私的・北海道地質百選
『歌露礫岩』
えりも町襟裳岬周辺には,礫岩・砂岩・シルト岩からなる古第三系漸新統襟裳層が分布する.襟裳岬周辺では構造変形はほとんど見られないが,北西方の油駒~歌別付近では,なぜか強い構造変形を被っている.
歌露(うたろ)海岸付近(右写真)に分布する歌露礫岩はその代表的なもので,Uda (1973),Kusunoki and Kimura (1998)による構造地質学的研究がある.
露頭は遠目にもそれとわかる強い変形片理を示しており,とても新生代の地層とは思えない(右写真).
近づいて見るとそれが強い構造変形を受けた礫岩であることが分かる(下写真).
特に,明るい色調の花崗岩質岩の礫は基質とのコントラストによってその形状がはっきりと分かり,著しい伸長変形・メランジュ様の変形・ブーダン構造などには,正直驚かされる.
古第三紀の地層がこのような強い構造変形を被った背景としては,新第三紀における古千島弧と本州弧の衝突と日高山脈の形成という大きな構造イベントがあげられる(Kusunoki and Kimura, 1998).
しかし,他地域の古第三系(・新第三系)にこのような剪断変形はまったく見られないので,なぜそういった(高応力下での?)強い変形が歌露礫岩とその周辺にのみ局在しているのかは,筆者には no idea である.
なお,見学サイトに立ち入るには,海岸近くの昆布干場の間を通過する必要がある.干場は一見それと分かりにくい場合があり,絶対に足を踏み入れることのないように注意したい.
(なし)
Uda,T., 1973, Deformation of granite pebbles in 'Utaro conglomerate' at Cape Erimo, Hokkaido, Japan. Jour. Geol. Soc. Japan, 79, 391-398.
Kusunoki, K. and Kimura, G., 1998, Collision and extrusion at the Kuril-Japan arc junction. Tectonics, 17, 843-858.