私的・北海道地質百選
『浦幌層群の河川成層』

注)このサイトは本家・北海道地質百選には『釧路岩見海岸の浦幌層群基底不整合と河川成層』として投稿し掲載されたものです.今回ここに掲載するにあたり,『基底不整合』の部分を別サイトとして分離しました.


 釧路市益浦海岸には,道東地域の古第三紀始新世挟炭層である浦幌層群が露出している.その全体が河川成層である.下位から,別保(べっぽ)層・春採(はるとり)層・天寧(てんねる)層・雄別(ゆうべつ)層である.雄別層の大部分と最上位の舌辛(したから)層(浅海層)は露出していない.

※ なお,以下に掲載する露頭の地層名は,その岩相や地理的位置および地質図幅『釧路』等から筆者が “適当に” 判断したもので,厳密な層序学的判断に基づくものではありません.したがって,その解釈には誤りや不正確な点を含む可能性があります.ご了解ください.

別保層の岩相.左:基底礫岩.いわゆる “黒玉” 礫岩.右:上部の斜交成層砂岩.2013 年 6 月撮影.

 別保層の基底礫岩は,根室層群汐見層(暁新世)を不整合で覆う.礫の円磨度は高い.別保層の上部は,斜交層理を示す礫岩砂岩互層となり(上写真),上部に細粒化しシルト岩主体の春採層へと移化する.


左:春採層の成層シルト岩露頭.2012 年 5 月撮影.右:シルト岩中に挟在する炭質頁岩層.2012 年 5 月撮影.

 春採層はおもにシルト岩からなり,炭質頁岩・石炭層を挟む(上写真).益浦海岸では厚い石炭層の挟在はみられない.


左:春採層最上部の石炭層と,その上に浸食面を持って重なる天寧層礫岩.石炭層の下部は炭質シルト岩を挟んで灰色シルト岩に漸移する.2012 年 5 月撮影.右:天寧層礫岩.特徴的な “赤玉” 礫岩.2013 年 6 月撮影.

 春採層の上には,弱い浸食面を持って天寧層の礫岩が重なっている(上写真左).この礫岩は通称『赤玉』と呼ばれ,赤色チャート礫が特徴的なものである.礫の円磨度は低く角礫~亜角礫状のものが多い.天寧層の上部は細粒化し,次第に成層した礫質砂岩へと移化している.


雄別層の斜交成層礫質砂岩.2012 年 5 月撮影.

 天寧層の上位には,斜交層理砂岩・シルト岩からなる雄別層が益浦海岸東部から西方の興津海岸にかけて露出している(右写真).

 天寧層との関係は不明であるが,明確な境界はなく,漸移関係と考えられる.


春採層シルト岩中の砂岩シル.2013 年 6 月撮影.

 なお春採層シルト岩中には,特異な砂岩シル(~ダイク複合体)が発達する部分がある(右写真).
 その構造は非常に複雑でシル・低角斜交ダイク・高角ダイクがネットワーク状に複合しており,シルの部分は正常な砂岩堆積層と区別が難しいが,側方分岐構造によってシル貫入体であることが分かる.
 単なる河川成層である春採層中にこのような複雑な砂貫入体が存在する理由は,enigmatic としか言いようがない.これについては,『黒歴史シリーズ その9』に勝手な憶測を書いているので,興味のある方は読んでいただきたい.


既存の指定など

(なし)


所在地

釧路市 益浦.


サイトの状態:


参考文献

七山 太・亀村孝子・金松敏也,1999,釧路海岸<浦幌層群の層序と堆積システム>.道東の自然を歩く,36-41,北海道大学出版会.

長浜春夫(1961)5 万分の1地質図幅『釧路』説明書.北海道開発庁,52 p.


関連サイト



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