私的・北海道地質百選
『大黒岩の礫岩』
釧路町老者舞(おしゃまっぷ)の漁港に出ると,漁港の中に大きな丘状の岩がある.大黒岩である(ヘッダー・サムネール).漁港の道路脇にあり,気軽に観察できる典型的な礫岩の露頭として,貴重なものである.
大黒岩を作っているのは礫岩層で(右写真),層理面はほぼ水平~ゆるく海側に傾斜している.
礫岩は弱く成層し,礫径は小礫~中礫を主体とし,大礫を含む(右下写真).礫の円磨度は非常に良い.薄い砂岩レンズを挟む部分がある(右下写真).
礫種は花崗岩が特徴的で,そのほかには黒雲母ホルンフェルスや安山岩質火山岩などが認められる(右下写真).
老者舞漁港の西側海岸を見ると,緩く海側に傾斜した成層礫岩の露頭が大規模に発達している(右下写真).しかしこの露頭は残念ながら近寄って観察することはできない.
この礫岩層は,根室層群上部の昆布森層老者舞部層に属している.
Okada et al. (1987) によるとその時代は古第三紀暁新世後期で,知方学の去来牛部層よりも下位のものになる.
北海道の空知-エゾ帯より東には,先古第三紀の珪長質深成岩体が存在しない.
西側には道南の渡島帯のもの(前期白亜紀)があるが,根室帯はその形成当時渡島帯から砕屑物供給を受ける位置には無かったので,この花崗岩(・ホルンフェルス)礫の供給源はまったく不明としか言いようがない.
(なし)
Okada, H., Yamada, M., Matsuoka, H., Murota, T. and Isobe, T., 1987, Calcareous nannofossils and biostratigraphy of the Upper Cretaceous and Lower Paleogene Nemuro Group, eastern Hokkaido, Japan. Jour. Geol. Soc. Japan, 93, 329-48.