* XX灰色XX部: 再録者(川村)のコメント・注記.

* 『●』: 判読不可能文字.文字数と一致.

* 『   』: 原文で取り消し・削除してあるもの.

* 『(ママ)』: 原文ママをしめす.著者のミスと思われるもの.

* 『  』: 原文にあるアンダーライン.

* 『(?)』: 判読に確信がもてないもの,判読した結果に疑問な点が残るもの.

 

 

骨を掘るの記

 

前記

 昭和八年の夏頃,樺太産の怪獣の頭骨と●●と●●した人があった.大いさは長径二尺位で,●しく●●の●布団をしいてある.これが即ちここに記そうとするDesmostylusの頭骨で,当時世界に三つの●●として新聞(?)にも報ぜられたものである.●もDesmostylusは,其●●●北米西岸と日本とに知られるもので,第三紀の中●に急にあらはれ急に絶滅した哺乳類と考えられている.

 其歯は既に本邦でも数ヶ所から知られているが,頭骨に至っては嘗て三十余年以前美濃で一個発見せられた事があり,北米ではオレゴン●から見出されたのみで,実際,美濃のそれに比すれば完全さに於ては劣る(?)といへ兎に角,これで三個目であることは確かである.

 この標本は珍し(ママ)には違いないが,既に三箇目である.そう大●するにも当らぬが,其時小耳にはさんだ事は,発見地には其骨格があるといふ話である.Desmostylusの骨格(?)は未だ何処●も●●に見出された事が●●ゐにこの話は少からず興味をひいたと共に,それを掘り出すといふ事も決して一小些事ではない.

 幸に学術振興会の補助を得たのを●●時を違いず十月二日といふに大石助教授は●●として現地をたしかめ其採掘方法を決定すべく急キョ北上の●に上がった.

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 七日朝樺太の大石君から「●●●●●ナガラサイシュノミコミアリ」との電報を受取った余は翌八日の夜増子兄と共に同僚の見送を受けて雨中どんよりと曇って今にも泣き出し相(ママ)な天候を気遣ひ乍ら札幌を離れたのは翌八日の夜であった.

 稚内の朝は心地よいものではなかった.沖は闇く雨の様で,時にあふる風は海の荒れを示してゐる.樺太の方と思われる北の海は薄墨色に雲低く垂れて白い波頭が乱れて見える.

 船は八時●の出帆,合図のドラと雨の音とは交り会って●●る.時に薄陽がさす外は浪と風との音を消す様に雨が甲板をたたきつける.

 果たして大泊は雨であった.豊原に汽車のつく頃●では,次第に北の●に入るといふ感じが強く,●道の闇に時●●いランプの灯が去来し,窓打つ雨の滴にうつつである.豊原についたのは六時二十分頃,大石君と川崎技師の顔をみてホットする.

 大石君の努力と川崎技師の周到なアッセンで用意手配は完全(?)●●つてゐるという事をききつつ,豊原に一夜をあかした.

 十日の豊原の朝は晴れてあけた.昨晩の雨は文字通り名残なく晴れてゐる.殆んど雲一つない青空に佇んでいる鈴谷山脈の頂きにはホンノリ(?)といはれる●●の薄雪を見せている.流石に枯野を渡り霜をってくる風は冷たい.山は黄に赤に,黄は白樺と落葉松,紅いのはナナカマドであらう.樺太廰を訪ふ前に,市街の東●にある札幌樺太神社に参拝して旅の無事を祈る.●ったのも社前に立って西を望むと,紺碧と迄はいかずとも,すみ渡った空に薄紫にくっきりと並んでいる中央山脈の白亜紀層の山々はやや尖った頭を●●てゐる.其前景をなすものは低い第三紀層の台地で,黄色くかすんで見えるが山はだの刻みを黒く見せてゐる.足下の豊原の市街には赤黒(ママ),時に緑の屋根を見せた住宅と白くぬき出ている郵便局建物とが交錯して,街路の白樺の黄葉を其●にまばらに綴っている.

 樺太廰に川崎技師を訪ふて●●の礼を述べ,博物館●●には古地図を欲しがり,中●●では畏友上田●長に久方振りで旧交を温める事が出来たのはこの旅でのうれしい一つである.午後五時といへば既にうすら寒い町を●に車を乗りつける.

 夜,満天の星は明日の霜を思はせる.かくて明日は一路北上,気屯に向かふ事として,豊原の第二夜を過ごした.床についた.

 ●●十一日,晴れてゐる.野も山も・家も道も霜である.小川には薄い薄い氷も見える.まだ少し早い朝の六時●豊原を出発,汽車は,荒野を北に走る.鈴谷を右に,中央山脈を左に見て,松(枯?)木の立ち並ぶ平野を縫って●く.

 落合の木材置場の木の数に驚く暇もなく,汽車は,オホーツク海岸にそふて進む.窓の下に続く昿野は,枯葦(?)とイソツツジの原である.黒く焼けた層を見せて寒さうに立ってゐる●木は落葉松,トド,エゾ松などであらう.梢には鳥の姿も見えぬが,日は明で●く,小春(?)を思はせる.

 白鳥のとれるといふ白鳥沼を右に見て,散点する人家の軒の干大根を数ふる内に汽車は   (ママ空白)についた.この辺から,窓の右,又は左に樺太としては珍しく荒削りの頂を見せてゐる山が望まれる.突●山の名は其一つに与へられたもので,●山の火山岩肌が赤黒くあらはれてゐる.汽車が知取(?)につく迄(?),稀(?)に石炭をほってゐる所謂狸掘り式の坑口が見られるのも●●にはなつかしい気がする.

 知取は人口二万余,オホーツク海の浪に洗はれる海岸の傾斜地にたってゐる.王子製紙の工場の●●を運ぶと見られる三千噸級の汽船が数艘沖がかり(?)をしてゐるのでも其●●が窺はれる.

 知取海岸に露出する砂岩にはかなりの介化石がある事が汽車の窓から見られるのでそれに興じつつも,打ち続く焼木立に山火の怖ろしさをしのんでいく.汽車が最終駅の南新間(?)についたのは,既に日のくれる五時近くである.直ちに自動車(?)を請うて(?)闇をついて北●●の気屯に向かふ.内●,上●●等の名は覚えたが,其他の小部落は名も忘れてしまった.只ヘッドライトは割に良いがしかし凹凸の少なくない夜道をてらしていく.右も左も闇である.頭上に近い北極星を左上には其他の星と共にまたたいてゐる.●右●に上って来た下弦の月が木々の梢から見え隠れしてゐるのみである.

 気屯迄あと二里といふアトンの部落を過ぎてホッとした.それ程この道は長く長く続いてゐる.気屯の宿に車をすてたのは十時近くである.思へば遠く来たものである.国境はここから八里と●いて遠く来た事を思ひ●●べる.今更遠く来たものと思ふのも旅の一興である.

 十二日,晴.

 翌日は待機.瞬間が●に憶えず.●く十三日好晴に恵まれ一行は●●の初雪沢第四号堤に向かふ.●●には紫●の中央山脈を背景とし広く広く続く落葉松とトドマツ林の前景を控へた●他(?)丘陵地がある.二股にて小憩.数日分の食料を●●して沢に降りて上る事一里半である.初雪沢の水は悠く●●し両岸に段丘崖にせまってゐる所には山肌をあらはしてゐる.

 或ものは

(ここで突然終わっており,未完)