私的・北海道地質百選
『シューパロ湖の函淵層』
夕張市シューパロ湖畔では,白亜系末(~暁新世)の地層である函淵層の露出をその模式地周辺で良好に観察できた.しかし,2005 年頃から開始された新シューパロダムの建設工事と 2014 年湛水開始による 15 m におよぶ湖面嵩上げによって,そのほぼすべてが失われた(右図).
以下で紹介するのは,2014 年には消滅した函淵層観察サイトの 1993~2009 年までの観察によるものである.
右写真は,(旧)大夕張ダムサイト上流右岸側にあった礫岩を主体とする函淵層露頭である.
層理面は向かって右(東)側に傾斜するが,全体が逆転し左上位である可能性が高い.
露頭を道路側から見ると礫岩部が塔状になっており,特徴のある露頭であった(ヘッダー・サムネール).
礫岩は淘汰・円磨度が比較的高く(右下写真),中礫を主体とし弱く成層している.礫種は珪質岩が卓越するが,チャートなのかそれとも珪長質火山岩・火山砕屑岩なのかは確認していない.
礫岩中には薄い成層砂岩レンズが何枚か挟まれる(右下写真).
礫岩の見かけ上の上位には成層砂岩・泥岩互層,さらには塊状砂岩が重なっている.この互層部中には石炭層の挟在があったという記憶があるが,未確認である.
この礫岩は,安藤ほか(2007)によると堆積シーケンス DS5 の基底礫岩で,海進性の礫岩(海進ラグ)とされている.
(旧)大夕張ダム脇をシューパロ川に沿って南へ入るシューパロ川林道(正式名称未確認)沿いでは,かつて函淵層の堆積構造が良好に観察できた.新シューパロダム建設時にこの林道は廃道になってしまった.
現在の状況は不明であるが,新シューパロダム管理棟側からは入る道はなく,Google Earth で見る限りでは湛水により完全に沈水しているようである.
ここで観察される地層は,淡緑色の凝灰質シルト岩・砂岩を主体とし,湖(東)側に急傾斜している.
地層の上下は判定できなかったが,他の場所と同じく逆転しているとすれば,上に紹介したダムサイトの礫岩・砂岩互層の層位的下位になる.
下に紹介するように,この地層中には漣痕と生物擾乱構造が観察でき,全体が浅海相であると考えられる.
(なし)
安藤寿男・栗原憲一・高橋賢一(2007)蝦夷前弧堆積盆の海陸断面堆積相変化と海洋無酸素事変層準:夕張~三笠.地質学雑誌,113巻補遺, 185-203.