私的・北海道地質百選
『北大聖蹟碑』
北海道大学のシンボル,クラーク像から交差点をはさんだ斜め向かいの場所に,不思議な形に配列した石碑がある(右写真).実はこの石碑の石材は,地質学的に非常に貴重なものである.
北大ホームページには,北大構内の石碑についての紹介ページがあったが,そこにはこの石碑について『聖蹟(せいせき)碑(昭和12/3/31設置).材質:日高産の柘榴石』と記されていた.「柘榴(ざくろ)石」(=ガーネット garnet)というのは鉱物名であるが,「日高産の柘榴石」とは具体的に何を指しているのか不明である.これらは,正確にはどういう石材(岩石)なのだろうか?
一方『北大キャンパスの草わけ』という出版物には,この石材の由来として「日高の蓬莱山から切り出した」とある.
聖蹟碑の石材を観察してみると,その大部分は,かなり粗粒の緑レン石角閃岩である.仔細に見るとその中に鮮やかな紅いざくろ石結晶が認められる(右写真).このざくろ石角閃岩には,細粒のざくろ石を含む帯赤色層も含まれており,その中には径 1 cm 近い磁鉄鉱自形結晶を含む部分(右写真)がある.その他に,石英を多量に含む珪質変成岩層も認められる.これらの岩石は,互いに互層状・ブーダン状になっている.
その他にも,右写真下に示すような,帯緑灰色で著しい褶曲構造を示す岩石もある.角閃石-斜長石からなる変成岩と思われるが,正確なとことは分からない.
「蓬莱山」は別のページで記述されるように新ひだか町三石にあり,白亜紀低温高圧変成帯の神居古潭帯に属している.ざくろ石角閃岩のような高い変成度の岩石は神居古潭帯では非常に珍しいもので,蓬莱山とその周辺でしか見つかっていない.
※ 聖蹟碑の変成岩については,低温高圧変成岩がご専門だった故渡辺暉夫教授が,教養生を引率して “野外講義” を行っているのを目撃したことがあるが,その内容を拝聴することはできなかった.
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