私的・北海道地質百選
『石山緑地』

※ ヘッダー・サムネールは,石山緑地のシンボル『赤い空の箱』.2009 年 9 月撮影.


“ネガティブ・マウンド” と札幌軟石採取跡.左奥に小さく “赤い空の箱” が見える.2016 年 4 月撮影.
支笏火砕流露頭.基部の方形部分が切り出し跡.2016 年 4 月撮影.
火砕流堆積物の内部構造.2017 年 9 月撮影.
露頭最上部のテフラ? 400 mm 相当望遠レンズによる撮影.2023 年 8 月撮影.

 札幌市南区石山にある石山緑地は,“札幌軟石” の採掘跡地を利用した公園である.

 公園内には “ランドスケープ・アーキテクト” 集団によるさまざまな仕掛けが施されており,単なる公園というよりは『アート・スペース』ともいうべき空間となっている(右写真).

 『札幌軟石』は地質学的に言うと,支笏火砕流堆積物の溶結部ということになる.
 噴出源から 25 km 以上離れているので溶結度は低いが,石材として切り出せる程度のそれなりの “硬さ”(強靭性)があり,建物の外壁などに多く使用されていた.空隙が多く保温性が高い特性を持つものと思われる.

 全体に露頭表面のガリー状浸食が顕著である.右上写真の左側には,先端が尖った大きな塔状部が2基ある.おそらくガリー浸食による残存部と思われるが,形状が唐突で微妙に不自然にも見える.“アートスペース” 造成時に人工的に演出されたものとも想像できるが,不明である.
 露頭表面はガリー浸食により,ある意味芸術的な造形美を醸し出している(右写真).

 石山緑地を地質露頭として見ると(右写真),支笏火砕流堆積物の厚さは少なくとも 25 m 以上ある.軽石片を多量に含む不淘汰な火砕流堆積物であるが,上部の無構造部と下部の弱成層部に不明瞭に分かれている.
 後者はトラクション要素の強い部分ということになるが,これが単一の火砕流の内部分化によるものか,あるいはベース・サージ的な部分なのかは,筆者には到底判断できない.

 露頭上部は風化していて,最上部には 1 m 程度の被覆があるように見える.詳細は確認できず単に遠望によるものであるが,以下のようにも解釈できる層序(?)が観察できる(右写真).

 下位から: ①支笏火砕流堆積物・②その葉理部(< 1 m)・③薄いオレンジ色の風化火山灰質堆積物( 5 cm)・④褐色火山灰質風化土壌(20 cm)・⑤薄い腐植土(< 5cm)・⑥灰白色の含軽石火山灰質堆積物(50 cm).
 ②は火砕流堆積物のリワーク部かもしれないが葉理部が変形しているように見える.③(・④)はいわゆる “月寒火山灰”(土居,1956),⑥は樽前噴出物の可能性が考えられる.

※ 筆者は言うまでもなくこの地域のテフラ層序には素人なので,まったく的外れかもしれない.興味ある方はこの地域のテフラ層序に関する正式な論文を参照していただきたい.


既存の指定など

(なし)


所在地

札幌市南区 石山.


サイトの状態:


参考文献

土居繁雄・小山内煕(1956)5万分の1地質図幅『石山』.北海道地下資源調査所,54p.


関連サイト

(なし)



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