私的・北海道地質百選
『館浜メランジュ』
※ 上のヘッダ・サムネールは,1973 年 8 月,筆者が学部3年目学生の時の松前地域修業論文調査の際に撮影した含礫泥岩.当時はこれがメランジュというもので,その地質体は付加体だということなど,指導教官も含めて誰も知るよしもなかった.何も分からない地質初心者の私がこの写真を撮ったということは,なにかこれに特別なものを感じていたのだろうか...松前町札前海岸.モノクロ写真を colorize 処理したもの.
日本国内では1970年代から導入が始まったプレートテクトニクス,そしてそれに基づいた付加体地質学は,日本列島のような環太平洋地域の島弧地域の地質学を大きく発展させた.
メランジュ(mélange)は,剪断した泥質基質とさまざまな形状・岩質の岩塊の混在相からなる,付加体に特徴的な地質体で,プレート沈み込みに伴う強い剪断作用によって形成されたと考えられている.
北海道内で,最初にメランジュと認定・命名されたのは,おそらく松前町館浜漁港周辺に分布する『館浜(たてはま)メランジュ』(川村ほか,1986)である.
それまでの北海道の中生代地質体の研究において,“メランジュ状地質体” といった表現が行われる場合があったが,地名を冠した明確な固有名詞として命名されたものはなかった.
館浜メランジュはジュラ紀付加体である渡島帯に属している.渡島半島南部地域は,海岸地域に付加体が露出しており(右写真),その内部構造や地質構成をよく観察できる格好の地域となっている.
メランジュ基質は剪断された含礫泥岩で,さまざまな岩質の cm オーダーの包有物を多量に含んでいる(右下写真).包有物は強い伸長変形を被っている.
岩塊(m オーダー)は,すべて海洋性岩石で,成層チャート・緑色岩(枕状溶岩を含む)・ドロマイト質石灰岩/チャート/ハイアロクラスタイト質泥岩互層などである.
(なし)
川村信人・田近淳・川村寿郎・加藤幸弘(1986)西南北海道の中・古生界の地質構成と産状.地団研専報,No.31, 17-32.