私的・北海道地質百選
『新冠の受乞層』
受乞(うけこい)層は,日高海岸地域の新第三系層序の下から2番目の地層である.加瀬ほか(2018)によるとその堆積年代は中期中新世(11 - 16 Ma)となっている.
新冠町西泊津(にしとまりつ)の国道235号線からビッグレッドファーム泊津へ入る道沿いには,受乞層の良好な露出がある(右写真).
岩相はシルト岩・砂岩の互層で(右写真),シルト岩には硬質頁岩様になっている部分もある.砂岩層は弱いラミナ様のものが認められるが,基本的に無級化・無構造である.
加瀬ほか(2018)などによると,これらの互層はすべてタービダイト互層ということらしいが,少なくともこの露頭では,その特徴はあまり明瞭ではない.
砂岩層中には,珪質海綿 Makiyama が多量に含まれている(右下写真).中には,筆者がこれまで見たことがないような大型のものも含まれていた. コトバンク によると, Makiyama の最大のものは長さ 5 cm,太さ 5 mm に及ぶということなので,この写真のものは最大級ということかもしれない.
この写真では, Makiyama は砂岩単層の中央部付近に濃集している.なんらかの流体力学的な分化(ex. flowage differentiation)の結果と思われるがよく分からない.
なお,この露頭では受乞層の層理はほぼ水平(~露頭の向こう側に緩傾斜?)に見える.この地域の新第三系の構造は一般に NW-SE 走向・80 度以上の急傾斜なので,観察される構造はそれと合致しない.
松野ほか(1958)によると,この部分のすぐ山側を背斜軸が通っているので,軸部の緩傾斜なところを見ているのかもしれないが,詳細は不明である.
(なし)
松野久也・山口昇一,1958,5万分の1地質図幅および同説明書『静内』,北海道開発庁,36p.
加瀬善洋・川上源太郎・高野 修(2018)北海道日高海岸地域の中部~上部中新統前縁盆地埋積物の堆積システムと石油地質.地質学雑誌,124,627-642.
(なし)