私的・北海道地質百選
『北海道最古の化石』

※ ヘッダの写真は Fusulinella biconica. 産総研地質調査総合センターウェブページ 掲載の写真を編集したもの.本サイトから産出したものではない.


 西南北海道の渡島帯は,おもに中生代・ジュラ紀(約2億年前)の付加年代を持つ付加体であるが,その中には古生代・石炭紀後期(約3億年前)の化石が含まれている.これは 北海道で最古の化石 である.付加体中に付加年代よりもはるかに古い地層が含まれる場合,その産状として,①混在岩相中の包有岩塊,②付加した海洋性岩体,の二つのケースが一般に想定される.


大平山西斜面の石灰岩露頭.2009 年 6 月撮影.

 上ノ国町大平山西斜面を走る未舗装の道路沿いには,夏季には草に覆われる目立たない石灰岩の露頭がある(左写真).これが北海道最古の化石産地である.

 ※ 草地にはマダニが大量に生息しているので注意されたい.

大平山西斜面の砕屑性石灰岩体.中央から下が石灰質砂岩,上が石灰岩礫岩.2009 年 6 月撮影.

 この露頭の石灰岩体は,石灰岩礫岩とその下位の石灰質砂岩からなり(下写真),ほぼ水平層である.両岩相は整合関係であるが,本来の上下関係は不明である.

 石灰岩礫岩は,淡灰色~暗灰色の多種の色調を示す淘汰の悪い石灰岩礫からなる.全体に左右に伸長変形しており,礫の外形は不明瞭であるが,円磨度の比較的高いものが含まれているようにも見える.注意して見ると,伸長変形の比較的弱い黒色玄武岩礫も少量含まれている.


石灰岩礫岩のクローズアップ.2000年 10 月撮影.

 湊・国府谷(1963)・角ほか(1970)は,これらの石灰岩礫から後期石炭紀フズリナ Fusulinella を見出した.また,吉田・青木(1972)は Gondolella clarki, Idiognathodus delicatus などの後期石炭紀コノドントを報告している.

 この砕屑性石灰岩体の周囲には成層~塊状チャートを主体とした海洋性岩体が露出し,混在岩相は認められない.正確な層序関係は露出不良のため不明である.
 しかし,他地域(例えば小砂子岩体)の層序から類推すると,チャートを含めて一体の海洋性岩体の一部であり,石炭紀海山周辺のチャート堆積場に流入してきた海山頂部起源の粗粒重力流堆積物と考えるのが妥当である.


 なお,上ノ国町苫符沢川から,湊・国府谷(1963)により同じような石炭紀化石が報告されているが,これは混在岩中の石灰岩包有物から産出したもので,大平山のものとは産状が異なる.


既存の指定など

(なし)


所在地

上ノ国町 大平山西麓.


サイトの状態:


参考文献

湊 正雄・国府谷盛明(1963) 北海道桧山郡上ノ国村の Fusulinella.地質学雑誌,69, 161.

吉田 尚・青木ちえ(1972) 北海道松前半島の古生層と渡島半島の南部のコノドント. 地質調査所月報,23, 635-646.

角 靖夫・垣見俊弘・水野篤行,1970,5万分の1地質図幅『江差』および同説明書.北海道開発庁,53 p.


関連サイト



私的・北海道地質百選のトップページへ戻る