私的・北海道地質百選
『三石蓬莱山の角閃岩』
新ひだか町三石の中心街を抜けたところで国道を左折し三石川に沿って少し行くと,町民パークゴルフ場が見えてくる.その背後に,山水画のように木々をのせた小さな岩山がそびえている(右写真).これが蓬莱(ほうらい)山である.
蓬莱山の向かって右側の切込み部には道道とJR日高本線(現在は廃線となった)が走っているが,この部分が自然地形なのか開鑿されたものかは不明である.
蓬莱山脇の駐車場にクルマを止め,川岸に降りてそのふもとに近寄ってみると,黒っぽい色をした非常に硬い岩石からなっていることがわかる.この岩石は層状角閃岩で,やや青味を帯びた暗色の部分と灰色~黄緑色の部分とが層状構造をなしている.青みを帯びた部分は青色角閃石を含有している可能性があるが確認はしていない.和田ほか(1992)では,この角閃岩はリーベック閃石を含むと書かれている.
なお,写真は回転してあり,実際の層状構造は,露頭で垂直に近い急傾斜を示している.
蓬莱山は,周囲のなだらかな里山の中に突出した岩山である.このような地形は,岩石の硬さが周囲とは大きく異なることを示している.
それは,付近の地質に関する調査報告(和田ほか,1992)を見るとすぐに理解できる.この場所には,新生代の地層を切断する断層帯が走っている.地層の下には,神居古潭帯の高圧変成岩と蛇紋岩が潜在しており,それらが断層に沿って幅狭く押し出されて(蓬莱山地塁帯),北北西-南南東に伸びる山稜(写万部山~軍艦山)を形成している.その中に含まれる角閃岩体の一つが三石川によって浸食された残丘となり,蓬莱山を形作っているのである.
なお蓬莱山の南西方には,ざくろ石角閃岩などの希少な石材を採掘した場所があり,それが北海道大学の『聖蹟碑』にも使用されているが,現在はすべて廃坑となっている.
(なし)
和田信彦・高橋功二・渡辺 順・蟹江康光,1992,5万分の1地質図幅説明書『三石』,北海道立地下資源調査所,73p.