私的・北海道地質百選
『十五島公園』

注)このサイトは,本家・北海道地質百選で石井正之さんが『十五島公園のデイサイトと泥岩』として投稿したものと共通しています.ここに掲載するものは, 石井さんの投稿 を参考にさせていただきましたが,内容はすべてオリジナルのものです.


 札幌市南区藤野にある十五島公園は,豊平川の河川敷にあり,札幌市民の憩い場の一つとなっている.その河原には,新第三紀の地層と貫入岩体が露出し,その関係を観察できるサイトとなっている.


上:板割沢層の黒色頁岩.2000 年 4 月撮影.下:硬石山デイサイトとの接触部付近の頁岩.2009 年 4 月撮影.

 露出している地層は,新第三紀中新世の砥山層群上部の板割沢(いたわりざわ)層に属する黒色泥岩~頁岩である.
 板割沢層は,頁岩・硬質頁岩・泥岩・砂質泥岩・砂岩などからなり二枚貝化石を含む海成層である.その堆積年代は 500 ~ 1,000万年前とされている.

※ 本家・北海道地質百選などではこの地層は『砥山層』と書かれているが,おそらく誤りではないかと思われる.
また石山図幅(1956)では,十五島公園河原周辺は板割沢層下位の一の沢層・簾舞頁岩部層の分布として塗色されている.これらの層序区分の相互関係や変遷については,筆者は把握できていない.


 板割沢層の頁岩は濡れると印象的な深い黒色を呈し,弱い劈開~パーティング面が発達して層状になっている(右写真上).これが頁岩の層理なのかどうかは確認できていない.

 公園下流側では,頁岩は灰色・硬質となり,パーティングはほとんど認められなくなる(右写真下).割れ目には酸化鉄が付着し,いわゆる “ヤケた” ようになり,さらに下流に行くと灰白色硬質となっている.
 このような変化は,十五島公園の下流側・硬石(かたいし)山周辺に分布する硬石山デイサイト岩体が砥山層群中に貫入した際の熱的影響と一般に考えられているが,鉱物組成など具体的にどのように変化しているかといった詳細は不明である.


板割沢層頁岩(右半部)と硬石山デイサイト(左半部)との接触露頭.上位に河床(低位段丘?)礫層が載っている.2000 年 4 月撮影.

 硬石山デイサイトが板割沢層頁岩中に貫入する露頭(右岸側)を右に示す.写真右半部が板割沢層頁岩,左半部が硬石山デイサイトである.境界はほぼ垂直であるがやや湾曲しており,軽微な滑り破砕面となっている.これが断層と言えるものかは分からない.

 頁岩は非常に硬質となり,ヤケた面を割ると新鮮な部分は灰白色を呈するが,熱変成といった領域には入っておらず,変質と呼ぶのが適当かもしれない.


上:増水期の十五島公園.川の向こうに見えるピークは,残雪の砥石山(826.3 m).2009 年 4 月撮影.下:渇水期の十五島公園.1998 年 6 月撮影.いずれも公園吊り橋上から撮影.

 十五島公園の横を流れる豊平川は,季節・降水による水量差が大きい.上流のダムによる放流もあり,河原への立ち入り・観察に際しては十分に注意する必要がある.

 特に春先の雪解け期には定常的な水位上昇があり(右写真上),最近はロープが張られ立ち入り禁止となっていることが多い.この時期の観察はほとんど無理かもしれない.


※ 上流の藻岩ダム(現砥山ダム)の放流によって増水した豊平川に炊事遠足中の中学生が流され,2名が亡くなる事故が起きている(1973 年 10 月).

注)公園の河原(河川敷炊事広場)は,上流の藻岩発電所工事に伴い,2022 年 10 月 3 日 ~ 2029年 6 月頃まで利用休止・立入り禁止となっている.したがって,当分の間サイトの観察はできない状態となっている.


既存の指定など

(なし)


所在地

札幌市南区 藤野.


サイトの状態:


参考文献

加藤 誠・勝井義雄・北川芳男・松井 愈(編)(1990)日本の地質1 北海道地方.共立出版.

土居繁雄・小山内煕(1956)5万分の1地質図幅『石山』.北海道地下資源調査所,54p.


関連サイト

(なし)



私的・北海道地質百選のトップページへ戻る