私的・北海道地質百選
『霧多布岬の礫岩層』
浜中町霧多布(きりたっぷ)岬の遊歩道から,海岸の急崖に大規模な露頭が見える.露出している地層は,浜中地域の根室層群最上部,霧多布層である.
露頭上部に見えているのは,莫大な厚さの礫岩層である.正確には分からないが,おそらく層厚 20 m 以上はあるのではないだろうか.
礫岩層の内部は不淘汰無構造であるが,非常に弱い成層構造があるようにも見える.礫は円礫主体で,最大礫径は遠方からの目測であるが 1 m 程度のものがある(右下写真).
礫岩層の下位は,薄層理の比較的均質なタービダイト互層のようである.礫岩層の下底は,植生で明瞭ではないが凹凸があるように見え,浸食面なのかもしれない.
また,写真をよく見るとタービダイト互層のさらに下位(海面から約 10 m 上)には,再び礫岩層が露出している.
この礫岩層は礫質重力流堆積物ということになるが,このような莫大な厚さと大きな礫径を持つ礫岩単層が,どのような運搬定着機構を持っているか,筆者にはどうにもイメージできない.大規模な海底チャネルの埋積層ということなのだろうか.
霧多布岬では礫岩を間近で観察することは不可能だが,その対岸の琵琶瀬南方の漁港横には,霧多布層礫岩の露頭があり,観察・採取が可能である.
礫のほとんどは火山岩(輝石安山岩?)で,それ以外の礫種は写真で見る限りまったく含まれていない.レンズキャップの右にある白色の礫は,多少珪長質で斑晶を持つ火山岩である.
火山性礫岩といっても良い岩相である.
このような礫岩層の存在は,霧多布層堆積時(古第三紀暁新世)に,かなりの活動規模を持つ島弧火山体が堆積盆近傍にあったことを示す.しかし,その供給実体は少なくとも現在の北海道には存在しておらず,詳細は不明である.
(なし)
長尾捨一・石山昭三・吉田三郎(1966)5万分の1地質図幅『霧多布』.北海道開発庁,38 p.