PC9801の世界


 これはまた,本気で背筋が寒くなるほど恥ずかしいです.うひゃ〜...PC9801の世界だって,得意げにバッチですって.(^^;
 でもまあ,これが私の通ってきた道の現実ですので,隠さないで晒しとこ.:-p たった15年前のことなんだしね.
 しかし,『中期的(2〜5年オーダー)視野』のところ読むと,なんかせつないすね.“どんなに便利だろう”だって〜...(^^; 我々はその“どんなに便利だろ世界”に今住んでいるのだろうか...ほんとうに?  (2003/05/14)


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PC9801の世界 (その1)
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川村 信人 (※※班)

1.はじめに

  私は,断わるまでもありませんが,コンピュータの中身(ソフト・ハードの原理・構造)についてはまったく知識もなく理解もできないという純粋な「ユーザ」です.もっともパソコンユーザというものにはきわめて多様なレベルがあり,単に市販ソフトを使うだけという低次レベルから,機械語を駆使する高次レベルまでいろいろあるようです.一時話題となったコンピュータウィルスを作ってしまうようなユーザ(?)は,遥か上の霞のかかったようなレベルに潜んでいるわけです.私自身は下の上〜中の下程度の(別に中流志向ではありませんが,多少のプログラミングができるという)レベルであると思っています.
  ところで,中の下レベルのパソコンユーザの目から周囲のパソコン事情を密かに観察してみると,ユーザの90%以上は下層レベル(の下位?!)にひしめいているように見えます.そして,そのようなユーザにとって現在のパソコン環境は,快適なものとは決して思えないしろもののようです.このような状況は私たちユーザ自身にとって大変残念なことです.パソコンのハードやソフトの設計そのものが,ユーザフレンドリなレベルまで降りてきてくれることが理想的なのでしょうが,それをいつまでも待っているわけにもいきません.
  そこで,『パソコンユーザの側もレベルアップによって武装する必要がある』という観点からこの文章を書いてみました.▲▲▲※※支部会員の皆さんの中にも,パソコンを持っているにはいるが,どうもあまり便利なものとは感じられない,と首を傾げている方が多いのではないでしょうか? そういう場合の何かの参考にしていただければと思います.もちろん,〈こんな事ぐらい分かっている,もっと便利なことを知っているぞ〉という方は,私にもそれをこっそりと教えて下さい.

2.PC9801のハードウェア(機械的)構成

  好むと好まざるとに関わらず,私たちの周囲に普遍的に存在しているパソコンハードウェアは,NEC製のPC9801シリーズ,あるいはそのたった一つの互換機である EPSON PC-286 シリーズでしょう.Mac は最近多少目につきますが,“世界の標準機”といえるIBM PC/AT など恥かしながら私は見たこともありません.
  こういう状況から,本文ではこれ以後,単に“パソコン”という表記は,NEC PC9801シリーズを意味することとします(PC9801シリーズがパソコンを代表しているという意味は含みません).このハードウェアは,ソフトコピーを媒介としたおそるべき自己増殖性を発揮して,一種のmonopolyを形成するまでになっています.例えば北大の地鉱教室という狭い世界を見ても,少なくとも15〜20台程度の PC9801シリーズが元気に動いています(いくつかは埃をかぶっていますが).
  現時点での PC 9801シリーズの標準的な構成は次のようなものです.市販されているソフトも,大体においてこのような構成を念頭に置いて作られているようです.これに各種周辺機器(プロッタ,ハードディスク,イメージスキャナ,マウス,デジタイザ,など)が必要に応じて付くわけです.
    CPU i80286/i8086(V30)
    ディスクドライブ 1 MB×2
    メインメモリ 640 KB
    増設バンクメモリ 2 MB
    ディスプレイ 14インチカラー(640×400ドット)
    プリンタ 24ドット日本語プリンタ
以下ではこのようなハード構成を念頭において,パソコンをめぐるあれこれについて述べてみたいと思います.

3.パソコンのソフトウェア環境

 (1)MSDOS について
  パソコンソフトと言えば「一太郎」とかの市販ソフトが真っ先に思い起こされますが,その前に忘れてはならないのがOS(Operating System)と呼ばれるものです.このOSの存在はしばしば忘れられがちですが,キー入力やディスプレイへの表示,ファイル管理など基本的な処理を行なう“基本ソフト”です.こういうソフトがパソコン自体の中に最初から存在しているわけではなく(実は基本ソフトが使う基本ソフト,なんだこりゃ,はこっそりとパソコンの中に納められていますが),フロッピーディスクなどの外部記憶装置から(スイッチを入れる毎に)パソコンの中にインプットしてやらなくてはなりません.このOS無しではパソコンもただの「電気が流れている針金の束」です.「一太郎」などの便利なソフトも,OSの助けを借りなければ,何もできません.そのOSとしてこれ以上はないという寡占状態を形成しているのが MSDOS( MicroSoft Disk Operating System)です.本文ではこれ以後,単に“パソコン”といえば,先の定義に加えて“MSDOS が動いているパソコン”を意味することにします.ちなみにこういうのをその筋では「ネスティングされたマクロ展開」と呼びます.楽屋落ちですいません.
  ここでちょっと付け加えておきますと,初歩的なプログラム言語として名高い BASIC ( Beginner's All-purpose Symbolic Instruction Code)も実はそれ自身OSの一つだったのですが,現在は MSDOSの下(上?)で動くBASIC(MSDOS-BASICや Quick BASICなど)が常識になっています.

 (2)“三種の神器”
  さて,OSの上で動く(我々が実際に使う)パソコンソフトには,三種の神器と呼ばれるものがあります.それは,ワープロ・データベース・表計算,です.この三つのソフトのどれが欠けても,パソコンはかわいそうな“醜いアヒルの子”になってしまいます.最近(でもないか)かなり勢力を伸ばしている Macは,ビジュアルな操作環境(プレゼンテーションマネージャによるユーザインターフェースとかいう,パソコン用語というものは実に難しい)はもちろんですが,これらの三種の神器が統合的に供給され(得)るというソフト的な強みが大きな魅力になっています.このことは,これまでの(というより現在の?)私たちのパソコンソフトに関する捉え方の問題点をはっきりと指摘していると思われます.

A氏のパソコン史)
→ まず(どう使うかはさておいて)パソコンを買う.
→ ワープロソフトをどっかからコピーして(つまり違法に無料で)手に入れる.
→ 文章を作成できるだけでは,研究者の道具とはとても言えないのでは
  ないかと思い,計算処理やデータ処理でもやらせようと,
  ひとまず BASICでも使ってプログラムを作ってみる.
→ バグったりファイル処理が面倒だったり,あまりうまくいかない.
  消耗の末,OPEN ... FOR INPUT AS #1 や ILLEGAL FUNCTION CALL ! が
  夢にまででてくる.
→ 結局パソコンがただのワープロ(清書機械)になってしまう.
  これじゃ街で売ってるワープロ専用機の方がずっといいや.

  これが,残念ながら実状ではないでしょうか(私自身の過去の例です,念のため).はっきり言ってこれは,研究・仕事の支援ソフトを自分で( BASICで!)つくるしかないと思いこんでいた“鎖国状況”のなせる事態なのです.このような事態を打開するには,三種の神器の残りの二つ,データベース・表計算ソフトがどうしても必要です.というよりも,『少なくともこの3つのソフトの載っていないパソコンはパソコンと呼ぶに値しない』という表現の方が正確でしょう.
  しかしながら,ワープロソフトはともかくとして,データベースや表計算ソフトがどういうものなのか,またそれを使えばどう便利になるのかということはあまり理解されていないようです.またそれを文章で表現することは,なかなかむずかしいものです.
  実はこの両者は基本的にはほとんど同じもので,どちらも“2次元の表”を扱うものなのです.したがって,使い方によっては両者の区別にあまり意味の無い場合があります( Lotus 1-2-3).もちろんそれぞれに別個の特徴が持たせてあるわけで,大体は次のようなものです.なおここでは,データベースは dBASE III,表計算は Multiplan という,私が持っているもので代表させてあります.実際にはソフトによって各種さまざまな特徴を持っているので,あくまでもこの前提で読んで下さい.

データベース
  表の行と列はそれぞれ一定の名称・型をもっており,その縦横関係を基本としてデータが蓄積・処理される(カード型データベースと呼ばれるものでも同じ).データは基本的には文字と数値で,数式を記述することはできない(扱うことはできるが,裏技が必要).文字データの処理機能(検索・並べ替え・抽出・置換)が強い.特にインデックス機能というのがあり,これがデータの並べ替えや高速検索に多大な能力を発揮し,紙のカードや一覧表とは本質的に(量が質に転化する....)異なる環境を提供する.複数の表を関連づけて扱うことができ,フレキシブルなデータ処理が可能である.ADL 言語(Application Developing Language )が一般に用意されており,かなり巨大な処理システムをユーザが(if possible...)プログラム記述できる.
使用例: 地質屋の場合,これはなんといっても文献カード,に尽きる.
     その他にはサンプル台帳や住所録などがある.

表計算
  表はセルという単位の集まりからなり,その縦横(行と列)関係にはデータベースのようなあまり大きな意味はない.セルに格納されるデータは基本的には数値と数式である.数式は通常,他のセルの数値を参照する形で記述される.その演算はユーザの指示無しに(数値が入力・変更されしだい)自動的に行われ,その結果が数値としてディスプレイ上のセルにリアルタイムに表示される.これが,例えば BASICで自作した計算プログラムとは決定的に異なる点である.この特徴を利用すると,データの一部が変わると結果がどう変化するかという,シミュレーションが可能となり,単なる計算表が質的に変化する.このような数値データの処理機能(数値演算・各種関数)が異常に強い.ただしユーザプログラム(とは言わず,マクロと通常呼ばれる)はセルの中に直接書くため,あまり大きな(複雑な)処理システムは記述できない.
使用例: 化学組成計算表,統計計算表,各種帳簿類がある.専門分野によって
     いろいろな数値データがあるので一概に言えないが,私の場合は
     粒度パラメータ(平均粒径・淘汰度・歪度・尖度)計算シート
     というのを使っている.電卓で30分かかる計算が1分で完了する.

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PC9801の世界 (その2)
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川村 信人 (北大班)

4.たかがバッチ,されどバッチ

  前回は,PC 9801 シリーズパソコンの基本的なハード・ソフトについて述べました.そこで今回は,それらを効率よく使うために必要な“環境整備”について述べたいと思います.MSDOS 環境下では,環境整備のキーワードは(1)CONFIG.SYS,(2)サブディレクトリ,(3)バッチです.(1)は,MSDOS 自身の作動環境を整備するもの,(2)はファイル管理の玉手箱ですが,いずれも話がややこしくなるだけなのでここでは省略します.
  それでは「バッチ」とは何でしょうか? MSDOS の下で動くパソコンソフトを使っているほとんどの人がそのお世話になっているはずですが,その存在を認識している人はどうやら少ないようです.例えば,一太郎のワークディスクをパソコンに突っ込んでスイッチを入れると,どうして自動的に一太郎が起動するのでしょうか? 誰が教えたわけでもないのに不思議です.そのような指示情報はどこにあるのでしょうか? 実はこれが,バッチのおかげなのです.バッチ (batch)とは“一かたまりのもの”という意味の語ですが,パソコンにやらせる作業をキーボードからその都度いちいち打ち込むのではなく,その手順を書いた文字ファイル(これをバッチファイルという)をパソコンに読ませることによって連続的に作業を実行させるというものです.なおバッチファイルの中でも autoexec.bat というファイル名を持つものは特別なバッチで,パソコンが起動すると(最初に)自動的にその内容が実行されます.つまり,一太郎のワークディスクには(例えば)下のような内容の autoexec.bat が存在しているのです.

echo off ・・・・(1)
echo これから一太郎を起動します. ・・・・(2)
jxw.com ・・・・(3)
echo 一太郎を終了しました. ・・・・(4)

  これは同時に,バッチの基本形を示しています.(1)はバッチの頭に置く定石というべきものです.パソコンはバッチから何か命令を受けるとその命令をディスプレイに馬鹿正直に復唱します(これを echo backという).それはやかましいだけではなく,画面を乱してしまうので,echo back は offにしておきます.(2)(4)は単にメッセージを echo しているだけです.それが何の意味があるのかと思われるでしょうが,実はこれもバッチの大事な定石の一つです.それは,「これから何をパソコンにやらせるのか,あるいはいま何をやらせているのかをディスプレイに明示する」というバッチの大原則なのです.これが無いと(特に実行に時間がかかる命令の場合,たとえ自分で作成したバッチであっても)ユーザは,パソコンが何をやっているのかが理解できずイライラしたり,またそれだけではなく誤操作(不要なキーを押す,リセットする,ディスクを抜く,など)の可能性が増大するからです.(3)は一太郎の起動ファイル名です.このファイル名を指定することによって一太郎が起動されます.一太郎を終了させると,パソコンはちゃんとここに戻ってきて,その次の(4)が実行されてバッチが終了します.
  パソコンプログラムを少しでもかじったことのある人であれば,バッチは一種のプログラムであるということがこれでお分かりでしょう.ユーザはこのようなプログラムをエディタ(文字ファイルを作成・編集するソフト)を用いて書き,バッチファイルとして保存しておくことになります.さて,バッチはプログラムであるとはいえ,バッチのために用意された専用コマンドの中で通常使えるのは,せいぜい5種類(echo, pause, if, goto, rem)で,非常に貧弱なものです.したがってバッチで実行できる作業というのはかなり自由度の低いものになってしまいます.これが“たかがバッチ”という意味です.しかし,たったこれだけの命令とはいえプログラムの基本動作(表示,一時停止,条件分岐,無条件飛び,非実行文書き込み)はそれなりに満たしており,プログラムブロックの始まりを表現するラベル(:STARTというような :で始まる行)も用意されているので,それらに MSDOS自身の各種コマンドを組み合わせることによってかなりの程度の作業がプログラムできます.これに加えて,キー入力を判定するコマンド(ver.3.3 には,batkey.comというものがやっと付いてきましたが,私はver.2.11から始めましたのでCコンパイラで自作しました)があれば鬼に金棒で,これはほとんど構造化言語の世界です(行番号も無いし....).“されどバッチ”というわけです.
  先のバッチ例をもとにして少しはプログラムらしきもの(バッチファイル名は run.batとする.やはりここにも消しきれない BASICの血痕が....)を作ってみると,例えば次のようになります.煩雑になるため,画面を整えるいろいろな小技は使っていませんが,このバッチ処理の流れや全体の意図を推理してみて下さい.なお,set で設定して,% %で囲まれている部分は環境変数と呼ばれるもので,その名の通り MSDOSの環境を設定するためのものですが,このバッチ例のように文字変数として条件判断に用いる(フラグ変数)ことも出来ます.

echo off
:START
  if exist b:\jxw.com goto JXWSET
  if exist b:\dbase.exe goto DBASESET
  rem else..
    echo ドライブB:のフロッピーディスクには
    echo           起動できるソフトがありません!
    echo 正しいワークディスクを入れて下さい...
    pause
    goto START
:JXWSET
set softname=一太郎
set filename=jxw.com
  goto EXECUTE
:DBASESET
set softname=dBASE III
set filename=dbase.exe
  goto EXECUTE
:EXECUTE
  echo これから%softname%を起動します.
pause
  echo ただいまB:ドライブから%filename%を読み込み中....
  b:
  %filename%
  echo %softname%を終了しました.
  goto END
:END
  a:
  echo MSDOSコマンドモードに戻っています.
  echo  (カレントディレクトリはA:¥です)
  echo 再度ソフトを起動したいときは run と入力してリターンキーを押して下さい.

  このバッチを起動すると,B:ドライブのディスクが一太郎のワークディスクならば一太郎が,dBASE III のディスクならdBASE III が,それぞれ自動判別されて起動します.それがどうした,などとは言わないでください.あくまでもバッチのプログラムとしての基本型その2を示したものです.これをさらに発展させて立派なバッチを書けば,パソコンのスイッチを入れてから切るまで,あのうっとうしい DOSプロンプト( A> というやつ)の顔を見ずにすむというものです.私が普段使っているメニュー用バッチの内容はスペースの関係上ここでは省略しますが,各種アプリケーションの起動から文書・データファイルのバックアップまですべてファンクションキーを押すだけで済むというすぐれものです.興味をお持ちの方には無料でおわけしますので,ご連絡ください.ただし複数のアプリケーションをバッチメニューで使うには,少なくとも 10 MB以上のハードディスクが必要でしょう.

5.これから私たちが使うパソコンはどうなるか

  現在私たちの周囲に最も多く繁殖しているパソコンの組合せは,前に述べました.これがパソコンのハードとOSとしてベストであるかどうかという議論はさておいて,このシステム構成は既に限界に達しているようです.ワープロやデータベースや表計算ソフトを使う度にフロッピーディスクを差し替えてリセットし,OSから立ち上げ直す,これでは研究・仕事の支援システムとしてまったく落第です.この状況はこれからどうなって行くのでしょうか?

 a)短期的(月〜1年オーダー)視野
  (1)とにかく外部(補助)記憶容量が足りません.その典型的な例がベストセラーワープロソフト『一太郎』です.一太郎Ver.3 のメインプログラムファイル( JXW.EXE )のサイズはなんと 525 KB .これを単にフロッピーからメモリに読み込むだけで20秒近くかかります(全部読み込むのではないようですが).これに各種補助プログラム,日本語辞書やフォントファイルを加えると,1 MBのフロッピーディスクには既にまったく納まりきれない状態です.おそらく一太郎Ver.3 の初期設定をやったことがある人ならば誰でも,プリンタドライバをどこに置くかとか,外字ファイルをどうしようとか(つまらない事)に頭を悩ませたことと思います.
  この状態を手っとり早く解消するのが,ハードディスク(固定ディスク)です.不揮発 RAMディスクという手もありますが,コストの点(4 MBで10万円)とシステムの透明さという点でハードディスクに及びません.お値段は色々ありますが,20 MB のハードディスクで10万円を切るというところでしょう.どんなものでも良ければ, 6万円を割るものもあるということです.これに一太郎でも dBASEVでもなんでもかんでも(なにせフロッピー20枚分ですから)のっけて置けば,さきに述べたバッチを使って複数のソフトを次から次へと使うことができます.日本語辞書や“花子”の24ドットフォントのような巨大なファイルも何の負担にもなりません.立ち上がりももちろん早く,例えば一太郎をフロッピーから立ち上げると約45秒,ハードディスクからならば約 5秒で立ち上がります.たった40秒の差じゃないのと思われる方もいるでしょうが,パソコン人間はこれを『10倍速い』と認識するのです.フロッピーの差替えなどを含めると,大変な差です.ハードディスクに関してはもう既に参議院選挙的なユーザの雪崩現象が始まっており,初めてパソコンを購入した初心ユーザがハードディスクを当然のように買いに来たり, 40 MBが当り前になって 20 MBがほとんど姿を消したり,今度ははSCSIの130 MBだという人が現われたりと,いろいろなことが起きているようです.はっきりいって,少なくともシステム・アプリケーションをフロッピーに置く時代は完璧に過ぎ去りました.
 (2)とにかく足りない,メモリが足りない.これはある意味では日本語人種の宿命かもしれません.キー入力を日本語(2バイト文字列)に変換するプログラム(通称FEP:これは日本人が産んだ偉大なソフトの一つ)は,パソコン起動時にメモリに読み込まれ,100 KB程度を占有し居座ってしまいます.もちろんこれ以外にOS自身の領域が確保されるわけですから,前述した640 KBのメインメモリの^近くが目的のソフトを走らせる前に既に消費されています(興味のある人は CHKDSK やエコロジーで確認してみてください).ソフトをいざ走らせるときのメモリ残量は普通 450 KB 程度しかありません.この状態で,一太郎のような機能満載ソフトを使おうとすると,メモリ不足や処理スピードの異常低下などをきたします.また表計算ソフトのような,データ全体をメモリに置く(置かざるをえない)ソフトでは,扱えるデータ量(表の大きさ)に多大な制約が生じます.このような状況を暫定的にのりきるために考えられたのが,EMS(Expanded Memory Specification )です.これは増設メモリボードを,CPUが認識するメインメモリの一部とすり替え(続け)ることによって,見かけ上640 KB以上のメモリを使えるようにするという姑息なものです.一太郎の新バージョン( Ver.4)や, Macで有名な表計算ソフトExcel の9801版などでは,このEMSを用いることが前提になっており,これまでの9801ハードウェア上では,ほとんど使いものになりません.ところがこのEMSがまたもや日本のパソコン界お得意の‘互換性の無さ’で,現在パソコン市場は大混乱の惨状を呈しています.早く仕様を統一してユーザが安心して使えるようになって欲しいものです.
 (3)とにかくパソコンの印刷出力がお粗末です.市販ワープロ専用機などでは48ドットとか56ドットとかがでているようですが,一般のパソコンプリンタは16ドットがやっと24ドットに進化して3,4年という状況です.あのドット文字はそろそろ願い下げにしたいものです.やはりレーザプリンタをはじめとするページプリンタの導入が不可欠でしょう.今年の茨城の地質学会で初めて開催されたポスターセッションでは,地調系の研究者がレーザプリンタ出力による図表類をふんだんに使ってプレゼンテーションを行い,一部の貧乏国立大系研究者を悔しがらせました.ただし,ページプリンタもソフトがあってこその高品位出力.いわゆる 201エミュレーションモードでは,ドットプリンタでプリントしたのをコピー機にかけているようなものです.ページプリンタ本来のネイティブモードをサポートするソフトも増えてきましたが(一太郎 Ver.4,WordStar Ver. 5,EXCELなど),まだ十分とはいえないし,どっちの方のかは知りませんがなにやらバグも多いようです.ユーザの立場に立った早急な解決が期待されます.
 (4)ネットワークが欲しい! いくら電話をかけても忙しい人で全然通じないとか,ワープロで書いた原稿をフロッピーにコピーして持って行く(または郵便で送る)とか,複数の人が共通して使う文献リストをフロッピーにコピーしてあっちこっちで修正・追加入力をしてまたもとに戻したら修正・追加したはずのデータがどこにもない(わかります?)とか,もうやですね.
  全国の地質学会々員を対象とした「GSJネット」とか(地団研会員ならAGCJネット?),誰か作ってくれないでしょうか? 論文を読んでいたらどうも良くわからないことがある,こういう測定はどうやってやるんだろう? このデータ解析のプログラムを誰か作ってないだろうか? 周りの誰に聞いても専門外でよくわからない,なんて一発で解決ですよ.

 b)中期的(2〜5年オーダー)視野
  これはもちろん32ビットCPU・マルチタスクの世界しかありません.この世界が渇望されるのは次のような願望シナリオがあるからです.

(1)ワープロやデータベースや表計算やらを同時に使いたい.ワープロで文章を書いているときにちょっと文献リストを覗いたり,化学組成表を覗いてデータを追加して再計算させたり,ついでにそれをワープロ文書の中に引き込んだり(コピー)出来るようなソフトがあったらどんなに便利だろう.
(2)ところが,MSDOS Ver.3 というか16ビットCPUにはメモリの大きさに制限(一般に 640 KB )があり,その範囲で(1)のようないろいろなことをやらせるには無理がある.Lotus 1-2-3 や Framework IIなど,それをトライしているいわゆる統合ソフトというものはあるが,結局個々の機能に制限が多かったり,そうでなければ機能を切り替えるたびにいちいちディスクからプログラムを読み込んだりするため,はっきり言って使いものにならないか,または遅い.前述のEMSでなんとかするという手があるが,所詮は一時しのぎに過ぎない.
(3)これを克服するために,32ビットCPUの高速処理と広大な本来のメモリ空間が利用され得る.ついでにOSをマルチタスク・マルチウィンドウにしてしまえば,複数のソフトを独立して別々に走らせることが出来るため,例えば一太郎の窓に MULTIPLAN の窓から表をひょいとコピーする,一太郎で文章を書きながら同時に dBASE III に文献データの検索をやらせる,といったようなことが簡単にできるだろう(もちろん,現在の一太郎や MULTIPLANなどにそれが出来るというわけではない,念のため).

  こういったようなシナリオが,どのようなOSの下で実現されるのか・・・・OS/2がそれを担ってくれるのか,MSDOS Ver.4 + DOS Shell + WINDOWS 386 という組合せになるのか,それとも MSDOS Ver.3 + EMSということになるのか,いまいち読めません.いずれにせよこのマルチタスク問題は,この2−3年で基本的な決着がつく(あるいは見えてくる)でしょう.もっとも,既に32ビットパソコンを持っているのにやっぱり8086用のソフトを640 KBで使っているというぜいたくな方には楽しみでしょうが,現在の9801を10年は使わなければならないという貧乏人には少し残酷な話です.

 c)長期的(10年オーダー以上)視野
  単なるパソコンユーザである私にはまったく分かりません.とはいえ,TRONが救世主である,なんてとても信じられない......

6.最後に

  というように思いつくままに書いてみましたが,かなり舌足らずというか,パソコンのあれこれを文章で表現するということの難しさを思い知らされました.この文章を読んでなんらかの興味・疑問を感じていただけたら幸いです.

(1989/07/29)


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