私的・北海道地質百選
『赤泊東方の根室層群』
浜中町幌戸(ぽろと)から初田牛(はったうし)に抜ける道道脇から赤泊(あかどまり)方向に行く道がある.すぐに狭い悪路が左に出てくるので,そこを入って進むと,海岸に出る.海岸には,根室層群の良好な露頭が広がっている(下写真).
根室層群は,おもに薄層タービダイトと泥岩の “有律互層”(死語かもしれない)からなる(右写真).斜面上部には,厚層タービダイト互層が見えている(上写真).地層は南東(海)側に緩く傾斜しているように見える.
『霧多布』図幅では,この部分の地層は厚岸層と塗色されているが,岩相的にはその下位の浜中層(霧多布図幅では幌戸層)とほとんど変わらない.
このへんの根室層群の地層対比・区分については,門外漢にはとてもフォローしきれないものがあり,正直よく分からない.
タービダイト砂岩には,大きなリップアップクラスト状の泥包有物を含む部分もある(右写真).
また,厚層礫質タービダイト層の挟在も認められる(右下写真).含まれる礫は帯赤色の火山岩礫が多く,火山性礫岩と言っても良いようなものである.
露頭下の転石の層理面に,見事なソールマークを示すものが散在している(右下写真).グルーブキャストを主体とする.底面に角ばった凹凸が見られるが,これはタービダイトに含まれる礫粒子によるキャストではないかと思われる.
一部にフルート状構造や,荷重痕のような部分も見られるが,はっきりしない.
この海岸ではまた,根室層群堆積岩とドレライト・シートの間の貫入接触関係が良好に観察でき,貴重なサイトとなっている.
根室層群互層の下位に,ドレライトシートが貫入関係で接触する(右写真上).ドレライト側には薄い冷却縁が認められるが,堆積物との混合関係のようなものはなく,平板状でクリアな境界となっている.堆積岩はやや珪質で変色しているように見え,弱い接触変成(・変質)を被っている可能性があるが,岩石学的には確認していない.
接触面をクローズアップしてみると,ドレライト側は明瞭な冷却縁があるが,堆積岩側には変色リムや鉱物脈などは見られない(右写真下).両者の境界は小さな凹凸が多く,堆積岩の葉理を切っているように見える.
(なし)
長尾捨一・石山昭三・吉田三郎(1966)5万分の1地質図幅『霧多布』.北海道開発庁,38 p.