私的・北海道地質百選
『来止臥の天寧層』
釧路町来止臥(きと・うし)の海岸には,古第三系浦幌層群の河川成粗粒相である天寧(てんねる)層が露出している(ヘッダー・サムネール).
天寧層の露出は釧路市益浦海岸にもあるが,このサイトはその岩相を観察できるもう一つの良好なサイトである.ただし,その上下層(別保層・春採層)は残念ながら露出していない.
来止臥海岸に露出する天寧層はほぼ水平層で,おもに礫岩からなり,連続性の悪い砂岩層(~レンズ)を挟む(右写真).
礫岩は赤色チャート礫を含む,いわゆる “赤玉” 礫岩である.礫の円磨度は低く,淘汰もあまり良くない.
礫岩層は全体に弱く成層し,場所によって斜交成層を示す(右下写真).網状河川の堆積物と考えられる.
露頭下の礫岩大転石中には,大きな珪化木破片が含まれているのが見出される(右写真).かなりの太さの幹の一部で,年輪構造が良く見えている.
また,これらの礫岩砂岩互層中には規模は大きくないが砂岩脈の貫入が認められる(右下写真左).
大きなもので,幅が 15 cm 程度であるが, 1 cm 以下(mm オーダー)の,上方に尖滅する砂岩細脈もある(右下写真右).
いずれもその形態から下方からの貫入・注入と考えられるが,天寧層の下位には礫岩主体の別保層しかなく,他の古第三系中の砂岩脈と同様に,その由来には考えるべき課題が多い.
(なし)
河合正虎(1961)5万分の1地質図幅『昆布森』說明書.地質調査所,59 p.
長浜春夫(1961)5万分の1地質図幅『釧路』および同説明書.北海道開発庁,53p.