私的・北海道地質百選
『門静採石場』
厚岸町門静(もんしず)の北には,大規模な採石場群があり,根室層群門静層が露出している(下写真).地層の大規模な成層状態がはっきりと見える採石場として,貴重なものと思われる.
この付近には稼行を終えたものを含めて複数の砕石サイトがある.上の写真は,その中でもっとも大規模なものである(2010 年 9 月撮影).
ここに露出している門静層は,砂岩と泥岩の互層で,おそらくタービダイト互層であろう.粒度等は不明であるが,『厚岸』図幅によると,礫岩の挟在もあるらしい.
地層の層理面はほぼ水平 ~ 5 度以下の緩傾斜である.『厚岸』図幅によると,この地域の根室層群は南(海側)に 10 度程度傾斜しており,採石場の北に下位層の太田村層が,南に上位層の尾幌川層が分布している.どちらも泥岩主体の細粒相である.
メインサイトの向かって左側には,厚層理砂岩→砂岩泥岩互層→泥岩へと上方細粒化する地層が見える.厚層理砂岩層は,見えている限りでも 10 m 以上の厚さがある.おそらく癒着しているものと考えられる.
上写真は,メインの稼行サイトから南にやや離れた場所にある,既に稼行を終えた採石場跡である.
右写真は道路沿いにある大きな露頭だが,おそらく古い砕石サイト跡であろう.残念ながら全体がロック・ネットで覆われている.
いずれも等量に近い砂岩泥岩互層であるが,タービダイトであるかどうかは確認していない.写真を確認する限りでは,砂岩は細粒で葉理が卓越し泥岩との境界は明瞭ではなく,少なくとも粗粒砂質タービダイトではないように見える.
2010 年の時点では少なくともメインのサイトは活発に稼働していて,もちろん立ち入りはできなかった.採石場を運営しているのは厚岸地区砕石事業協同組合という組織のようだが,筆者はコンタクトしていないので,見学立ち入りができるかどうかは不明である.
(なし)
小山内 熙・三谷勝利・松下勝秀(1961)5万分の1地質図幅『厚岸』説明書.北海道開発庁,33 p.