私的・北海道地質百選
『瀬棚層の斜交層理と不整合』
斜交層理が観察できる露頭自体は,北海道でも特に珍しいわけではない.しかしこの場所は,砕屑物の構成の違いから,非常にビジュアルな斜交層理が観察できる場所である.
観察場所へのアクセスがかなり分かりにくく,経験者でも通り過ぎてしまうことがある.国道230号線を今金町から訓縫方面に走ると,種川の集落を過ぎたところで住吉・中里方面に右折する道路がある.これは,花石トンネルの開通で旧道となった旧国道230号線である.後志利別川に沿ってしばらく走ると,中里の集落を過ぎて,右側に中里橋へ右折する道が見えてくる.ここをそのまま直進して 1 km ほど進むと,右写真のような消火栓の看板が目印の場所があり,駐車が可能である.この場所の手前のガードロープの切れ目から道路の下を見ると,小さな沢が流れている.この沢を下る(右写真).沢の中は足場が非常に悪いので見学に際しては覚悟が必要である.夏はヤブ蚊がすさまじい.
小沢の中には,右写真のように保存の良い貝化石が散乱しており,沢の横には瀬棚層の化石を含む小さな露頭もある.
沢をしばらく下ると,突然目の前が開け,後志利別川がとうとうと流れている(一番下の写真参照).ここで川の水位が高く,右側(下流)方面に歩く余地のない場合は,危険なので見学はあきらめること.
川岸や川の中には,黒松内層のシルト岩が露出している.この露頭の上を歩いて下流側に少し行くと,川岸に上の写真のような見事な斜交層理の露頭がある.瀬棚層である.砕屑粒子に軽石~火山灰を含むせいであるが,斜交層理が示す黒白のビジュアルな紋様が目を引く(右写真).
ここから,いま来た方向を振り返ると,黒松内層のシルト岩層と瀬棚層の砂岩層は,斜交不整合関係にあることがわかる(上写真).
この不整合は,能條ほか(1999)で詳しく記載されている.瀬棚層の基底部には黒松内層由来のシルト岩礫が多量に含まれており,穿孔貝のあとも確認できる.瀬棚層の層理面は不整合面にやや斜交しており,軽微なアバット構造を示している.
(なし)
能條 歩・長谷川四郎・岡田尚武・都郷義寛・鈴木明彦・松田敏孝(1999)西南北海道瀬棚層の広域的岩相層序区分と生層序年代.地質学雑誌,105, 370-388.
能條 歩・寺崎康史(2002)今金町:地層の削り込み-黒松内層と瀬棚層の不整合.改訂版道南の自然を歩く,178 p,北海道大学出版会.