私的・北海道地質百選
『えりも岬の古第三系』
※ ヘッダーのサムネールは,太平洋に没していく襟裳岬.岬の急崖や小島・岩礁などはすべて襟裳層堆積岩からなる.2010 年 7 月撮影.
襟裳(えりも)岬は,大地形的には日高山脈が太平洋に没する場所(写真1)であるが,日高山脈を本質的に構成する岩石(日高変成火成岩類)は庶野以南にはWNW-ESE方向の断層で切断されて分布せず,地質学的には日高山脈の南端とは言えない.
襟裳岬周辺に分布するのは,砂岩・泥岩・礫岩の互層からなる襟裳層である.
襟裳層はその岩相などから新第三系中新統川端層に長く対比されてきたが,栗田・楠(1997)によって古第三紀の渦鞭毛藻化石が発見され,より古い地層(漸新統)であることが明らかとなった.
襟裳岬遊歩道から岬の海岸に降りると,見事な礫岩・砂岩互層が露出している(上写真・右写真).花崗岩質岩礫が特徴的で,その円磨度は低い.その他の礫は,大部分が付加体泥岩(黒色)と緑色岩類(薄緑色).赤色チャート礫をかなりの量含む.
この礫岩は特徴的に花崗岩質岩の大礫を多量に含み,最大のもので長径 2 m 以上ある(右写真).花崗岩質岩自体の絶対年代は得られていないが,襟裳層の古第三紀年代を考慮すると,少なくとも 30 Ma 前後あるいはそれ以前となる.その起源は日高山脈のテクトニクスを考える上で興味深い.
(なし)
栗田裕司・楠 香織,1997,北海道中央部,襟裳層の渦鞭毛藻化石年代(後期漸新世)とその意義.地質学雑誌,103, 1179-1182.