思うのだが,岩盤の安定性というのは不思議なものである.
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